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①
しおりを挟む俺は、数百年生きて来てようやく合点がいった。
今まで、オッサンオッサンと心の中で呼んで来た
伊吹が、どうやら世間的には
【イケメン】たる部類に入る事を。
マジで?え、うっそ…。
正直、戸惑っていた。
距離感が近かったから、特にそこまでちゃんと
客観視出来ていなかったのかもしれない。
うーん、改めて見ても
どう見ても…。
俺からすれば伊吹は伊吹でしかないというか。
まぁ、そりゃあ俺よりかは身長もあるし
体もいまだに鍛えているし。
ピンと来ないけど、今までにも何度か
異性からの誘いは仕事場であったと言うのを
聞いて。
あまりいい気はしなかったかな。
(一応、交際してるし)
お互いに老いを忘れた存在だから、
ずっと変わらないままの姿に見慣れ過ぎているんだと思う。
俺の最近のライフワークになりつつある、
動画の撮影をした後に編集してても
見てくれている人は、どんな風に自分と伊吹を
見てるのかと初めて意識した。
コメント欄は、見流す程度にしてはいるものの
確かに、伊吹を見に来ている人も
中には居るのかと、複雑な想いに駆られる。
俺なんてのは、元々が今の職場でも
客寄せとしての意味合いもあると
自分でも承知しているけれど。
伊吹との動画は、プライベート向きだから
余計に、普段思わない様なモヤモヤを感じてしまう。
仕事帰りに、近場の温泉に入ってから家に帰る。
移動手段は公共交通機関が多い。
だから、時々知らない人に声を掛けられたりもする。
なんで、俺だって分かったの?と
たずねてみると、その人たちは
『だって、志摩くんって…ゲームの中から出て来たみたいだから。』
って。
よく分からない言葉を返された。
家に帰ってから、伊吹にもこの話をすると
何故か笑われた。
『まぁ、コスプレとまでは言わないが…恐らくは志摩のその髪は、目立つからなぁ。』
俺は、予想外過ぎて逆に驚いた。
「こんくらいで?ほんまに?」
部屋着に着替えてた俺は、後ろ髪を結わえずに
洗い物をしている伊吹の横になすりついた。
『俺もいまだに、その髪には心を揺らされる。』
「これくらいで?…まさかぁ」
ぐいぐいと伊吹の腕に額を押し付けながら
時折、伊吹の顔を見上げる。
長年一緒に居すぎて、危機感とかも忘れかけてたけど。
俺はやっぱり伊吹の事が特別だと思っている。
好きとかそんな言葉じゃ、たりなくて。
『どうした?志摩…今日は珍しく甘えて来るなぁ。』
流水の音に混じる伊吹の心地いい声。
「俺さぁ…やっと気が付いたんさ。伊吹ってただのオッサンじゃないって。」
伊吹は、俺を見下ろしつつ
『オッサンって、…まぁ実年齢は3桁超えてるからな。』
苦笑いする。
伊吹は、洗い物を終えて手の水分を丁寧に
タオルでふき取る。
「世の中には、伊吹の事を…異性として好きになる人が居たりもするんだろう?」
『…はぁ、そんな事は無いと思うけど。それなら、むしろ俺より志摩の方が心配だ。』
「いつも、見ないフリしてたんだよなぁ俺…。」
『志摩を見てると、考えさせられる。無意識ってのは怖いものだな。』
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