Sunny Place

あきすと

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⑦ポータル

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戦う力を授けたのは、エルフであり。
迫害された獣人達はエルフによって、魔力の扱い方を身に付け
人間は遠からずエルフによって、分断の道へと進む事となった。

「教わった事実とは、きっと本当は違うのかもしれません。」
『スフェーンの言う通り。迫害は人間同士の中にも起こり得る事。
己の正義や信仰、主義主張の違いからも生じてしまう。
知性を持つものは、そういったものだよ。』

ヴェイリネ先生は、外見こそ少年だけれど急に大人びた発言をしては
僕の言葉に頷いてくれる。

「それにしても、この文字本当にそんな事が書かれていたんですか?」
『驚くよな、一体どんな奴が渡して来たのかは分からないけれど。
試されているとしか、思えない。』

「この世界って、どこからどこまでが人間の領域なのかも分からないのに…」
『獣人だけが暮らす世界、ってのもあるかもしれないし。無いかもしれない。』
「行ってみたいです。」
『俺の教え子は、わざわざ火中の栗を拾いに行くつもりらしい。』
「人間は、確かに酷い事をする人もいますよ。でも、それだけでは無い事を
知ってもらいたいです。」

『さすがに、知ってはいるんだと思うぞ?じゃなきゃ、スフェーンにこんな物を
渡しても来ないさ。だからこそ、きっと揺れているんじゃないかな。』

「だと、良いんですけど。」

獣人の生活圏内に人間が入る事を、獣人側は快く思わないと言うのが
一般的なイメージではある。

『ルールは確かに必要だし、安全に暮らす為ならお互いに近寄らない方が良いとは思う。』
「でも、それではあまりに…」

この世界には3つの種族以外にももっと多くの種族が居る事を忘れてはならない。
『スフェーンに、本当にどうにかしたい。って気持ちがあるのであれば…』
マフィンを食べ終えたヴェイリネ先生が椅子から立ち上がり
「え……?」
何も無いと思っていた空間に、黒いドアが出現した。
『これは、ポータルって言ってもう一つの世界を有している。』

急に言われてもすぐには理解できずに、首を傾げた。
「どういう物ですか?」
『スフェーンの想い一つで、もう一つの世界と言うか出現したい場所に行ける。』

前々から、王室からのお声が掛かっていると噂では聞いていたけれど
ここまでスゴイ魔術を使えるとは、さすがに知らなかった。

「転移出来るって事ですね。」
『そう、いう認識で良いと思う。俺の脳のエネルギーがある内は
精度が高い。きっとスフェーンの思う場所に出現できると思う。』

「獣人さんがどこに居るのか、分かればいいのに。」
『獣人の活動時間は、夜が最も活発だろう。』
「さすがに、時間は越えられませんよね?」
『……ぅ、コレは今この瞬間の話だから。』

少し悔しそうにヴェイリネ先生が顔をしかめる。
「では、夜にお願いしても良いですか?」
『危険だぞ…。獣人は、特に月が満ちる頃になると噂では人間を襲う事もあるくらいだ。』
「でも、どうやってこっち側に来るんですか。」

『いや、だからな?エルフが昔力を貸したせいで…獣人もポータルは使えるんだよ。』
「あ、成程~…」
『スフェーンが心配になって来た。』



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