【⑤天乃屋兄弟のお話】願いの星に届くまで

あきすと

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⑭油断

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兄貴がいない。馬鹿みたいに寂しい。
家にいるのに、なんだか心が落ち着かない。
ぼーっとする時間が増えていく。
携帯を持って、メッセージが来てないか
着信が入らないかって期待する。

ちゃんと帰って来るのは、分かってるのに
どうしてかな?数日前に兄貴の親友である
加賀さんに会ってからもう一週間が
経過していた。

旧暦の七夕がそろそろだ。
お願い、兄貴…どうかこの日までには
帰って来て。

兄貴の声が聞きたい。電話でいいから
ちょっと聞きたいよ。
だって俺、でないと兄貴の動画見てるんだよ?
おかしな話かもしれないけど…
今の俺が出来ることはそれくらい。

明け方の朝日がジリジリと兄貴の部屋に
差し込んでくる。
実は勝手に兄貴の部屋で寝起きしてる。
だって、寂し過ぎる。

兄貴の部屋の香り、は兄貴の匂いと
同じだからとても安心するんだ。
ベッドの上で横になって、体を少し
屈めて。

「ダメだ…おかしな気持ちになる…」
このベッドの上で兄貴と自分がどんな事をしていたのか思い出す。

「ヤだよ、こんなの…」
胸元がじわっと熱くなっていく様な
不思議な感覚だった。
キュッと目をつむって、想像する。
いや、思い出していた。

後ろめたさの数だけ、兄貴に想われて
優越感が心地良くて。
兄貴の幸せを願っているなんて
本心じゃ無い事も自覚してる。

俺だけにとらわれて、ずっとそばに居て
くれたらどんなに良いか。
こんな事、絶対に誰かに悟られてはいけない。

気持ち良くなれるのは、とても簡単だった。
1人だとね。
着ていたパジャマがもどかしくて、
ほぼ半裸になりながら
タオルケットに体が所々触れる事さえ
気持ちいい。

久しぶりに、前だけで弄ってみる。
兄貴とは後ろと胸が多いから、
なんだか付き合う前に戻ったみたいで。

今日もどうせ天気は良いに違いないから
洗濯物が多少増えてしまっても
きっとすぐに乾いてしまうかな。

「ぁ…っ♡」
自分で加減が出来て、タイミングも
分かってるから手軽で気持ちいい。
腰が勝手に揺れそうで、揶揄する手が
だんだん早まってくる。
体が戦慄く、脚が引き攣れそう。
暑い、熱い…。

「…っは…っ…ぁ…まだぁ…」

足りない、足りなくて自身に添えた手は
放ったもので汚れていて
また手で摩ると、トロトロ出て来た。

いっぱい出ちゃう、まだ胸も触って無いのに
勃ってるのは分かる。
膝が笑ってるみたいに、ガクガクしてる。
「兄貴ぃ…、」

まさかこんなに、満たされないとは
思わなかった。
ただ、焚き付けられて期待させられて
何にもなかったみたいな空振り感。

手のひらで受け止めた2回目で
一気に現実に引き戻された気分。
まだ、胸の方がもしかしたら気持ち良く
イけたかもしれない。
とさえ思う始末。

「でも~やっぱり…アレは使いたくないし。」

アレと言うのは、前に兄貴がなぜか
準備してくれたものの中にあった
いわゆる慣らし用の挿入グッズだった。
まだ使った事は無くて、そもそもあまり
そういったグッズに興味もなくて
むしろ、どちらかといえば苦手意識が
あったせいで手付かずになっている。

感触や質感にはわりと得手不得手があるし
兄貴も特に何も言わなかった。

朝から何やってるのかって、ちょっと
自分でも理性が無さすぎるとは
思ったけど。

ただ一緒に居られるだけで心は満たされて
いたし。そりゃあそれ以上の関係になれた
とは言え、そんな事ばかりしてる訳もなく。

でもまさか、自分が思った以上に
この体は…求めているんだと実感してしまった。
触れて欲しいし、兄貴にも触れたい。
どんどん強欲になっていく。

兄貴だって、一応の兄弟とは言いながらも
誰のものでも無い。
「そういえば、ブレスレット…綺麗だったなぁ。」

下着も履かずに、あまりに開放的に
両脚を上げたりしながら手も上へとかざす。

その時、ガチャと兄貴の部屋のドアが
開いた。
「え………」
『ぉ…ま、何やってんだ?俺の部屋で』

ちょっと待って、確かに俺はそういう
思い込みが激しい~部分があるのは
知ってる。

けどまさか、いくら寂しいからって
兄貴の幻覚まで見始めてる?
「…ぅそぉ」
『パンツなんで履いてないんだよ…?』
「え、ゎゎゎ…」

脚を攣りそうになりながら、慌てて
側にあったタオルケットを手繰り寄せた。
『俺、邪魔しちゃった…かな?』
「兄貴なの、ホントに?」
『うん。と言うか死ぬほど疲れてて眠たいから星明ちょっと場所あけて~』

どうやら、まごう事なき本物の兄貴が
帰宅したみたいで。
俺は嬉しいのに、慌てるし拍子抜けして
後退りした。

「ぅわ…っ」
ベッドに倒れ込んで来た兄貴に、早速
抱き込まれて動けない。
ほぼ裸の状態だから、しどろもどろしてると
『携帯電池切れで連絡出来なかった。ごめんな…』
「そうなんだ、途中からピタッと連絡来なくなったから…もしやとは思ったけど。おかえりなさい、兄貴。」

倒れ込んだまま眠った兄貴を見ていると
俺もまた睡魔に襲われて、しっかり二度寝してしまった。
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