坊ちゃんと私

あきすと

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「坊ちゃん、背格好が・・・いえ、立ち姿がやっぱり父君を思わせますね。」
『はぁ、・・・そう言えばこの前に母にも同じような事を言われました。』
「奥さまは、お変わりございませんか?」
『はい。母は父より1周り若いですからね。今は、お教室を開いたりして。趣味に生きがいを感じていますよ。、』

あれから。

を、語れば余りに長くキリが無い。
けど坊ちゃんも僕も本当に、波乱万丈に生きて来た事を窺わせる。
「奥さんは、もしかしたら先生よりも芸術家気質かもしれません。ね?青路さん。」

『・・・俺の名前、呼んでくれるんですね。』
「さすがに、ずーーーっと坊ちゃんはね。」

坊ちゃんは、有難いことにこの根無し草を家まで
連れ帰ってくれるらしい。
あぁ、嬉しい。
一時は、ひがんでいたというのに。
『霞さんが、青と言う漢字を入れて欲しいって言ったのでしょう?』
「さぁー?そんな昔の事、忘れてしまいましたよ。」

お店の看板を仕舞いに行って、坊ちゃんが居ない隙に
椅子から立ち上がる。
こじんまりとした、けれど落ち着きのあるお店。

懐かしい、先生の作品が時間の中に変わらず展示されている。
僕が、サヨナラした大切な人。
アホみたいなゴシップ紙で、噂されても気にも留めずに
誠心誠意しっかりと僕を養ってくれた。

お葬式には、間に合わずに。
精進明けを少し過ぎた頃に、奥さんからの手紙で
僕はご厚意により先生ときちんと決別する機会を得た。

書類の生理や、作品の今後についても奥さんと共に
決める事になった。遺言書もあったし、遺産についても細々と
手続きを終えてからやっと、先生の書斎に入る気になった。

奥さんは、気をとても遣う人だから
僕が気兼ねなく暮らせるようにまでしてくれた程で。
『霞くん、青路がもしかしたら邪魔しに来るかもしれないから。来たら、母屋に戻ってなさいって伝えてね。』
気風の良い奥さんらしい言葉に、僕は思わず笑ってしまった。

「坊ちゃん、もういくつになりましたか?」
『春から小学生だってのに、やっぱり女手一つは大変ね。』
「えぇ、もうそんなに大きくなった・・・、ぅわぁすごいなぁ。」
『本当にね、いつでも戻って来て良いのよ?きっとその方が、あの人も・・・青路も喜ぶから。』

「有難うございます。でも、実は留学の話が来てまして。」
『まぁ、やっぱり行くのね?霞くんには、もしかしたら外国の方が広々と・・・愉しいかもしれないわね。』
「来月には、発つんです。なので、しばらくお顔も見られませんが、どうか坊ちゃんと・・・お元気で。」

【冒頭に続く】
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