23 / 41
レクイエム
しおりを挟む 翌日、キースはキラを胸に抱き、イオと共にワイトデ自治区へと向かった。
『移動』してしまうので、時間はかからない。
イオの屋敷の敷地内に『移動』してきて辺りを見回した。
数日前までは灰色に染まっていた町も、色を取り戻していた。
イオに聞くと、町中の灰は、風を扱える者が集めて袋に入れ、町外れに回収しているらしい。
そこから必要な分だけもらっていって、水捌けの悪い土地の土に混ぜて作物を作ったり、土嚢として使うらしい。
過去にもそうやって灰を利用して来たそうだ。
屋敷の中には入ると、領主、イオの両親がいて、お礼を言われた。
ここへ来てくれたおかげで、長引かず住民達も早く家に帰れる事になって、喜んでいると。
そしてチハヤに服を着替えされされ、彼らに連れられて、近くの社に来ていた。
そこはワイトデ自治区のアリミネ火山を祀る社。
そして、多くの人が集まりザワザワとしていたが、キースがキラを連れて姿を現すと、辺りはシーンと静まり返る。
キラは驚いたのか、キースの服にしがみついて離そうとはしない。
そんなところも可愛い…などと思っていると、イオに社の前に立つように言われ、こっそりと耳打ちされる。
「炎の結晶石をここで作って見せれるか?」
「…う~ん。どうだろう…」
キースは抱えていたキラを地面に降ろし、隣に座り込む。
「キラ、ギュウッて、熱を集めれる?」
キースが聞くとキラはじっとキースを見て、空を見上げた。
風が吹き始め、キラの頭上に集まり始める。
…始まった。
「イオ。炎の結晶石を冷やす場所はある?」
「社の池を使うと良い」
そう言って、イオは隣に有る池を視線で示す。
「お湯が涌き出ている池だから、冷たくはないが…」
無いよりはましだろう。
そんな会話をしているうちに、キラの頭上に炎の結晶石が赤くキラキラと輝いていた。
回りにいるもの達は、その美しさに見惚れている。
風が収まり、落ちてくる炎の結晶石をキースは風で包み込み、落下する場所をイオが言った池へと誘導する。
ポトンと音がして、水蒸気が舞い上がった。
辺り一面、真っ白な水蒸気に包まれ、しばらくすると次第に収まり、視界がもとに戻っていく。
イオが池に入り、炎の結晶石を拾ってきて、キラのもとへ持って来た。
そしてキラの前に膝を付いて、炎の結晶石を掲げた。
「キラ様。我らワイトデ自治区は、キラ様をアリミネ火山の守護竜としてお慕いいたします。どうぞ、お守りください」
イオがそう言うと、回りにいた人々も膝を付いて座り込み、頭を下げた。
ギュウッ!
キラがそう鳴くと、イオは微笑みキラの頭を撫でる。
「よろしく。キラ様」
キラは撫でられて気持ち良さそうに目を細める。
そして、社で宴会が始まった。
キラの前にいろんな食べ物が運ばれてきて、キラは興味深々に覗き込み、キースが食べるとキラも口を開けて催促する。
キースは少量づつ手のひらに乗せて、キラに食べさせていた。
…何でも食べるんだ。
そこへチハヤが近づいてくる。
「キラちゃん。美味しい?」
ギュウッ!
チハヤはニコニコ微笑んで、手のひらに果物を乗せてキラに食べさせてあげる。
「…お祭り騒ぎになっちゃったね」
ぽそりとチハヤが言ってくる。
「キラが認めてもらえれば良いよ。…でもこれが、後三回続くと思うと、そっちの方が気が重い…」
キースが苦笑いすると、その言葉にチハヤは笑った。
キラが炎の結晶石を作れるのは一日一個までだ。
その日の気温と、お腹の減り具合にもよる。
初めて炎の結晶石を作ったときは、お腹が減りすぎて貪るように作って食べていたらしい。
魔力の制御をするようになって、人族と同じ食べ物を食べるようになって、身体と魔力のバランスが取れるようになってきたようだ。
明日は熊族の町に行く。
賑やかな宴が終わり、イオの屋敷の客室でキラと一緒の部屋で眠った。
夜中に重くて目が覚めると、キースが眠るベッドの掛け布団の上に丸くなって、キラが眠っていた。
…キラは良い子だ。
キースは微笑みを浮かべて再び眠りについた。
『移動』してしまうので、時間はかからない。
イオの屋敷の敷地内に『移動』してきて辺りを見回した。
数日前までは灰色に染まっていた町も、色を取り戻していた。
イオに聞くと、町中の灰は、風を扱える者が集めて袋に入れ、町外れに回収しているらしい。
そこから必要な分だけもらっていって、水捌けの悪い土地の土に混ぜて作物を作ったり、土嚢として使うらしい。
過去にもそうやって灰を利用して来たそうだ。
屋敷の中には入ると、領主、イオの両親がいて、お礼を言われた。
ここへ来てくれたおかげで、長引かず住民達も早く家に帰れる事になって、喜んでいると。
そしてチハヤに服を着替えされされ、彼らに連れられて、近くの社に来ていた。
そこはワイトデ自治区のアリミネ火山を祀る社。
そして、多くの人が集まりザワザワとしていたが、キースがキラを連れて姿を現すと、辺りはシーンと静まり返る。
キラは驚いたのか、キースの服にしがみついて離そうとはしない。
そんなところも可愛い…などと思っていると、イオに社の前に立つように言われ、こっそりと耳打ちされる。
「炎の結晶石をここで作って見せれるか?」
「…う~ん。どうだろう…」
キースは抱えていたキラを地面に降ろし、隣に座り込む。
「キラ、ギュウッて、熱を集めれる?」
キースが聞くとキラはじっとキースを見て、空を見上げた。
風が吹き始め、キラの頭上に集まり始める。
…始まった。
「イオ。炎の結晶石を冷やす場所はある?」
「社の池を使うと良い」
そう言って、イオは隣に有る池を視線で示す。
「お湯が涌き出ている池だから、冷たくはないが…」
無いよりはましだろう。
そんな会話をしているうちに、キラの頭上に炎の結晶石が赤くキラキラと輝いていた。
回りにいるもの達は、その美しさに見惚れている。
風が収まり、落ちてくる炎の結晶石をキースは風で包み込み、落下する場所をイオが言った池へと誘導する。
ポトンと音がして、水蒸気が舞い上がった。
辺り一面、真っ白な水蒸気に包まれ、しばらくすると次第に収まり、視界がもとに戻っていく。
イオが池に入り、炎の結晶石を拾ってきて、キラのもとへ持って来た。
そしてキラの前に膝を付いて、炎の結晶石を掲げた。
「キラ様。我らワイトデ自治区は、キラ様をアリミネ火山の守護竜としてお慕いいたします。どうぞ、お守りください」
イオがそう言うと、回りにいた人々も膝を付いて座り込み、頭を下げた。
ギュウッ!
キラがそう鳴くと、イオは微笑みキラの頭を撫でる。
「よろしく。キラ様」
キラは撫でられて気持ち良さそうに目を細める。
そして、社で宴会が始まった。
キラの前にいろんな食べ物が運ばれてきて、キラは興味深々に覗き込み、キースが食べるとキラも口を開けて催促する。
キースは少量づつ手のひらに乗せて、キラに食べさせていた。
…何でも食べるんだ。
そこへチハヤが近づいてくる。
「キラちゃん。美味しい?」
ギュウッ!
チハヤはニコニコ微笑んで、手のひらに果物を乗せてキラに食べさせてあげる。
「…お祭り騒ぎになっちゃったね」
ぽそりとチハヤが言ってくる。
「キラが認めてもらえれば良いよ。…でもこれが、後三回続くと思うと、そっちの方が気が重い…」
キースが苦笑いすると、その言葉にチハヤは笑った。
キラが炎の結晶石を作れるのは一日一個までだ。
その日の気温と、お腹の減り具合にもよる。
初めて炎の結晶石を作ったときは、お腹が減りすぎて貪るように作って食べていたらしい。
魔力の制御をするようになって、人族と同じ食べ物を食べるようになって、身体と魔力のバランスが取れるようになってきたようだ。
明日は熊族の町に行く。
賑やかな宴が終わり、イオの屋敷の客室でキラと一緒の部屋で眠った。
夜中に重くて目が覚めると、キースが眠るベッドの掛け布団の上に丸くなって、キラが眠っていた。
…キラは良い子だ。
キースは微笑みを浮かべて再び眠りについた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説



アルファポリスで規約違反しないために気を付けていることメモ
youmery
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスで小説を投稿させてもらう中で、気を付けていることや気付いたことをメモしていきます。
小説を投稿しようとお考えの皆さんの参考になれば。


どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる