【⑤天乃屋兄弟のお話】願いの星に届くまで

あきすと

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⑯おかえりまで(星明視点)

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兄貴が帰国した、その日。自室にたどり着いたまま、充電切れになって
ベッドに倒れ込み寝てしまった。

余韻に浸る暇も無くて、慌てて服を直してから静かに
眠りに落ちた兄貴の隣で眠った。

ふんわりと、いつもの兄貴の匂いに混じる異国の香り。
兄貴が目を覚ましたら、少し落ち着いてからでいい。
どんな旅をして来たのか、聞いてみたい。

珍しく2度寝をしたけれど、30分程で目が覚めてしまった。
外は、もう明るすぎて寝るには少し惜しいくらいに陽射しを感じる。
「おやすみ…。」

兄貴の頬にキスをしてから、ベッドを下りた。
中途半端に慰めてしまったせいで、まだ少しだけ体の奥に
熱をくすぶらせている事が、自分でもよく分かる。

触れた頬への感触が愛おしくて、無意識に自分の唇へと触れた。

「はぁ…、」

珍しく、こういう事で我慢を感じた。

いつもは一緒に居る安心感からか、触れあう事にも
淡泊なところがあって。
自分が受容する側だと、決めつけていたけれど。

兄貴の体にタオルケットを掛けて、エアコンの温度調整をしてから
部屋を出た。

廊下の窓を開けると、もう生温い外気が漂っている。
日常の条件が、また整った事で俺は嬉しかった。

静かに階下に行って、洗面所で身支度を整える。
朝ごはんを作って、洗濯機を回す。
兄貴が旅行で出した着替えも回収済みだ。

ほぼ2週間ほどの不在。
こんな事は初めてだった。

兄貴もちゃんと、旅先で洗濯はしていただろう。

ネットに色分けをしていると、やっぱり不思議な匂いがする。
「お線香みたいな匂い…」
そういえば、兄貴のお祖母ちゃんはたしか占い師だって言ってたっけ?

もうコレは運命的なものを感じる。
兄貴はその事を知らずに、ホストを辞めてから独学で
占星術を勉強して、鑑定士に成った。

なるべくして、成ったのだろうと感じる。

洗濯機の回る音を聞いてから自室で着替えて、エプロンをつける。
実は、ここ最近の兄貴の不在にちょっと面倒な事に
なってしまっている事を、兄貴にバレない様にしなければ。

インナーの肩ひもを下ろして、胸部分が露わになると
文机の上にある小物入れから絆創膏を2枚取り出す。
医療目的のものとは違う簡易的でデザイン重視っぽい絆創膏の
はく離紙を取って、そーっと乳首に貼る。

かなり情けない様な、恥ずかしさで自分でも半笑いになってしまう。
夏場は、薄着にもなるし汗をかいたら目立つ。
何より、ちょっとお触りが日頃から多かったのもあるし。
インナーが擦れて、変な気になる前になんとか隠したかったと言うのが一番だった。

当たり前に、触られるし。何なら兄貴には吸われるから。
少し前から寝る前には、胸を保護する意味でもファウンデーションとして
身に着けていたのも知られてはいる。
(詳しくは8話を読んでね)

まさか、こんなにも体の変化が出て来るとは思わなかったから
兄貴に言うのも、責めてるみたいで気が引けるし。
なんならいっそこう言うお洋服の趣味なんだと思われた方が
気が楽でもある。

でも、改めて思うと子供の頃から可愛いものが好きではあった。
お菓子を作る事も、可愛いお菓子が好きで自分でも作りたくてだし。
雰囲気が、優しくて可愛くてとなると無意識に自分の中でも
呼応する何かがあったのだと思う。

特に、兄貴に可愛いとか言われると…めちゃくちゃ嬉しいし。
段々とエスカレートしていきそうで、自制が危ういけど。

台所に立つと、やっぱり自分の大好きな空間だからのびのびと出来る。
一風変わった暮らしかもしれないけれど、俺には向いてると思うし
兄貴を根底から支えたいと言う想いは、変わらない。

朝ごはんはまだ1人で食べるけど、きっとお昼頃には
兄貴も起きて来るだろうから。
その間に、色々と作り足しておこう。

席に着いて、携帯で音楽を流しながらゆったりと朝ごはんを食べた。

洗濯が終わると、洗い物の終わった足ですぐに取りに向かう。
カゴに入れてから、庭先に出て洗濯物を吊るす。

蝉時雨が聞こえて来る、でもそろそろ秋の気配も少しだけ感じてはいる。
あっという間の季節の流れに、感慨深くなる。
今年の誕生日も一緒に兄貴と過ごせて。
特別、大げさにはしなかったけどその中でも祝ってもらえたのが
とても幸せだった。

誕生日の翌日に兄貴は、いわば里帰りをして来て。
でも、ちゃんとこの家に帰って来てくれた。
これだけで、充分なんだと思う。

そよぐ洗濯物を見てから、家の中に戻る。
PCでメールチェックをして、動画へのコメントを1つ1つ読んで
いいねを一応、全員につける。

兄貴がストックしてくれていた動画の内容も視聴数も順調に
伸びているので、俺は安心して側で観ていられた。

兄貴の肩書にもどうしても注目されるから改めて、目立つ星のもとに
生まれている事を目の当たりにする。

コラボの依頼もちらほら出てきているから、この辺は兄貴の
判断に任せている。
動画の編集をしたり、連絡業務をしているとあっという間に
時間が過ぎて行く。

「そろそろ、お昼の準備しなきゃ。」





【そして⑮話へ】


当方HPにて、ストーリートークもあわせて公開中です。
興味のある方は、是非ご覧くださいませ(^^)/















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