月を想う。

あきすと

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プロローグ。

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このシリーズを書くキッカケにもなった
プロローグです。
もう、10年ほど前のままの原文を載せます。








プロローグ

父さん…、また行くの?」
「当たり前だ。私は国のために命を賭してもかまわない。」
「でも、僕が寂しいよ?」
「そうか…。しかし、エスカデ。お前は男の子だ。私がいない間に母さんを頼む。しっかり守ってやってくれ」
「僕が…?…はい。でも、必ずまた帰ってきて下さい。また、僕と一緒に遊んでよ。」

父は結局帰らなかった。
帰ってきたのは立派な勲章と国旗だけ。
ようするに遺体なんて無理な話なんだろう。
形として成していないということ。
それからは私が母を守るため、働く母を支えるために
家の家事を全てこなしながら学校に行き、夜は遅くまで
本を読みふけり、医学の勉強ばかりしていた。

そのおかげで視力はとことん落ちて
あまりパッとしない眼鏡をかけはじめたのが16の時だった。
だから?

私は物心ついた時から
早く結婚したかった。
暖かい家庭というモノを心から欲しがっていた。

恋愛も何度かしたが、実りあるものとは言えず
彼女たちの男遍歴に私が加わるだけとなっていた。

私の近所に写真家の青年が引っ越してきたのは
確か20歳の頃だったと思う。

日本から来ているということで、いくつか彼の撮った写真を見せてもらった。

異国の情景…みな、どこか照れくさそうな笑顔。
家族大勢での写真。
色々あった…。

「すごいな…話には聞いていたけど…。」
「あぁ。しゃしゃり出ず、どこか少し後ろから笑みを浮かべているような写真が多いな。」

彼は、一枚の写真に目をやりどこか複雑そうな表情をした。

「あっ…」
「なっ、いいだろう?」
「うん。何だろう…この気持ち…。綺麗というか、わかんないけど不思議と惹かれる」

「肌の色は違えど、感じるものは同じか…。この方は男だ。とても美しくてそして何より恐ろしい考えをお持ちだ。」

「そんな…、こんなに優しそうなのに?」
「あぁ。この方は軍の上層部に知り合いが多い。ご本人もその中の一人なんだ」

そんな信じられないような事実を聞きながらもエスカデは葵の写真に眼を奪われたままだった。
セピアの写真にもかかわらず、鮮やかに映る。

そのせいか…この目で見たい。

触れたい、
その肌に。

「信じられないよ、だって私とあんまり歳は変わらないみたいだけど?」

「おっ…、いい所に気が付いたな?そうなんだよ、葵はいつまでも綺麗なんだ。歳はおそらくとっていないんじゃないかと思う。」

「ぷっ…、それはナイ、ナイ。」

「いいさ、笑っていれば。本人を見たら解るってもんだ。で、この葵がなぜ若くして上層部にいるかと言うとやっぱり一つだけ思い当たるふしがあるんだよ。」

「まぁ、なんとなくは解るけど…汚らわしいよ。」

「一部では男喰らいの葵様って言われている。…らしい。」

「うわぁ、悲惨。でも、美しいのに汚いって言うのかい?」

「俺からはもう言えないよ。知りたかったら実際に会って見ろ。性格は悪くない。頭も良く、人の心を読むのが上手い。」
「怖 いね…でも会って見たいよ。目の前でこの顔をされたら私も…狂うのかな?」
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