【武蔵と清瀬】あかい尾びれがゆらゆらと

④陰と陽

大人が言うには、陰陽の調整が
全てなのだと言う事らしい。

昔、武蔵と俺が生まれた時に
一悶着あった事は耳にしていた。

だからと言って、どちらかを失う
道を選ばされるとは思いもせずに
生きて来た。

『清くん、僕は生まれ変わったら…きっと清くんも
同じ様に生まれているよね。だから、怖くないんだよ。』

誰かの犠牲によって、今日も残酷に
世界は動いている。

武蔵が日々、人から遠くなって行く
そんな気がしていた。
遠からず、神様に捧げられる
尊い存在なのだと。
自分でも無意識に思っていたんだろう。

もう、住む世界が違ってしまった。
後戻りの出来ない所にいる。
多くの人の為に、その身と愛を以て
俺とは違う人生を選んだ武蔵。

言いようの無い想いで、心が塞がり
かけていたあの頃。

それが今じゃ…こんなえちえち
オニイチャンになってるなんて。
信じられるか？
『こっ、…これでもね、清くんが作った僕の等身大フィギュアには…負けたくないんだよ。』

無意識に張り合っちゃって、ホント
可愛い過ぎて頭が追い付かねぇよ。
「はぁ？俺のむーたんが、フィギュアに劣るワケねぇよ。」
ぷるっぷる震えながら、脚線美を
惜しげもなく見せてくれる。

『良かったぁ…っ。でも、僕の場合あんな可愛いお洋服は、
持ってないから。ゴメンね？色気のない格好で…』

いや、いやいや…充分過ぎるし！
ってか武蔵でもそんなキワキワの
ショートパンツとか持ってんだな？
いつの間に買ったんだろ。
「色気が大渋滞してるから、自覚しろって！」

『だってさぁ、僕が…可愛くないと清くんガッカリしちゃうでしょ？
だから、恥ずかしいけど頑張ってみたんだ。で、精気は僕が貰っちゃってイイの？』
極めて珍しい武蔵からの、積極的な
お誘いに乗らないはずが無い。

精気をまさか、あの武蔵が欲しがるなんて
今日はお赤飯炊かないとな。

ただ、抱き締めるだけなのに
武蔵の精気が濃くなっていく。
瞳が涙で潤んでて、いつもより従順に
キスに応えてくれる。