6 / 19
⑥後ろめたさ
しおりを挟む
悠寅くんからの話に、俺と兄貴はただただ聞きながら
あっけに取られていた。
『時間を選べば良かったですね。ごめんなさい。実は…まだ時間の感覚がズレてて』
兄貴は、悠寅くんの話を聞いている最中にも何度か
表情が深刻なものに変わっていたのを、傍で居ながら感じていた。
「そっか、海外から帰って来て間もないんだよね。」
『はい、でもまさか…お2人のご両親に出会わなかったらと思うと』
しばらく会っていない両親の話を人づてに聞く事が
不思議に思えたけれど、相変わらず流浪をしながら
誰かの人生に関わっている事を嬉しく思えた。
『時々、居るんだよな。こう…、前世からの深い縁を持った人は。』
「…前世かぁ、記憶があるって言うのがスゴイよね。」
『1度は、輪廻の輪から外されてしまったけれど。今、この世に改めて生まれ
まさか…近くに愛した存在がいると知って。どうしたらいいのか。』
さすがの兄貴も、あまりにも神秘的な恋愛相談に
一体どんな反応をするのかと、興味があった。
『傍に居るんだったら…とりあえず、確認してみるとか。』
『確認…?』
『そう。本当に当時の相手なのか、向こうには記憶があるのか。とか…そっちも
聞きたい事があるものじゃないか?』
背もたれに上体を預けながら、兄貴は一瞬俺を見た。
「……」
ぅわ…今、この状況でもやっぱりどこか余裕を感じさせるのが
兄貴らしいと思う。
まだ、昨夜の余韻みたいなものが心にも残っているっていうのに。
『確かに。姿形を認識しているだけで…まだ接点を持てずにいるので。』
「ちゃんと面識を持ってみた時の気持ちで、この先の事が分かるかもしれないし。」
『月夜さんも星明さんも、不思議ですね…。似てるようで全く真逆のエネルギーを感じます。』
「エネルギーが分るの?すごい、兄貴とは真逆なんだ?」
ついつい好奇心が前に出て、身を乗り出していると
『そもそも、本当はもう…その相手の事は把握できていて。何でこんなにまどろっこしい事するのか。』
兄貴は、どこかあきれ顔で悠寅くんを見ている。
「ちょ、っと…兄貴~?言い方ダメだよ。」
『いや、俺は後ろめたい事が無いんだったら。相手の事も把握してるんだろう?ちゃんと会ってみれば良いのに~
って。俺は思うだけ。』
思う事を口にしてしまえる強さを持たない人も、世の中には沢山いる。
もしかしたら、悠寅くんも言えないのかもしれない。
想像でしか無いけれど。
「簡単に出来ないから、こうして相談してくれてるのに。」
『俺は、相手にとっての…凶事、そのものなんです。』
悠寅くんの言わんとする事が、俺にはよく分からなかったけれど
兄貴は何か考えがあるのか。
席を立って
『ちょっと、事務所からPC取って来る。』
と俺に言って、廊下へと出て行った。
「悠寅くん、ごめんね。兄貴、すぐに戻るから待ってて。」
『はい、』
「大学生、だっけ~?」
緊張する。兄貴とはまた違うタイプの容姿の良さと
ほんの少しだけ伝わって来る、圧が。
『はい、…えーっと星明さんは?月夜さんと一緒に』
「うん。一応はアシスタントと言うかな。兄貴の生活をサポートしてるつもり。」
『良いですね、2人は…前世できっと夫婦だったんでしょうね。』
え…!?
「そ、そうなのかな?じゃ、今とそんなに変わらない感じだ~」
『…へぇ。2人が夫婦だったとして、違和感は無い訳ですか。』
ニコリ、と綺麗な笑顔を向けられて俺は顔が熱くなるのを感じた。
「世話の焼ける、兄貴だからさ…。」
『フフッ、あまりダメダメと言っては、月夜さんが哀しみますよ。』
思い当たるフシがあった。
俺は、ついつい兄貴の世話ばっかり焼いてしまうから
注意してしまう事も多い。
一応、兄ではあり。年上だから、立てたい気持ちもあるけど
そこまで気が回らない事が多い。
悠寅くんの観察眼の鋭さに、ドキドキしながら
俺は固唾を飲んで兄貴を待つ。
金色の瞳は穏やかに、俺をとらえている。
『~星明、ちょっとテーブル開けて』
兄貴がPCを携えて、台所に戻って来た。
バッテリーのコンセントプラグを壁のコンセントに挿して画面を立ち上げる最中に
俺と悠寅くんでテーブルの上の茶器と菓子器を移動させる。
兄貴は眼鏡を掛けていた。
多分、悠寅くんの占いでも始めるつもりなのか。
『ん、ありがとう。でさ、今度ウチに来るんだったらその相手の子も連れて…こられる?』
兄貴はいつだってある意味では、挑戦的かもしれない。
「相性とか?」
『相性もだけど、さっきの言い方がどうにも気になるからさ。もしかしたら、命式に
関係してるのかな?って。』
兄貴は、長い髪を器用に軽くまとめてくるくると結わえた髪を
側頭部で留めた。
『…命式ですか。分かりました。』
『うん。だって、さすがにまだ相手の生年月日は知らないだろう?』
『なんとか、ちゃんと声を掛けてみます。』
『前世で、何があったのかは俺には計りかねるけど…。せめて力になれればと思うから。』
兄貴はその後に、自分の占術の話なんかを悠寅くんに説明していた。
あっけに取られていた。
『時間を選べば良かったですね。ごめんなさい。実は…まだ時間の感覚がズレてて』
兄貴は、悠寅くんの話を聞いている最中にも何度か
表情が深刻なものに変わっていたのを、傍で居ながら感じていた。
「そっか、海外から帰って来て間もないんだよね。」
『はい、でもまさか…お2人のご両親に出会わなかったらと思うと』
しばらく会っていない両親の話を人づてに聞く事が
不思議に思えたけれど、相変わらず流浪をしながら
誰かの人生に関わっている事を嬉しく思えた。
『時々、居るんだよな。こう…、前世からの深い縁を持った人は。』
「…前世かぁ、記憶があるって言うのがスゴイよね。」
『1度は、輪廻の輪から外されてしまったけれど。今、この世に改めて生まれ
まさか…近くに愛した存在がいると知って。どうしたらいいのか。』
さすがの兄貴も、あまりにも神秘的な恋愛相談に
一体どんな反応をするのかと、興味があった。
『傍に居るんだったら…とりあえず、確認してみるとか。』
『確認…?』
『そう。本当に当時の相手なのか、向こうには記憶があるのか。とか…そっちも
聞きたい事があるものじゃないか?』
背もたれに上体を預けながら、兄貴は一瞬俺を見た。
「……」
ぅわ…今、この状況でもやっぱりどこか余裕を感じさせるのが
兄貴らしいと思う。
まだ、昨夜の余韻みたいなものが心にも残っているっていうのに。
『確かに。姿形を認識しているだけで…まだ接点を持てずにいるので。』
「ちゃんと面識を持ってみた時の気持ちで、この先の事が分かるかもしれないし。」
『月夜さんも星明さんも、不思議ですね…。似てるようで全く真逆のエネルギーを感じます。』
「エネルギーが分るの?すごい、兄貴とは真逆なんだ?」
ついつい好奇心が前に出て、身を乗り出していると
『そもそも、本当はもう…その相手の事は把握できていて。何でこんなにまどろっこしい事するのか。』
兄貴は、どこかあきれ顔で悠寅くんを見ている。
「ちょ、っと…兄貴~?言い方ダメだよ。」
『いや、俺は後ろめたい事が無いんだったら。相手の事も把握してるんだろう?ちゃんと会ってみれば良いのに~
って。俺は思うだけ。』
思う事を口にしてしまえる強さを持たない人も、世の中には沢山いる。
もしかしたら、悠寅くんも言えないのかもしれない。
想像でしか無いけれど。
「簡単に出来ないから、こうして相談してくれてるのに。」
『俺は、相手にとっての…凶事、そのものなんです。』
悠寅くんの言わんとする事が、俺にはよく分からなかったけれど
兄貴は何か考えがあるのか。
席を立って
『ちょっと、事務所からPC取って来る。』
と俺に言って、廊下へと出て行った。
「悠寅くん、ごめんね。兄貴、すぐに戻るから待ってて。」
『はい、』
「大学生、だっけ~?」
緊張する。兄貴とはまた違うタイプの容姿の良さと
ほんの少しだけ伝わって来る、圧が。
『はい、…えーっと星明さんは?月夜さんと一緒に』
「うん。一応はアシスタントと言うかな。兄貴の生活をサポートしてるつもり。」
『良いですね、2人は…前世できっと夫婦だったんでしょうね。』
え…!?
「そ、そうなのかな?じゃ、今とそんなに変わらない感じだ~」
『…へぇ。2人が夫婦だったとして、違和感は無い訳ですか。』
ニコリ、と綺麗な笑顔を向けられて俺は顔が熱くなるのを感じた。
「世話の焼ける、兄貴だからさ…。」
『フフッ、あまりダメダメと言っては、月夜さんが哀しみますよ。』
思い当たるフシがあった。
俺は、ついつい兄貴の世話ばっかり焼いてしまうから
注意してしまう事も多い。
一応、兄ではあり。年上だから、立てたい気持ちもあるけど
そこまで気が回らない事が多い。
悠寅くんの観察眼の鋭さに、ドキドキしながら
俺は固唾を飲んで兄貴を待つ。
金色の瞳は穏やかに、俺をとらえている。
『~星明、ちょっとテーブル開けて』
兄貴がPCを携えて、台所に戻って来た。
バッテリーのコンセントプラグを壁のコンセントに挿して画面を立ち上げる最中に
俺と悠寅くんでテーブルの上の茶器と菓子器を移動させる。
兄貴は眼鏡を掛けていた。
多分、悠寅くんの占いでも始めるつもりなのか。
『ん、ありがとう。でさ、今度ウチに来るんだったらその相手の子も連れて…こられる?』
兄貴はいつだってある意味では、挑戦的かもしれない。
「相性とか?」
『相性もだけど、さっきの言い方がどうにも気になるからさ。もしかしたら、命式に
関係してるのかな?って。』
兄貴は、長い髪を器用に軽くまとめてくるくると結わえた髪を
側頭部で留めた。
『…命式ですか。分かりました。』
『うん。だって、さすがにまだ相手の生年月日は知らないだろう?』
『なんとか、ちゃんと声を掛けてみます。』
『前世で、何があったのかは俺には計りかねるけど…。せめて力になれればと思うから。』
兄貴はその後に、自分の占術の話なんかを悠寅くんに説明していた。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい
パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け
★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion
更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です
X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl
ハンターがマッサージ?で堕とされちゃう話
あずき
BL
【登場人物】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ハンター ライト(17)
???? アル(20)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後半のキャラ崩壊は許してください;;
【完結】催眠なんてかかるはずないと思っていた時が俺にもありました!
隅枝 輝羽
BL
大学の同期生が催眠音声とやらを作っているのを知った。なにそれって思うじゃん。でも、試し聞きしてもこんなもんかーって感じ。催眠なんてそう簡単にかかるわけないよな。って、なんだよこれー!!
ムーンさんでも投稿してます。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!


目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる