僕の狂おしいカミ様。

あきすと

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今思えば、一途な性格ではあったと
振り返られる。
末永先生の作品に衝撃を受けてから
読書に耽る事が増えていた。

たとえば誰かとの待ち合わせの時間や
電車の待ち時間などにも
文庫本をよく読む様になっていた。
学生の頃は同じ様な趣味の友人も
まわりにはあまり居なかった。

だから、尚更に物語の中に安住の地を
求めたのかもしれない。
『絵夢くん。残念ながら、君ともいつかは離れなくてはいけないね。』

いつもの少し軽薄な笑顔とは違って
末永先生の戸惑い気味な
気遣いを感じる笑顔に心が痛む。

あぁ、嫌だな。知りなくなかった、
まさか…まさか、自分がもうこの世には
存在してないだなんて信じられない。

こんな時どんな顔をしたらいいかも
分からないし、頭が真っ白だ。
『絵夢くん、君は…僕にだけ縛られなくても良いんだよ。でもね、無理にさよならしなくても良いから。それは、私もまだ心の準備が出来ていない。』

こんなに一生懸命に言葉を選んで、
必死になって伝えてくる末永先生を見たのは
初めてだった。

なんと言うのか、心が締め付けられる。
嬉しくて、少し哀しくて切ない…。

「僕…は、やっぱり末永先生の側に…側に居たら迷惑ですか?」
怖いなぁ、嫌われたくなくて必死だ。

不思議だった。
末永先生には何故か僕が見えていて
触れるなんて、どうして?

『…迷惑だと思わないよ。でも、この世界に絵夢くんを留めてしまう理由が、私だなんてなんだか申し訳ない気がするんだ。』
「あの、末永先生はもしかして…霊感があるんですか?」
『いや~、そんな特殊な能力は無いはずだけど?』
「…ですよね。」

末永先生は現に普通に僕にも触れてる。
自分で自分の体がよくわからない。
『ただね、なんて言えば良いのかな?触れた時に思ったより深くまで入り込む様な…そんな感覚があるかな。』

「あぁ、肉体としてはもう…」
『うん。よくは私も分からないけれどね。』
「じゃあ、今の僕は末永先生会いたさに構成できてると思ってくれて良いです。」

僕の言葉に末永先生は目を見開き、
『そんな事言われたら、私も心苦しいよ。』
壊れ物でも扱う様にゆっくりと
抱き締めてくれる。

ちゃんと熱が感じられる。
末永先生の優しさに甘えている。
このままでずっと側に居て良いはずがない
のは、僕が1番分かっている。

胸が詰まる様に苦しくて、涙が溢れ出そうなのを必死に耐えていた。
背中を大きくさする手のひらが、
あたたかで心地良い。

末永衣紀、やっぱり貴方は僕のカミ様だ。

結局、子供の様に泣き出してしまった僕を
末永先生は慰めてくれる。
生きていた時にこんな親切にされた事は
果たしてあったかな?

やっぱり人を想う心はどうしようも無くて
制御なんて難しい。
『絵夢くんの気の済むまで、居てくれたら良いよ。私は君をこのまま放っておけないから。』
「…僕が不憫ですか?」

泣き止んで、少しずつ気持ちが落ち着いて来た。溜め息混じりに末永先生を見上げた。
やっぱり…好きだ。
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