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海の星、海の月。
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『海、行きたかった~。』
クソ彼氏は、この期に及んでまだこんな事を言っている。
まぁ、行けばいいと思うよ?
クラゲだらけの海にね。俺は、それを遠目に観察しててあげるからさ。
「何?まだ水着ギャルとか言ってんの?」
飽きれてると言うか。もう毎年の事なので、致し方ない。
発作みたいなものだと思って、俺も寛大な心で聞いてる。
最近やっと、隣に朔が住み始めたと思っていたのに。
全然、部屋には帰らないし。も、ずーーーーーっと俺の部屋に居るんだよね。
良いんだけどさ、仕事の時は一応戻ってはいるみたいだから。
その辺に関しては、うるさく言う気も無いし。
むしろ、俺はちょっと嬉しかったりするので…。
『違うわよ。俺が見たいのは…央未の控えめな水着姿。』
ぞわっと、背中が粟立つ。
「俺に、どっちの水着を着せたいんだよ。この変態は。」
『どっちでも、俺は甘んじて受け入れられるし、どっちでも美味しいに違いない。』
最近の朔の変態度数が、帰国してからどんどん上昇していくものだから
俺は、ついて行く気も無い。
「無理無理。」
『…冗談抜きにして。ただ、浜辺歩くだけでも良かったんだ。』
急に、すました顔で言われてしまうと思わず、流されそうになる。
「そんくらいなら、いつでも行けるよ。」
『だよな…』
「うん。いく?」
『今夜、歩いて行ってみるか』
「今、19時だけどね。」
『夜は、実際長いからなぁ…たまには、潮風受けて来るか。』
朔の適当な言動だから、程々に聞いておくことにした。
「おい!朔…寝るな」
晩御飯が終わると、うつらうつらしだす朔の肩を揺すって起こす。
俺も朔も、羽織を着て外に出る。
『歩いて30分もあれば、海に行けるのに。近いと行かないよな。』
「海も山にも近いって、贅沢な話かもね。」
学生の頃は、夏もバイトをしてたから海に行くことも無く。
朔と付き合ってからは、海はより遠くに感じていたかもしれない。
ただ、一緒に居られれば俺は満足で。
時間を惜しんでは、べったりだった。
『央未連れて、海なんかいったら面倒くさいから。』
「ぇ、邪魔ってこと?」
『違う。俺の央未を変態どもが、いやらしい目で見て来るだろうから。って事。』
こうやって、他愛もない話をしながら歩く距離って
あっという間だったりする。
「一番の変態は、おまえだろ?」
『央未が、俺を目覚めさせた張本人なのに…』
海岸線を歩いていると、潮風の匂いが漂ってくる。
もうすぐ、砂浜が見えるだろう。
「最初に言っておくけどさ、海水かけないでね。」
『じゃ、何掛けて欲しいの?』
「何も掛けていらない!…ったく、」
『ぅわ、潮くさ…』
朔に風情とか、雰囲気を求めるだけ無駄なんだった。
石段を下りて、砂浜に降り立つ。
「あれ?」
夜の海って、なんか思ったのと違う。
もっと、キラキラしてるのかと思ったけど。
『めっちゃこわー…!何か、飲み込まれそうで怖いってこれ~』
こういう所の感性は、俺と朔は無駄に似てる。
「やっぱり?俺も、そう思った。綺麗とかでもなくて恐怖じゃん。」
朔は堤防まで来て、後ずさる。
『俺、怖いの無理だから。砂浜で綺麗な貝殻でも探すわ…』
「乙女かよ…。」
『夜でも見つかるかな?』
「知らね。」
『央未…、』
「何だよ」
ジッ、と何かを確かめるような視線。
『俺の事で、疲れたら…ちゃんと言ってくれないと分からないよ。』
「疲れてなんかない。ただ、」
『うん…』
「結局は、人目を忍ぶような関係って…辛いなぁって思っただけ。」
『俺、別に忍ばないけどね。』
「朔はもっと、忍べよ。」
『俺は、この場で…できるけどさ。央未、絶対嫌がるもん。』
当たり前すぎて、言葉も出ない。
どこから、どう突っ込めばいいのかも分からない。
「俺が女だったら、絶対海でしよー。とかお前が言い出して、しまいには医者にかかる事に
なりそうだからな。くわばらくわばら。」
『海でかぁ、さすがにそんな事はしない…と思うけど。…全然、貝殻ないね。』
朔は、何故か手の甲で砂をかいている。
「桜貝とか、あったりするのかなぁ…」
指先で、掘るのにも限度があった。
『白くて、小さいのならいくつかあるけど。』
「ピンク色の貝かぁ…」
『そう、央未の爪みたいな。可愛い貝殻。』
「朔といると、飽きないな。」
『皮肉、では…無さそうだけど?やった、』
「朔と居ると、自分が男でも、きっと女でも楽しいだろうから。」
『性別なんて、関係ないって。だって、央未…おっぱいあるじゃん。』
どこまでが、冗談なのか分からないけど。久しぶりに会ってからの
朔は、頭のねじがかなり緩んではいるみたいだけど
気負いない。
お見合いとか、現実問題もあったり
相変わらずの女好きも、それさえも含めて朔なのだから。
「俺のおっぱいは、朔を癒すためにあるのかもしれないな…」
『素敵すぎるし、それ。』
「視覚的にクれば、性別問わなくなる節あるからね。」
『姿、形に囚われるのは生きてると、仕方ない。俺なんかのレベルに来ると、央未の存在自体がもう…』
朔に、倫理観を云々言うこと自体無駄な気もするけど、
朔なりの独特な世界観を耳にすると、言う程悪くない気もした。
「朔の前向きなトコ、見習わなきゃな。俺はまだまだ気にする事あるし…彼女いないの?って、職場の人に聞かれたら
返答に困るモン。」
『彼氏いるって、言えば?こんなエクセレントな彼氏も、そうそう居ないだろうから、自慢して良いよ。』
「時代遅れだよな…。そもそも、彼氏と彼女の二択が最初から用意されてる前提も何なんだろ。正直に、選んでも…
居ないって言っても、所詮は人ごとなのに。」
『央未は、俺の彼女…ではないけどさ。まぁ、嫁だよ。もう…』
セカイが、もっと単純なら。どれだけ生きやすかったのか。
「好きな人と一緒に居られれば、それだけでいいと思ってた。」
『絡むから、駄目なんだよ。お金とか、損得勘定とか、さ。』
砂を掘るのに飽きた朔が、砂浜に座る。
「清い心のままで、…海の彼方に行く事を選ぶ人も居たくらい。人の心は、難しくて頭じゃ考えれないし」
『心でも、抱えきれない。』
「だから、こうして手を繋いで…」
『無力感に打ちひしがれながら、夜の海にのまれたくなる。』
暗い海の底から、無数のいざないが
手を脚を、そして心を捕らえて離さない。
足許をのぞき込めば、背中が粟立つのはきっと
見えない恐ろしさを本能で感じているから。
「いきたくないね。」
『でも、いつかは…いくよ。』
「うん。離れたくないなぁ。」
『俺が、どれだけ央未を抱き締めても…別たれてしまうなんて。泣きそう』
「きっと、また俺の考えによく似たのが、いつかまたどこかで産まれてくるんだ。」
『俺は、どうかな?何か次はヒトになれないかも。』
くすくす笑って、さらっと哀しい事を言う朔は
急に幼く思えた。
「大丈夫だよ、例えば動物でも、植物でも…朔が存在できてるだけで俺は嬉しい。」
『植物でも、意志はあるらしいからな。』
「なかなかさ、こういう話って日頃しないだろ?」
『あんまりしない。でも、俺は結構好きな話だよ。』
「俺は、朔の精神面もわりと好きだけどね。」
『俺の頭の中は、おっぱいと央未の事で、もうあんまりスペース無いんだけどさ。』
湿った砂が冷たくて。俺は座らずに膝を抱きながら
しゃがんでいる。
波は砂を洗い、遠くに見える小島の松を見ていた。
「好きだねぇ…胸の話。朔は、きっと抱かれたかったんだよ。甘える事をちゃんとできなくて、
思ったより早くに心が出来てしまったから。」
『甘えるなんて、昔は出来なかった。だからかな?今はアホみたいにお前に甘えたくなる。』
「知ってる。野郎に膝枕して暮らすとは思わなかったし。」
『多分さ、俺がきっと央未の…内なる母性を目覚めさせてるんだよな。』
「可能性は、あるね。」
会話も。尽きかけた頃、朔がくしゃみをした。
無言で、俺が立ち上がると。下からの朔の視線。
ぶらん、とした腕を振って
朔に振動を伝える。
朔は、しぶしぶ立ち上がって
俺の首に腕を絡めて目を開けたまま
キスをした。
朔の冷たい舌が、俺の口内の粘膜を撫でて
くすぐったい。
何にも考えずに居られたら、きっとこのまま
溶けあう様に求めてしまえたのに。
『かぁーえろっと』
クソ彼氏は、この期に及んでまだこんな事を言っている。
まぁ、行けばいいと思うよ?
クラゲだらけの海にね。俺は、それを遠目に観察しててあげるからさ。
「何?まだ水着ギャルとか言ってんの?」
飽きれてると言うか。もう毎年の事なので、致し方ない。
発作みたいなものだと思って、俺も寛大な心で聞いてる。
最近やっと、隣に朔が住み始めたと思っていたのに。
全然、部屋には帰らないし。も、ずーーーーーっと俺の部屋に居るんだよね。
良いんだけどさ、仕事の時は一応戻ってはいるみたいだから。
その辺に関しては、うるさく言う気も無いし。
むしろ、俺はちょっと嬉しかったりするので…。
『違うわよ。俺が見たいのは…央未の控えめな水着姿。』
ぞわっと、背中が粟立つ。
「俺に、どっちの水着を着せたいんだよ。この変態は。」
『どっちでも、俺は甘んじて受け入れられるし、どっちでも美味しいに違いない。』
最近の朔の変態度数が、帰国してからどんどん上昇していくものだから
俺は、ついて行く気も無い。
「無理無理。」
『…冗談抜きにして。ただ、浜辺歩くだけでも良かったんだ。』
急に、すました顔で言われてしまうと思わず、流されそうになる。
「そんくらいなら、いつでも行けるよ。」
『だよな…』
「うん。いく?」
『今夜、歩いて行ってみるか』
「今、19時だけどね。」
『夜は、実際長いからなぁ…たまには、潮風受けて来るか。』
朔の適当な言動だから、程々に聞いておくことにした。
「おい!朔…寝るな」
晩御飯が終わると、うつらうつらしだす朔の肩を揺すって起こす。
俺も朔も、羽織を着て外に出る。
『歩いて30分もあれば、海に行けるのに。近いと行かないよな。』
「海も山にも近いって、贅沢な話かもね。」
学生の頃は、夏もバイトをしてたから海に行くことも無く。
朔と付き合ってからは、海はより遠くに感じていたかもしれない。
ただ、一緒に居られれば俺は満足で。
時間を惜しんでは、べったりだった。
『央未連れて、海なんかいったら面倒くさいから。』
「ぇ、邪魔ってこと?」
『違う。俺の央未を変態どもが、いやらしい目で見て来るだろうから。って事。』
こうやって、他愛もない話をしながら歩く距離って
あっという間だったりする。
「一番の変態は、おまえだろ?」
『央未が、俺を目覚めさせた張本人なのに…』
海岸線を歩いていると、潮風の匂いが漂ってくる。
もうすぐ、砂浜が見えるだろう。
「最初に言っておくけどさ、海水かけないでね。」
『じゃ、何掛けて欲しいの?』
「何も掛けていらない!…ったく、」
『ぅわ、潮くさ…』
朔に風情とか、雰囲気を求めるだけ無駄なんだった。
石段を下りて、砂浜に降り立つ。
「あれ?」
夜の海って、なんか思ったのと違う。
もっと、キラキラしてるのかと思ったけど。
『めっちゃこわー…!何か、飲み込まれそうで怖いってこれ~』
こういう所の感性は、俺と朔は無駄に似てる。
「やっぱり?俺も、そう思った。綺麗とかでもなくて恐怖じゃん。」
朔は堤防まで来て、後ずさる。
『俺、怖いの無理だから。砂浜で綺麗な貝殻でも探すわ…』
「乙女かよ…。」
『夜でも見つかるかな?』
「知らね。」
『央未…、』
「何だよ」
ジッ、と何かを確かめるような視線。
『俺の事で、疲れたら…ちゃんと言ってくれないと分からないよ。』
「疲れてなんかない。ただ、」
『うん…』
「結局は、人目を忍ぶような関係って…辛いなぁって思っただけ。」
『俺、別に忍ばないけどね。』
「朔はもっと、忍べよ。」
『俺は、この場で…できるけどさ。央未、絶対嫌がるもん。』
当たり前すぎて、言葉も出ない。
どこから、どう突っ込めばいいのかも分からない。
「俺が女だったら、絶対海でしよー。とかお前が言い出して、しまいには医者にかかる事に
なりそうだからな。くわばらくわばら。」
『海でかぁ、さすがにそんな事はしない…と思うけど。…全然、貝殻ないね。』
朔は、何故か手の甲で砂をかいている。
「桜貝とか、あったりするのかなぁ…」
指先で、掘るのにも限度があった。
『白くて、小さいのならいくつかあるけど。』
「ピンク色の貝かぁ…」
『そう、央未の爪みたいな。可愛い貝殻。』
「朔といると、飽きないな。」
『皮肉、では…無さそうだけど?やった、』
「朔と居ると、自分が男でも、きっと女でも楽しいだろうから。」
『性別なんて、関係ないって。だって、央未…おっぱいあるじゃん。』
どこまでが、冗談なのか分からないけど。久しぶりに会ってからの
朔は、頭のねじがかなり緩んではいるみたいだけど
気負いない。
お見合いとか、現実問題もあったり
相変わらずの女好きも、それさえも含めて朔なのだから。
「俺のおっぱいは、朔を癒すためにあるのかもしれないな…」
『素敵すぎるし、それ。』
「視覚的にクれば、性別問わなくなる節あるからね。」
『姿、形に囚われるのは生きてると、仕方ない。俺なんかのレベルに来ると、央未の存在自体がもう…』
朔に、倫理観を云々言うこと自体無駄な気もするけど、
朔なりの独特な世界観を耳にすると、言う程悪くない気もした。
「朔の前向きなトコ、見習わなきゃな。俺はまだまだ気にする事あるし…彼女いないの?って、職場の人に聞かれたら
返答に困るモン。」
『彼氏いるって、言えば?こんなエクセレントな彼氏も、そうそう居ないだろうから、自慢して良いよ。』
「時代遅れだよな…。そもそも、彼氏と彼女の二択が最初から用意されてる前提も何なんだろ。正直に、選んでも…
居ないって言っても、所詮は人ごとなのに。」
『央未は、俺の彼女…ではないけどさ。まぁ、嫁だよ。もう…』
セカイが、もっと単純なら。どれだけ生きやすかったのか。
「好きな人と一緒に居られれば、それだけでいいと思ってた。」
『絡むから、駄目なんだよ。お金とか、損得勘定とか、さ。』
砂を掘るのに飽きた朔が、砂浜に座る。
「清い心のままで、…海の彼方に行く事を選ぶ人も居たくらい。人の心は、難しくて頭じゃ考えれないし」
『心でも、抱えきれない。』
「だから、こうして手を繋いで…」
『無力感に打ちひしがれながら、夜の海にのまれたくなる。』
暗い海の底から、無数のいざないが
手を脚を、そして心を捕らえて離さない。
足許をのぞき込めば、背中が粟立つのはきっと
見えない恐ろしさを本能で感じているから。
「いきたくないね。」
『でも、いつかは…いくよ。』
「うん。離れたくないなぁ。」
『俺が、どれだけ央未を抱き締めても…別たれてしまうなんて。泣きそう』
「きっと、また俺の考えによく似たのが、いつかまたどこかで産まれてくるんだ。」
『俺は、どうかな?何か次はヒトになれないかも。』
くすくす笑って、さらっと哀しい事を言う朔は
急に幼く思えた。
「大丈夫だよ、例えば動物でも、植物でも…朔が存在できてるだけで俺は嬉しい。」
『植物でも、意志はあるらしいからな。』
「なかなかさ、こういう話って日頃しないだろ?」
『あんまりしない。でも、俺は結構好きな話だよ。』
「俺は、朔の精神面もわりと好きだけどね。」
『俺の頭の中は、おっぱいと央未の事で、もうあんまりスペース無いんだけどさ。』
湿った砂が冷たくて。俺は座らずに膝を抱きながら
しゃがんでいる。
波は砂を洗い、遠くに見える小島の松を見ていた。
「好きだねぇ…胸の話。朔は、きっと抱かれたかったんだよ。甘える事をちゃんとできなくて、
思ったより早くに心が出来てしまったから。」
『甘えるなんて、昔は出来なかった。だからかな?今はアホみたいにお前に甘えたくなる。』
「知ってる。野郎に膝枕して暮らすとは思わなかったし。」
『多分さ、俺がきっと央未の…内なる母性を目覚めさせてるんだよな。』
「可能性は、あるね。」
会話も。尽きかけた頃、朔がくしゃみをした。
無言で、俺が立ち上がると。下からの朔の視線。
ぶらん、とした腕を振って
朔に振動を伝える。
朔は、しぶしぶ立ち上がって
俺の首に腕を絡めて目を開けたまま
キスをした。
朔の冷たい舌が、俺の口内の粘膜を撫でて
くすぐったい。
何にも考えずに居られたら、きっとこのまま
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