【クソ彼氏から離れらんなくて】⑤クソ彼氏に振り回される日々。

あきすと

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央未のお誕生日受難…

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久し振りに、朔が一緒に誕生日を祝ってくれるってだけで俺はかなり浮かれていた。
で、すっかり忘れていた事がある。それは、迷信なんだろうけど
【誕生日の前後は、気をつけて】という、少しだけ不吉なものだった。
今日も、目を酷使して疲れてる。最近、エアコンもフロアー内で効いてるせいか
目がよく乾いて、しぱしぱする。

早く、家に帰ろう。焦っていた。帰宅ラッシュに帰れるならまだいい方なのかもしれない。
朔なら…食事も作るのかな?こんな事聞くのは、催促しているみたいで気が引けるけど
一応確認しておかなきゃならない。
メッセージを送信して、コンコースを歩いていると早々に、朔からの返事が来た。
いやいや、あいつもう帰れるの?早すぎないか。まぁ、つっても18時は回ってる。
食材の買い出ししてるみたいで、俺も朔の居る食料品店に向かう事にした。

電車に揺られながら、なかなかの混雑具合だ。俺は鞄を両手で抱いてつり革に掴まっていると
「…?…」
あれ?なんか…尻の方がザワザワする。
まさかね~、と思って恐る恐る振り返ると中年のサラリーマンと目がバッチリ合った。
ウソだろ?声も出ないし、まだ…撫でてる!?肝太っ…。
視線はあっさりと外されて、睨みつけようとしたけど無理だった。
すんごい、真面目そうなオジサンが…よくもまぁ。
いやらしい触り方が、むしろ面白かった。まぁ、身近に変態がいるとあんまり心が動じない。
『ヤメロ、この変態』
俺の、横にいる金髪のチャラそうな男の子が、オジサンの手を捻り上げた。
『この人、男だろうが…』
「…すみません、びっくりして。声も出なくって…」
金髪の子は、オジサンの事を睨みつけながら俺の肩を掴んでオジサンから遠ざけた。
『当たり前だよ。こんな公共の場で…よくもまぁ、恥ずかしげもなく…。』
「!あ、ごめんなさい。俺、次の駅で降車するんで…、助けてくれてありがとうございます」
『ぇ、許すの?…まぁ、そっちがいいんなら俺には口だす権利も無いけどさ。可愛い顔してんだから、
気をつけないと…はけ口にされんよ。』

金髪の子は、俺が降車する時に、ヒラヒラと手を振ってくれた。
あー、将来有望なイケメンだったなぁ。
きっと、もう可愛い彼女いるんだろうなぁ。
俺は、急いで地下街から地上に出て朔の居る店へと駆けて行く。
最近、あんまり走ることも無いからもっと自分は早く走れるかと思っていたけど、全然。
たどり着いた店は、朔のお気に入りで海外からの輸入食品なども多数取り揃えてる
人気のある食料品店だった。
店内で、朔を探して回る。何となくだけど、酒のコーナーに居ないかなぁ?と思って
入り組んだ通路を抜けて、輸入酒のコーナーを見ている朔を見つけた。
後ろ姿がもう、きゅぅううううぅん。って、なる。

体の均整がとれてるし、脚も長いんだよ。余ってるもん。
俺の彼氏が…今日もカッコよすぎて、有難うございます!だよ。
『央未、見えてるよ』
朔は、酒瓶越しに俺を見たらしくてクスクス笑っている。
「電車で、痴漢にあったんだけど…」
『ん?ここ来るとき?』
「はい。ついさっき。」
『なかなかのアホも居たもんだね。俺が隣に居なくてよかったね?触ったの、どんな奴?』
「真面目そうなオジサン。ぁ、でも金髪イケメンに助けられちゃってさ~、ちょっと嬉しかったよ」

朔は、どこか面白くなさそうに瓶を棚に戻した。
『何、その王子様…俺の央未を守ってくれたお礼しないと』
「王子様…うん、確かにそんな雰囲気だった。髪が少し長くて縛っててさ」
『央未は、イケメン好きだよね~。こぉんなイケメンを侍らせてるのに…まだ欲しいの?』
「欲しいって、何だよ。変な言い方やめてくれる?」
軽口をたたきながら、朔と食料を見て回る。かごに入れられた輸入酒の瓶は1本だけ。
『央未、軽く飲むだろ?』
「うん、ちょっとだけね。明日も仕事だし…加減しなきゃ」
『真面目ちゃんだよなぁ俺も、央未も。ささやかに2人きりで誕生会だなんて』
「騒ぐのあんまり好きじゃないからね。大事な日は、大事な人と過ごす。これが一番幸せっしょ」

にゅ、と朔の手のひらが俺の頭を撫でてきた。
『俺も、今ならその気持ちが解るよ…』
スーツの上にコートを羽織った姿の朔に微笑まれる。
「…かぁっこいい」
『ケーキは、この帰りに取りに行くの。』
「そんな事までしてくれるの?悪いよ…」
『ケーキ、大きいのだと食べきれないだろうから、ちょっと小さくなるけどスゲー綺麗なの見つけたから
央未…気に入ると思う』
「俺よりも、朔の方が嬉しそうと言うか…ふふっ、朔ありがとうね。」
『俺に出来る事って、このくらいだけど。3年間祝えなかった罪滅ぼしも兼ねてる。』

少なからず、後ろめたさもきっとあったのかな。
朔は真面目さもきちんとあるから。
買い出しの帰りには、パティスリーに寄って朔はケーキの確認をしてから
代金を支払っていた。
…ここまでしてもらうのは、気が引ける。けど、嬉しい。
俺は、子どもの頃から誕生会にも無縁だし、普通の日の誕生日だから
学校から家に帰れば、両親は当たり前の様にいない。
いわゆる、かぎっ子だった。
近所の同級生とも、それほど遊ばなかったし内向的で大人しかった。
心にある事を口に出す事は、ほとんど無く。
ただ、日々が過ぎていくそれだけで、良しと思っていた。

朔みたいな自己主張の権化を見てると、初めは面食らう事が多かった。
人って、こんなにも自由で許されるのか?とさえ思っていた。
朔の突飛な行動も、誰かを巻き込む形も、慣れてしまえば何てことなかった。
自分は、澱の溜まる濁った水の中に居るけど朔は、大海を好き勝手に旅しているみたいで
見ていて、清々しかった。
朔の背中は、哀しくならない。どれだけ、俺が後ろから見つめていても
寂しくならなくなっていた。
もう、好きで不安になったり確かめ合ったりする時期さえも、過ぎた気がする。

朔は、ベルの鳴るパティスリーのドアを開けてくれた。
俺に、ケーキの箱を預けてくれて
『お待たせ、』
穏やかに笑った。なんか…フツーの彼氏っぽい。
「うん、可愛いサイズ…どんなのか楽しみ」
『このまま指輪買いに行きたいもん…』
「それは、さすがに…悪いよ」
『お店の人、彼女さんですか?って聞いて来たけど』
「ぶは…、冗談でしょ?」
『嫁って事にしておいた。』
とんでもない嘘…、うーん、嘘?なのかぁ。
「ない、ない!俺…スーツだし」
『でも、コートが…割と』

「これ、ロングコートがちょっと…丈のせいかな?」
『ちょっと、大きいんだろ。でも、そこが可愛いんだけど』
「朔は、タイト目でかっこいい…似合ってる」
『気にすんなって。まぁ…央未の見た目ですぐに男!って感じがしないのは…昔からだろ』
朔は、俺にない要素ばっかり持ってる。
多分、そのせいもあって俺は朔に執着するんだろうと思う。
後は、密かに…自分の中の女性に近い部分が朔を好きで。
「俺は、足りないものをずっと朔から貰い続けてる…」
珍しく朔がタクシーを停めて、今日は家まで乗せてもらう事になった。
『ちんたら歩いてるより、さっさと家で料理始めないと遅くなるから。』

朔は、気前も良いし金払いもいい。
嫌いな事は、ハッキリしない事とか、もだもだしてる事って言う位
実は、せっかちでもある。
部屋に戻って来た。ポストの方に何やら赤い封筒が見えて、俺は封筒を手にした。
部屋の中に入った朔は、食材を冷蔵庫にしまいながら
『央未、お前先に風呂入って来い。時間もったいないし』
声を掛けて来た。
「手伝うけど?」
『大丈夫、一人でした方が早いから』
「っひど…。」
俺は封筒を、テーブルの上に置いて浴室へと向かい
お湯張りを始めた。
冷蔵庫に、ケーキの箱と酒瓶を入れて待ってる間に着替えの準備を済ませる。
「そんじゃ、お言葉に甘えて…先に入るね、朔。」

朔は、黒いエプロンを締めていて完全に料理する時のモードだ。
『飲みながら作ると、捗るの分かるわぁ』
「…ぇ?もう飲んでるの、朔~」
『冗談。さすがに勝手に先には始めないって。いいから、ゆっくりしておいで央未』
「ありがとう。…あの、そんなに大袈裟にしないでいいからね」
『俺は、作るの楽しいから平気』
「俺、朔より出来ないんだから…来月のプレッシャーだよ」
『その時は、俺も手伝うから。大丈夫』

この時は、まだ穏やかに時間が流れていた。(はずだった)
【その後が、女体化のお話に繋がります】
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