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武蔵と清瀬の日常の1部

③寝る前もいちゃいちゃ。むしろ余計に

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武蔵は、一族の中でもいわゆる異端とも言われていた。
存在そのものが明らかに、特別扱いをされていて。

俺は、子供の頃から小さな箱庭でしか生きられない様な武蔵を
心のどこかで憐れんでいたのかもしれない。

外の世界を知りたくて、好奇心は人よりも強く
瞳を爛々と輝かせていた。
だから余計に、儚くも美しく見えた。

生家も一族も、戦争で散り散りになってしまって
お互いは身を寄せ合いながら、生きていく中で
日々、腹の底にある歪な思いが大きくなって行く。

身一つで、働きに出る武蔵は本当に世間知らずで。
声の掛かった先でも、苦労した事は想像も容易だ。

蝶よ花よと持てはやされながら、言うなれば
現実を生きていなかった期間が長すぎた。

『ゼロになったんだね。』
「俺は、むしろ何にも最初から無かったんだって思ってる。」

初めて今日、何を着て食べて生きて行くのかをマトモに
考えた。

今までいかに誰かに支えられて暮らして生きていたのかを
身をもって知った。

「そっか、じゃ…これからは清瀬と僕で作っていけば良いよね。」
『俺、で良いのか?』
「何言ってるの、清瀬。いつも僕の傍に…居てくれるんでしょう?」

愛されたがりで、無意識に人の心を捕らえてしまう。
この兄には、俺は絶対に抗えない。
きっと、なんでも言う事を聞くだろう。
馬鹿になって行く。

基準が全てこの兄・武蔵に書き換わる瞬間だ。




昔に比べれば、今はかなり生活に余裕が出てきて
俺の収入だけでも生活は余裕で出来る。

ただ、存在が2人共異質でほぼ死なない体の為
数十年に一度くらいは、引っ越しを余儀なくされる。

姿形が変わらない事を、周りが不振がる前に
跡形も無かったかのように、居なくなった事も何度かある。

現代は、外見についてもかなり自由に出来る雰囲気があるし
昔よりかは、気苦労が減ったとは思う。

「武蔵、そろそろ働き過ぎで過労になるから有給取って来い。」
武蔵は、迎賓館に務めている。
気の利く性格、面倒見の良さ。語学にも長けているせいで
上司に今の勤め先へと割り振られたのだ。

俺としては、かなり不満が渋滞している。
が、武蔵の上司は一応俺と武蔵の恩人でもある為
無碍には出来ずにいる。

『有給取るの?ん~…通ればいいけどね。』
「おかしいだろ、フツーに。」

俺は自分の仕事は自分で管理の出来るフリーランスだから
今の武蔵の労働環境には、納得がただただいかない。

『忙しいのは、年中変わりないからさ。しぶられるよ、今回も。』
「たった1日休むだけで、恩着せがましい事言われるなんて無理。」
『一応は、組織だから。僕も1社員で扱われた方が気が楽ではあるんだけど。』

ソファに座って、膝の上には武蔵が当たり前見たいに座っている。
俺は後ろから武蔵を抱き締めて、爪にオイルを塗っている。

「爪のカタチまで可愛い…」
『…そんな、変わんないよ?清くんと。』
「全然、違う。俺の爪はこんなに…桜貝みたいな感じじゃないし。」
『それは、清くんがこうやってお手入れまでしてくれるからでしょ。』
「俺は、むぅのおかげで爪ほぼ無いからなぁ。…意味分かる?」

風呂上がりで、あったかい武蔵は少しだけ重そうな目蓋で
考えるぞぶりをする。
『僕の、おかげ…?え~と、仕事だと僕は関係無いし』
「むぅを、傷付けない為に決まってんだろ。」

俺の言葉の意味を数秒遅れて、やっと理解するあたりが
何の狙いも無いんだろうけど。
むしろあざとい気さえして、ため息が出る。

『変な事、想像しちゃった…。』
「は?ヘンって言うか、エロい事だろ。むぅ、スケベだもんな~えちえちで」
『そん、なコト…無いよ~』
細い腰を抱いたまま、揶揄う様に軽く腰を武蔵に押し付けると
キッと睨まれてしまった。

「意識してんじゃん、むぅ~」
笑っていると、ぎこちなく武蔵が俺の膝の上で座る位置を気にしてか
気まずそうに腰を上げている。

だから、それを辞めなさいって。

「…むぅ、ワザと?」
『ワザとじゃなくて~…その、清瀬のが…もぉ~座りにくい。』
「まぁそれは、不可抗力だし。」
『当たるんだもん…。』

後ろを振り返った時の武蔵の頬が少しだけ赤らんでいる。
俺に理性がまだ僅かながら残っていて、良かったと思う。
日頃散々、家の中で所かまわずヤっているとはいえ。

この態勢も、かなり目の毒である事に変わりはない。
ふわふわで手触りの良いルームウェアを着て、いちゃいちゃしながら
社畜の武蔵とのいちゃいちゃする時間を堪能しているんだから
より濃密なものを求めてしまう。

遅出の仕事だから、幾分朝は少し遅めでも平気なのが助かる。
いくら、ほぼ不死とは言え相手の体を労わる事は最低条件だろう。


適度な温かさと、柔らかみのある武蔵の手のひら。
造形一つ一つがやっぱり頭がおかしくなる程、愛おしくてたまらない。

「むぅ、向かい合いっこしよ?」
『なに、その言い方…可愛いんだけど。』
文句ひとつ言わないで、嬉しそうに笑う武蔵は可愛いを上回る。
「どこ、くっつけ合わせたい?」

まずは、手のひらを重ね合わせる。
この先の先をいかに武蔵が選んで、言葉にしてくれるのか
俺は楽しみで仕方ない。

『手だけでも、こんなにくすぐったい…。』
「武蔵は全身が、センサーになってくよ。」
『ぇ、あんまり意識すると…やっぱり恥ずかしいよ、清くん…』
「大丈夫、俺は恥ずかしがるむぅが一番可愛いと思ってるから。」

耳まで赤く染まっていく、額と額がくっついて。
『見ないで、清くん…僕…』

武蔵の瞳がぎゅっとつむられてしまう。
仕方いないな、と薄く笑ってからキスを交わした。


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