④【天乃屋兄弟のお話】兄貴、イチャイチャ禁止だからね!

あきすと

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⑥催涙雨

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星明の誕生日、七夕は残念ながら夜更けから雨が降り出した。
「洗車雨だな、今年」
『早く会いにこないかなーって、きっと織姫さま拗ねちゃうね。』

実は先ほどまで、階下の今で久しぶり
帰国した両親と4人で星明のお祝いをした後に子供の頃のアルバムをながめていた。

先に休んだ両親、俺と星明は自室に
戻って来て何となく窓の外を眺めていたのだ。
『兄貴はハーフだから、やっぱり子供の頃って今より…ぁ、やだよね。こんな事言ったら。』
「ん~?ハーフである事は俺は別になんっとも思わないけどな。途中、親に言われるまで知らなかったんだから。」
『カッコ良すぎなの、昔から…も~、兄弟だとかそういうの関係なく!1人間として…ため息が出るくらい、その…素敵で』

「俺は自分の良いとこもダメなとこも、客観的に見ておきたいけどな。まぁ、今更だろ?俺を世界でいちばん独り占めできてる星明、っと…誕生日過ぎちまったな?おめでとう、星明。今年もきっと良い一年にしような。」

部屋の薄明かりが、ぼんやりと星明の頬のあたりを照らしている。
俺は先にベッドに上がって、星明の姿を
見つめていた。

輪郭はまだ少し、あどけない。
横顔なんて、人形みたいに緻密で精巧。
星明が思う以上に、俺は俺で相手の容姿は
ハッキリ言って自慢だと思ってる。

『…うん!兄貴がそう言ってくれるなら、きっと大丈夫だね♪』
先程少しだけスパークリングワインを
飲んだせいか、星明はいつもよりどこか
楽しそうだ。
「顔つきがな、去年より少し大人びて来た気がする。」
甘える様に俺に歩み寄った後は、ベッドの上で抱き付いてくる。

薄く、アルコールの匂いと共に
マスカットの香りが星明から、キスを
通じて伝えられた。
ふわりと鼻をかすめる。
夜目でも分かる、星明の瞳孔が少し
開く瞬間。

特別な相手を前にすると、開くと言うのは
なんだか、艶を感じる。
手のひらでなぞる、背中の皮膚と骨の並び。
緩い曲線に、細い腰のラインは
同性だとはあまり想像がつかない。

控えめで、おずおずとしたぎこちない
キスを今でもしてくる星明は
初心で、見ていて愛おしさが溢れそうになる。

『キスって、馴れるときもちぃの…不思議』
上唇の山の先が、雛先みたいに可愛い。
いや、そもそも口唇ってのは…暗にそう言う意味でもあるから。
何もおかしい事はない。
抱き寄せて、丁寧に身を掛け合わせるみたいに隙間なく抱擁をする。

満たされる、心の底から。
お互いが瞳を閉じて、感覚だけでキスをする。
指より鋭く、でもどこか鈍くて遠い
舌の感覚は少しだけもどかしい。

膝がぶつかり合うくらいに近くで、
欲を貪り合う。
耳元も、侵してしまいたい。
最近やっと馴染んだ星明のピアスが
俺をきっと、冷たく拒むだろう。

恋も愛も緩くて、物足りない。
覗いてはいけない鏡を俺と星明は
見てしまったのだ。
映し出された相手の姿に、驚くことも無かった。ただ、嬉しさに戸惑った。

当たり前だとさえ、思った。

俺は、またくだらない罪を星明の前で重ねる。
可愛いく上擦った星明の嬌声、
何かと何かのぶつかる音。
きしむ音が、俺のスマホには録音されていく。
何でこんな事をするのか、自分でも
よく分からない。

ただ、証拠を自分で持っておきたかった。
快楽の波の中で、うわ言みたいに
あまりにも星明が俺を好きだとか
言うものだから。

約束は果たされなかった。
でも、そんな事はもうどうでも良くて。
階下の寝室で両親が寝てても
俺にとってはどうでもよかった。

目の前の星明に集中したくて、
今夜は調子に乗ってしまい…駅弁まで
してしまうなんて。
心なしか、俺の影響を受けたのか?
星明も淫らに応じてくれている。

落っこちない様に俺にしっかりと
両腕を絡めて、突き上げられる度に
声は抑えが効かなくなっていく。

薄い言葉で、好き好き言うのはどうかと
思うけど…星明だけは別。
『ぉちちゃう…っあ…ィやだ……ッ、でちゃ…ぅ……っ、っは…ぁにき…?ぜんぶ…っン、』

星明の震えが伝わって来る、少し遅れて
星明も果ててしまい。バスタオルを敷いた
上にゆっくりと星明を横たえる。
「ヤバい、抜けそう…」
『っひゃ…っ…』

エアコンがあって本当助かる。
無かったら夏は多分、俺の場合シたく
ないだろなぁ。
汗かくの本当はあんまり好きではない。
でも、星明を組み敷くとアホみたいに
無我夢中になってしまう。

アラサーに差し掛かるけど、ホスト時代は
女と寝る事だけは避けて来たから
その頃のツケを払ってるのか?と
思う程に…星明とはイチャイチャしたい。

まぁそもそも、比べる対象にも無いんだけどな。
どうせ後数日もすれば、両親はまた
拠点に帰って行く。
また、日常が帰って来る。

母親には、星明と仲良くしてる?と聞かれて
どう答えようかと一瞬悩んだけど
「フツー。」
と、曖昧に答えておいた。

俺の中ではこのくらいの仲良しも
確かにフツーにはなりつつある。
だから、あながち嘘でもない。

星明は、少しうとうとしだして
体を俺が拭いてやったせいか
心地良さそうに目を細めている。
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