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④食べごろ
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手を初めて繋いだ時、多分自分の中には微弱な電流を感じた。
ピリッと、少し鈍くて裏側からまるで隙をつかれたみたいな意外さ。
自分よりも小さな手のひらの頼りなさ、小ささに似合わない凛とした
星明の視線。
この子供は、きっと無意識に俺を試してる。
俺に、星明を守るほどの甲斐性があるのか。
両親は放任主義で、真剣に俺等を育ててくれるのかと
時々不安になっていた。
『俺、留守番は昔から得意だったよね。ずっと、待ってるんだと思う。誰かが帰って来るのを。』
成人した星明の口から、発せられる言葉は年月を経て
重みと年月を感じさせる。
「俺なら、どこにも行く気は無いけどな。」
『でも、人生って分かんないからなぁ。それに、俺は家の中にいるのも好きだけど本当は海外旅行だって
行ってはみたかったりするし。』
午前中のオンラインでの鑑定を終えた俺と星明は、一旦休憩をとっていた。
この後は、動画配信を録って編集作業がある。
近頃は、チャンネル登録者数も少しずつ増加してきている。
で、実際に家の前にある事務所での対面鑑定もよくある。
「最近、明らかに俺等に直接会いたくて対面の申し込みも増えてるから。忙しいよな…。」
『前よりかはね、まとまった休みもしばらくは予約で…取れそうにはないかな。』
「海外は、先送りでもいいか?」
『!?え、あ…そんな、冗談だったのに。ゴメン、兄貴。本気で考えてくれてるなんて。』
空調の効いた事務所に2人でアイスティーを飲んでいる。
「あ…、まぁな。実際俺もお前もあんまり旅行には一緒に行った事ないからな。」
『うん、でも結局俺は我が家が一番安心するカモ。』
言われなくとも、そんな気はしていた。
でも、星明が安らげる場所だと言ってくれる事が
同居している俺としては、結構嬉しくもある。
「てか、本当に親は帰って来るのか?そろそろ七夕になっちゃうぞ。」
『絵葉書には、俺の誕生日までにはって…相変わらずアバウトな書き方してあったもんね。』
両親のフワフワさは、昔から変わらない。
その内、ひょっこりと帰って来るだろう。
テ・アッラ・ぺスカと言うイタリアで親しまれている、甘い桃の紅茶は
本当に良い香りがして、昨晩から仕込んでいたものらしい。
「これ、うま…。」
グラスに沈んだ桃を長い柄のスプーンで、食べてみる。
『そういえば、去年も桃食べてなかった?』
「え、あ…もしかしたら加賀にもらったのか。」
『……あ、間違った。加賀さんがくれたのは杏子だよ、アンズ。』
そういえば、少し前に俺の親友である加賀には
子供が生まれた。
星明と2人で喜びはしたけれど、妙に複雑な気持ちも同時に湧き上がっていたのは
内緒にしておこうと思った。
「杏子はな、旬が短いらしいからなぁ…。」
『へぇ~、じゃ…早く食べてもらわないとね♡美味しい内に。』
「星明に言われると、いかがわしく聞こえる。」
重症だとは、自分でも解ってる。
『それは、世界で兄貴だけだと思うよ。』
恥ずかしそうに星明は笑った。
ピリッと、少し鈍くて裏側からまるで隙をつかれたみたいな意外さ。
自分よりも小さな手のひらの頼りなさ、小ささに似合わない凛とした
星明の視線。
この子供は、きっと無意識に俺を試してる。
俺に、星明を守るほどの甲斐性があるのか。
両親は放任主義で、真剣に俺等を育ててくれるのかと
時々不安になっていた。
『俺、留守番は昔から得意だったよね。ずっと、待ってるんだと思う。誰かが帰って来るのを。』
成人した星明の口から、発せられる言葉は年月を経て
重みと年月を感じさせる。
「俺なら、どこにも行く気は無いけどな。」
『でも、人生って分かんないからなぁ。それに、俺は家の中にいるのも好きだけど本当は海外旅行だって
行ってはみたかったりするし。』
午前中のオンラインでの鑑定を終えた俺と星明は、一旦休憩をとっていた。
この後は、動画配信を録って編集作業がある。
近頃は、チャンネル登録者数も少しずつ増加してきている。
で、実際に家の前にある事務所での対面鑑定もよくある。
「最近、明らかに俺等に直接会いたくて対面の申し込みも増えてるから。忙しいよな…。」
『前よりかはね、まとまった休みもしばらくは予約で…取れそうにはないかな。』
「海外は、先送りでもいいか?」
『!?え、あ…そんな、冗談だったのに。ゴメン、兄貴。本気で考えてくれてるなんて。』
空調の効いた事務所に2人でアイスティーを飲んでいる。
「あ…、まぁな。実際俺もお前もあんまり旅行には一緒に行った事ないからな。」
『うん、でも結局俺は我が家が一番安心するカモ。』
言われなくとも、そんな気はしていた。
でも、星明が安らげる場所だと言ってくれる事が
同居している俺としては、結構嬉しくもある。
「てか、本当に親は帰って来るのか?そろそろ七夕になっちゃうぞ。」
『絵葉書には、俺の誕生日までにはって…相変わらずアバウトな書き方してあったもんね。』
両親のフワフワさは、昔から変わらない。
その内、ひょっこりと帰って来るだろう。
テ・アッラ・ぺスカと言うイタリアで親しまれている、甘い桃の紅茶は
本当に良い香りがして、昨晩から仕込んでいたものらしい。
「これ、うま…。」
グラスに沈んだ桃を長い柄のスプーンで、食べてみる。
『そういえば、去年も桃食べてなかった?』
「え、あ…もしかしたら加賀にもらったのか。」
『……あ、間違った。加賀さんがくれたのは杏子だよ、アンズ。』
そういえば、少し前に俺の親友である加賀には
子供が生まれた。
星明と2人で喜びはしたけれど、妙に複雑な気持ちも同時に湧き上がっていたのは
内緒にしておこうと思った。
「杏子はな、旬が短いらしいからなぁ…。」
『へぇ~、じゃ…早く食べてもらわないとね♡美味しい内に。』
「星明に言われると、いかがわしく聞こえる。」
重症だとは、自分でも解ってる。
『それは、世界で兄貴だけだと思うよ。』
恥ずかしそうに星明は笑った。
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