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心の渇き

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キスがこんなに気持ちいいなんて、気付かなかった。
どうしてだろうなんて考える前に、目の前にいる松原くんを
見たら。
すぐに答えが分かった。

でも、やっぱり色々と思う所はあって。
やっぱり慣れてるのかなぁ、とか
いくら同じ竹本いすかでも…やっぱり大きく違うのは
自分が痛い程に感じている。

松原くんがハッキリ言ってくれたのは、良い事だったと思う。

割り切ってもいいのかな?

『嫌じゃなかった?』
どうしたら、そんな優しい目で誰かを見つめられるのかな?
俺は、ハッキリ言って仕事に追われてばっかりだったから
マトモに恋愛もして来なかった。

この人生において、あんまり人を好きにもなった事が無い。
「全然嫌じゃなくって、びっくりした。…自然な気さえした。」

松原くんは、本当に嬉しそうに笑うから。
俺も嬉しさが伝わって、つられて笑っちゃう。

素直な子なんだなぁって思う。
『昨日までは、普通にキスもしてたのに。何でだろう?久し振りな気がした。』
「ほんと?」
『本当。俺はいつだって嘘はつかないから。いすかも、俺には嘘つかないで?』
絡めとられた俺の手のひらは、松原くんの頬に添えられた。

不思議だなぁ、人に触れる時の緊張感も
下手したら嫌悪感も、この前までは確かにあったのに。

松原くんには、一切感じない。

「俺、松原くんの事今でもきっと…好きなのかな?もっと、触れて欲しいって感じる。」
この手のひらの感覚、窪みでさえも前から知っていた気がする。
懐かしいと言う言葉が近い。
体温も、俺ときっと似てるから?

まるで、分け合って来たみたいな違和感のなさ。

絆される様に、俺と松原くんはまたキスを交わした。

熱い、頬に熱を感じる。頭もぼーっとする。
考える事より、今この瞬間を5感で味わう事に没頭する。

いいのかな?こんなに心地よくて。
松原くんが、リードしてくれるなら経験してみたいとさえ思ってる。

今まで、凍えた心で誰にも心を開けずにいた俺が
まさか、幻のメンバーであった
松原若波と…こんな関係になるなんて。

瞳の奥が、本当にキラキラと瞬いていて綺麗。
力強く拍動する心臓の音。
俺は、松原くんに抱き締められながら
ソファに背中を預けていた。

もう、夢でもいいって思った。

何をどうするのかは、何となく以前撮影したBLドラマの
下調べの段階で知ったりしていたから。

ハグするだけじゃなくて、しっかりと抱き締めあう事だけでも
本当に心地よくて、信じられないくらいしっくり来る。

「ねぇ、どうしよう。抱き合うだけでも…鳥肌が立つんだけど。」
『え、無理そう?』
違う違う、そんなんじゃなくって。

「こんな事初めてで、何て言えばいいのか分からないけど…すごくピッタリな気がする。」
久し振りに感じる、幸福感で脳が喜んでるんだ。
『ちょっと、言う事が可愛くない?スイッチ入っちゃった?』

キスをしてからだ。心のままに言葉が自然と出ちゃう。
「かも…、しれない。笑わないでね?」
『笑う訳無い。いすかってさ、どんな時でも素直に言ってくれるんだって俺の中では、思ってる。』
「変わらないんだね、今の俺も。」
『口、開けて…いすか。』

何だろう?と思って言われるがままにそっと口を開く。
松原くんは、リビングテーブルの上のグラスを手にして
グッと飲み干す。

さっき、夕食後に飲んでいた…確か
「…っ…ぷは…、」
ミントが入ったモヒートだった。

口移しで注がれて、危うくむせそうになったけど
飲み込んだ。
「もう、こんなお酒飲んでるの?」
『いすかが、入浴中にね。何なら、作ろうか?』
「俺はいいよ、体だるくなるし。それに、今少し飲んじゃったから。」
『ミント噛んだ?スースーする』

うーん、ここまでされて。俺も、何か松原くんに
返したいと言うか。
出来る事ってないかなぁ?と思って不意に下腹部に視線をやると
「…俺で、起つの?」
『ったり前だろ、お前はな…竹本いすかはどんな事になろうとも。時代が、年齢が
変わろうが俺のなの。』

ぅわー…。漫画見たい事言ってくれる。
単純に嬉しかった。
ちらっ、と松原くんを見上げて
「してみても、良い?」
とたずねてみた。

『ん…、マジで?俺はいいけど。いすか平気なのか?』
分かんないよ。そんな事は。
だって、今まで誰のもした事無いんだから。

「分かんないから、してみる…。」

松原くんにのしかかる体勢になって、ズボンの前を寛げて
まずは、下着の上から触れてみた。
「…ぁの、ちょっと待って。」
『怖いなら、無理しなくてもいいぜ?トイレでヌいてくるし。』
「違うよ、怖いとかじゃなくって…誰かの触る事も無かったからさ。」

指先でそっと、下着を下ろしグッと顔を近づけた。

「上手には、期待しないでね。」
それだけ言ってから、俺は松原くんのを手にして頬に摺り寄せてから
先端にキスをした。

思ったより平気で、すんなりと口にも含められる事に
ちょっと驚いた。
へったくそなんだろうとは、自分で分かってる。
けど、松原くんが俺の頭を優しく撫でてくれるから
頑張りたいなぁって思って、深くくわえ込む。

息するのもちょっと苦しい。
松原くんは、ちょっと険しい顔してる。
どうしたのかな?
一旦聞いてみようかと思って、じゅぷじゅぷするのを止めたら

『さっき、ミント噛んだだろ…そのせいで熱いのにスースーして』

あ、そういう事か。じゃ、気持ちいいのかな?って
思ってたらガシッと松原くんに頭を両手で押さえつけられて
ぐぐっと喉の奥にまで挿入されながら、俺は息苦しさと手の圧に
抗えずに、なされるがままに扱かれた。

押さえつけられた頭が、離された頃には酷くむせて
松原くんは、そんな俺を真正面から見つめて
『これが、竹本いすかの姿だろ?』
にこりと笑っている。

前髪を撫でつけられて、俺の額にキスをした。

俺はこの日初めて、同性の精液を何のためらいも無く飲み込んだ。

こんなにも、強引な感じがするのに嫌じゃない自分に
どうかしてるとも思う。
でも、もっと求められたい。

俺の口元を近くにあったタオルで拭いてくれる姿を見ていると
やっぱり嫌いになるどころか、また好きになる気さえする。
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