【⑤天乃屋兄弟のお話】願いの星に届くまで

あきすと

文字の大きさ
上 下
5 / 19

⑤訪問者

しおりを挟む
朝早くに目が覚めた。
隣には、兄貴が眠っている。
寝ている時は、少しだけ柔和で穏やかな雰囲気になる。

部屋の中の涼しさと、体が触れ合う部分のあたたかさが
現実に引き戻してくる。

兄貴の服を借りて、そそくさとベッドから降りようとしたら
足首を緩く捉えられてて転びそうになる。

「!?っぶな~…」
朝から違う意味でのドキドキが心臓に悪い。
『黙って居なくなるなよ。』

あ。起きてたんだな、と思って声のする方を向き直る。
「おはよう、起きてんじゃん。」
『急に、腕が寂しい気がしたから。』
たまに可愛い事を言うから、上手いなぁと思う。
「だって、気持ちよさそうに寝てると思ったから。」
『体、どこも平気なのか?』
「うん。でも、シャワーは浴びたいからさ。」

兄貴の頭を撫でて、頬にキスをする。
『頬っぺただけ?』
「も~…はいはい…」
次は、まぶたにキスを落とす。
一瞬だけ、ピクッと震える様が愛おしい。

『あと数日かぁ。早いよな…俺何も考えてなくて』
「…あ、誕生日の事?俺ももういい大人だしそんな、プレゼントとかも用意しなくて良いんだよ?」

兄貴は、え~っと不満げな声を漏らす。
『俺は、星明が俺のあげたものを身に着けている姿を見ると、嬉しい。』
「…うん、知ってる。なんか、そうだよね?兄貴って」
『宝飾はお前の魅力を引き立てるための存在だ。でも、他の誰かに見つかるのはなぁ…。』
「俺よりも、兄貴の方が何て言うのかな?気負いなく身に着けてる感じがするのにな。」

威風堂々、絢爛とした雰囲気が当たり前の様に似合う存在。
『俺はいいんだよ。俺の星明が秘かにきらきらしてる。俺は、それだけでメシウマだから。』

兄貴の一途さとか、想いが重なってからもずっと変わらずに
大切にしてくれるところは本当に、嬉しさと感謝しかない。
「俺だって、こんな出来た兄貴がずっと側にいてくれるんだから…贅沢すぎるでしょ。」

重ねるだけのキスをしてから、兄貴の部屋を後にしてシャワーを浴びに行った。

朝ごはんが出来る頃には、兄貴も身支度を済ませて台所に来てくれた。

【ピンポーン】

『…え、』
「ごめん、兄貴ちょっと玄関お願い。」
兄貴は何となく怪訝な顔をしながら、廊下に出て行った。

にしても、朝が早い時間に誰だろう?近所のお年寄りは
時々、野菜などの差し入れを朝早くに持って来てくれたりもする。
夜の間に、色々あった時とかは慌てて飛び起きて
玄関に直行した事が何回もあって、かなりハラハラした。

親切心だから、兄貴も俺も勿論無下にする事は無い。
2人で暮らしている事を心配して顔を見に来てくれるのだから
こんなにありがたい事は無い事だと思っている。


しばらくして、兄貴が戻って来て
『…なんかさ、お客さんみたいなんだけど?』
「え…?!ちょ、どちらの…兄貴の知り合いじゃないの?」
『いや?俺もお前も知らないと思う。あの両親の事は知り合いだとかで。』

どうしようかと思いつつも
「じゃ、3人で朝ごはん食べよっか?」
『…ん、分かった。聞いてみる。』

兄貴は半笑いでまた、玄関へと戻って行った。

俺は、慌ててお客さん用の食器を準備してお盆を用意し
テーブルの上に器を並べていく。

そういえば、男の人なのか女の人かも知らないや。
いくつぐらいの人だろう?
咄嗟だったから、そこまで考えつかなかった。

『星明。えーっと、名前なんだったっけ?』
『西原 悠寅です。すみません、こんな朝の忙しい時間に。』
「初めまして、えっと~ウチの両親がご迷惑をお掛けしてなければいいんですけど。
朝ごはん、どうぞ一緒に上がってくださいね。」

ビックリした。
兄貴より、少しだけ背の高い彼は俺と少し似た色味の銀髪に
瞳は金色だ。

一瞬、虎みたい。と思ってしまった。

物静かそうな佇まい。微笑は案外あどけない。
『有難うございます。じゃ、お言葉に甘えさせてもらいますね。』
3人で食卓について、自然な感じで朝ごはんを食べてしまえた。
兄貴も、言う程警戒はしてないみたいで
悠寅くんと話している。

聞けば、俺とさほど年齢が変わらないらしくて
驚いている様子だった。

この家にやって来た、両親を知る存在と言う事に何となく
胸騒ぎがしていた。
いつもの感じなら、ハガキとかをよこしてくるのに。
今回は、もしかしたら悠寅くんに言伝でもあるのかな?

『朝ごはん、すごく美味しくて…初めて会うのに何でだろう?全然違和感も無くて。
不思議ですね。ごちそうさまでした。』

兄貴もやっぱり、気にはなっているせいか悠寅くんをジッと見つめながら
話を聞いている。

「やっぱり、ウチの両親から何か伝言?」
『まずは、俺の事から話さないといけませんね。』

食卓を一旦片付けてから、お茶を淹れて2人で悠寅くんの話を聞く事になった。


















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

捨て猫はエリート騎士に溺愛される

135
BL
絶賛反抗期中のヤンキーが異世界でエリート騎士に甘やかされて、飼い猫になる話。 目つきの悪い野良猫が飼い猫になって目きゅるんきゅるんの愛される存在になる感じで読んでください。 お話をうまく書けるようになったら続きを書いてみたいなって。 京也は総受け。

ド平凡な俺が全員美形な四兄弟からなぜか愛され…執着されているらしい

パイ生地製作委員会
BL
それぞれ別ベクトルの執着攻め4人×平凡受け ★一言でも感想・質問嬉しいです:https://marshmallow-qa.com/8wk9xo87onpix02?t=dlOeZc&utm_medium=url_text&utm_source=promotion 更新報告用のX(Twitter)をフォローすると作品更新に早く気づけて便利です X(旧Twitter): https://twitter.com/piedough_bl

ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます

沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

わるいむし

おととななな
BL
新汰は一流の目を持った宝石鑑定士である兄の奏汰のことをとても尊敬している。 しかし、完璧な兄には唯一の欠点があった。 「恋人ができたんだ」 恋多き男の兄が懲りずに連れてきた新しい恋人を新汰はいつものように排除しようとするが…

大学生はバックヤードで

リリーブルー
BL
大学生がクラブのバックヤードにつれこまれ初体験にあえぐ。

処理中です...