酔いの夢の中では恋人

あきすと

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多分、俺のせいだよな。
でも、ふざけても無いしノリでも無くて。
結構…前から惹かれていた事に変わりは無かった。
この気持ちに名前をつけられるのが
何となく怖かったのかもしれない。


仕事中も、頭の中を巡り続ける守岡さんとの事。もっと早くに向き合えば良かった。

俺のささやかな願いは天には届かなかった。
何故なら、それから数ヶ月の間
守岡さんは家を留守にしたから。

多分、仕事の関係なんだとは思う。
なのでもちろん、会話のチャンスは
消えてしまった。
早春にパタリと姿を消した守岡さんが
戻って来たのは、鬱陶しい梅雨の季節だった。

珍しく、チャイムがなって。
その日は土曜の夕方だった。
ドアを開けた先に立っていた、守岡さんに
俺はすぐに抱き付いた。

驚いた、嬉しかった。
言葉に出せなくて、ただ抱き締めてくれる
腕を信じて俺も何度も抱き締め返した。
相変わらず異国情緒あふれる衣装みたいな
私服が似合っている。

「髪、切ったんだね…カッコイイ」
『頼智、ごめん。』
まさか、謝られるとは思わずに
面食らっているとキスをされた。
恋しいなんて表現では、もしかしたら
もう足りないのかも。

守岡さんて、実は結構…深いキスをしたがる
ところがあって。
俺はそういう所もすごく良いなぁって
思う。
ケロッとしてそうに見えるのに、
セックスだって濃密なのが好きなんだろうなぁと、勘繰ってしまう。

『…感触がたまらない』
「ッ…ん?口の中のこと?」
『そ。柔らかってあったかい。気持ち良い。』
とりあえず誰かに見られたらヤバいので
すぐに守岡さんを部屋に招き上げた。

雨に降られて、濡れてしまった髪は
少しウェーブがかっていた。
俺はタオルを用意して、守岡さんの頭を
拭こうとする。
「少し、屈んで下さいな。」
『あ、…ハイハイ。』
気持ち、動作はゆったり目の守岡さんは
膝を折って屈んでくれる。

洗面所の鏡に映し出される姿を見て
やっとまた会えた事を実感した。
「お疲れさまでしたね。長旅だったでしょう?」
『そうだな、4か月は経ってたか。』
「でも、引っ越されてたら俺…もっとへこんでました。」
『当て付けみたいだから、やめた。』

守岡さんて人は底が知れない。
だからこそ知りたくなる。

『何で俺が、海外行ってたの分かった?』
守岡さんは俺を撫でたり、抱き寄せたりしては
適当に笑っている。

「…なんとなく?あなた、作家さんか何かですよね。」
『取材旅行のつもりが、危うく永住してみたくなったんだけど。
日本に部屋も借りたまんまだから帰国した。』

あ、やっぱり。守岡さんには物書き物をしてるイメージが
すごく感じられる。

俺の部屋には無遠慮に入って来るけど、自分の部屋の事は
一切話はしない。
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