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想いの深度を示せ。
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お前には、分からんよ。
『あんな餓鬼の、一体どこが良いってんだ?』
まだ、確かに年端もいかない奴を。
『とうとう焼きが回ったか。』
上等だ、好きに言ってくれ。
俺は、俺の気になる奴だからこそ意味がある。
偉そうな顔して、表じゃ自分がいかにも正しいなんて
振る舞いしながら、
裏じゃ、何人の女と
ねんごろにしてたかと問うてみたい。
美祢、お前だから
意味がある。
「あいつの眼を見たら、いかに自分が汚いか分かった。だから、俺は、俺を迷わせない為にも美祢に見ていて貰いたい。」
あんな、か細い体。
それなのに、背中は
大きく見える。
それが、言い様無く
好きだった。
若さ、ばかりじゃない。
力を感じる。
失われなくて良かった。
お前は、生きた志。
だから
絶対に潰えてはいけない。
ぶっきらぼうな性格だった
美祢が、少しずつ
打ち解けていく姿は
まるで、ゆっくりと開花していく花のようで
待ち遠しく、喜ばしい気持ちにさせた。
お前が、笑えば
いつもの近寄り難い空気が
実に明確に変化する。
「やっと、見つけた。」
思わず、そんな言葉が口から紡がれた。
それを聞いた美祢は
不思議な表情で俺を見ていた。
『働きぶりを査定に来た…?』
きょと、と
年相応の反応で、下宿に訪れた俺を
美祢は裏口で迎えた。
『もぉ、何で裏口からいつも来るんですか?』
「いや当たり前だろうが。俺が出入りしている姿は、堂々としていちゃいけない。いつになったら分かるんだか。」
寒い、早く中に入れてくれ。と、美祢を避けて
廊下に上がる。
草履を残して、二階へと階段を踏み締める。
『まぁ、そうだけど。』
「いい匂いがするな、何か部屋で焼いてたのか?」
『あっ、はい。胡桃貰ったのを焼いてました。』
「胡桃、また懐かしいな。しばらく食べてなかった。」
まるで、栗鼠だ。
『あ、ごめんなさい。胡桃はもう品切れです。銀杏だったら。』
「いや、結構。」
『…査定って、初めてなんで怖いんですが。俺は、何したらいいんですか?』
美祢と、柳部の部屋は相変わらずいつ来ても
暖められていて、落ち着ける。
「柳部は、いないか。」
『はい。』
「任務か?」
『うーん…、調べ物があるみたいで。出かけてます。』
「分かった。」
まぁ、居ても居なくても
差し支えない。
『じゃあ、座布団。』
ぺしゃんこな座布団を部屋の隅から持って来て
美祢は、その上に座る。
「お前は、案外落ち着き払ってるな。」
『だって、白島さんは上司なんでしょう?査定されるのは、仕方ありません。』
う、
こいつは。
何でこういう間で、そんな事を言うのか。
「そうだ。…さて、」
『あの、お茶淹れます。』
「往生際悪いぞ、美祢。大丈夫だから…話をさせてくれ。」
どうにも、結局は落ち着かないらしく
美祢の視線が泳いでいた。
『大人が言う大丈夫って、だいたい大丈夫じゃない。』
一理ある。
「そうか?しかし、こんなに自信を持っていないとは思ってなかったぞ。」
『根拠の無い自信は、駄目でしょう。』
「馬鹿言え。お前の剣腕での評価は…かなり良いぞ。後は、まぁ、協調性だな。大人を信じてくれ。」
どこか、細い糸を張ったような緊張感が伝わる。
『大事な物を守りたい。だから、白島さんと柳部さん。葵様は…信じてるよ?』
言おうか、どうか
迷っていた言葉だったのかもしれない。
が、酷く正直で
いかにも美祢らしい考えだ。
「そうか。ありがとう…。ん、話もな、これと言って無いんだが。何か不満や不安は無いか?」
美祢がよく、頑張っているのは
恐らく俺が誰より知っている。
『不安なのは、いつまで続くか分からない事とか。不満なのは、白島さんがいきなりやって来る事。』
「はっきり言いやがって…。じゃあ次からは文で知らせたらいいか?」
ちらっ、と美祢を見て冗談ぽく笑う。
『出来ないでしょ?そんなマメなの。』
「当たり前だ。突然会いにくるから楽しみなんだ。」
『まだ、昼前ですね。良かったら外に何か食べに行きません?』
「…どうした、珍しい。」
『逢い引きみたいで、楽しそうでしょ?』
美祢も、気晴らしがしたかったのだろうか。
身支度を済ませた美祢は
やっぱり、目を奪われるくらいに魅力に溢れていた。
着物の上に、羽織。
まだまだ寒い今の時期、
襟巻きも出歩くには
欠かせない。
「お前と俺が逢い引きか。笑えるな。」
『おかしくなんかないよ。きっと、楽しいよ。』
美祢の、急にただの子供に戻る瞬間には毎回
心が乱される。
まっすぐにしか、見ていないその瞳に俺を映されてしまうと。
なんだか、罪悪感にさいなまれる。
いざ、二人で外に出ると
やっぱりまだまだ寒い。
当たり前のように、手を繋ぐ。
美祢の手は、冷えきっている。
「手が、氷みたいに冷たいな。あんな暖かい部屋に居たのにな。」
『白島さんの手、どうしてこんなに温かいの?』
少し、手を引かれながら歩く往来。
「さぁな。美祢の手を温めるために、とでも言っておこうか。」
『ね、白島さん。』
「ん?」
『…こんな風に出かけたりするの俺、初めてなんですよ。』
「柳部とは、あるだろ?」
何を言うのかと思えば。
茶屋に入り、席に座る。
隣同士になるように。
『下宿に来て、すぐの頃だけね。今は、だいたい一人だから。』
「寂しい、か?」
『前は、寂しかった。今は、寂しい気持ちにも慣れて来ちゃってる。』
「慣れるな。周りに大人が要るんだから甘えたらいい。」
『甘えていいのかさえ、分からないよ。甘えたら…きっと、その心地よさにさえ、
溺れそうな位今の俺は、気持ちがね…不安定。』
みたらし団子と、お汁粉を頼んだ。
横目に、美祢の美しい髪を見て
思わず手が伸びそうになった。
この髪を撫でる日が、
いつか来るのだろうか?
本当に、よく似ている。
朔夜…。
許されそうにないが、
どうしても重なる。
俺には、分かる。
この人は、間違いなく…
俺が仕えていた朔夜姫なんだ。
今は、美祢として生きているが
魂が同じなのくらいは
俺も、守護職の端くれといえども
見抜ける。
『…どうかしました?白島さんのも来ましたよ。』
お先に上がってます、と
団子を頬張る美祢の声に
我に帰る。
だめだ、直ぐに過去と今とを
照らし合わせるのは
止めよう。
悪い癖だ。
今は、共にある。
それでいいじゃないか。
「あ、すまん…。考え事だ。」
後頭部を掻きながら、椅子に
座り直して
湯呑みのお茶を飲む。
『白島さんって、本当掴めませんよね?毎日何、考え事がありますか。』
子供らしい表情を見せて
美味しそうにする姿も
やっぱり俺の見てきた姿に重なる。
「なぁ、美祢。お前…本当にな、俺が愛していた人に似てるよ。」
溜め息さえ出ない。
これ以上は、無理だった。
やはり、本人に一度言ってから
どんな風に思われるか知りたい。
『…また、そんな話?例えそうなんだとしても俺は、どうしたらいいですか。』
まっとうな返答だった。
美祢は、確かに困っている。
「あぁ、俺も参ってるよ。何で同じ顔してるのに…お前みたいな修羅と同じなんだって思うと、朔夜が浮かばれない。」
なんて、馬鹿な八つ当たりだろう。
美祢の顔が、悲哀に沈むように
見えた。
『白島さんの愛した人の魂が俺に今あるんだったら…持ってってくれて構わない。俺も、そしたら少しはくだらない想いに振り回されずに済むし。せいせいする筈だよ。』
精いっぱいの強がり。
「美祢、悪い…。今のは俺が悪かった。」
『俺は、産まれて来て良かったのかな?俺は、人を傷付ける。こんな俺じゃあさ…國のために働けやしない。』
ぐっ、と何かに耐えるように
美祢は手を震わせていた。
「馬鹿言え…。俺は、お前がいないと生きてても意味が無いんだ。ずっと探してたんだからな。」
『探して、た?』
もう、全てを打ち明けてしまえたらどんなに楽なのか。
「詳しく言えない。が、俺は今のお前の姿をずっと見ていたい。」
『訳が分からないよ。俺が、邪魔なんじゃないの?』
恨めしそうに、ジッと美祢がこちらを軽くねめ付けてきた。
「まさか…。そうじゃないから悩むんだ。邪魔だったらな、こんな一緒に出掛けたりなんかしないさ。」
『白島さんの…邪魔には、なりたくないよ。だってさ、アンタは信じたいって思わせる何かを感じるから。』
照れたように
はにかむ柔らかな表情で
美祢は頷いた。
「顔は、好きだぞ。」
『…ん?かお、だけ?』
「中身は、まだまだ分からないしな。」
そっか、と
満更でもなさそうに
美祢は目元を綻ばせていた。
『白島さんに認めて貰えたら…嬉しいかも。』
今はまだ、髪にも触れられない
美祢だが…
少しずつ、分かり合えていけたらいい。
まだまだ、葵からの命令は
下される事だろうから。
まだ、籠の中に閉まっておきたい。
狂気がお前を手に掛ける前に
必ず救うと
誓ったはずなのに。
『要らぬ芽は、摘まねばなるまい。ましてや、この者は…安芸と通じて居る。使い道はまだある。』
「美祢…」
『可哀想に、愛した人にさえ気付かれずにお前は、ここで人としては最後の時を迎えた。安芸も、罪な事をした。…そうだな、一つだけ良い事を教えてやろう。美祢、お前は安芸の愛した女の魂を有して居る。また、このまま転生するのだよ。次は、少しだけ悩まずとも安芸を愛せよう。だが、その肉体は不死になる。意味は、分かるか?永遠に私の下で安芸と共に仕えて貰う。…そういう事だ。』
あの日、
あの時…
美祢は
葵によって
人としての生涯が終った。
『あんな餓鬼の、一体どこが良いってんだ?』
まだ、確かに年端もいかない奴を。
『とうとう焼きが回ったか。』
上等だ、好きに言ってくれ。
俺は、俺の気になる奴だからこそ意味がある。
偉そうな顔して、表じゃ自分がいかにも正しいなんて
振る舞いしながら、
裏じゃ、何人の女と
ねんごろにしてたかと問うてみたい。
美祢、お前だから
意味がある。
「あいつの眼を見たら、いかに自分が汚いか分かった。だから、俺は、俺を迷わせない為にも美祢に見ていて貰いたい。」
あんな、か細い体。
それなのに、背中は
大きく見える。
それが、言い様無く
好きだった。
若さ、ばかりじゃない。
力を感じる。
失われなくて良かった。
お前は、生きた志。
だから
絶対に潰えてはいけない。
ぶっきらぼうな性格だった
美祢が、少しずつ
打ち解けていく姿は
まるで、ゆっくりと開花していく花のようで
待ち遠しく、喜ばしい気持ちにさせた。
お前が、笑えば
いつもの近寄り難い空気が
実に明確に変化する。
「やっと、見つけた。」
思わず、そんな言葉が口から紡がれた。
それを聞いた美祢は
不思議な表情で俺を見ていた。
『働きぶりを査定に来た…?』
きょと、と
年相応の反応で、下宿に訪れた俺を
美祢は裏口で迎えた。
『もぉ、何で裏口からいつも来るんですか?』
「いや当たり前だろうが。俺が出入りしている姿は、堂々としていちゃいけない。いつになったら分かるんだか。」
寒い、早く中に入れてくれ。と、美祢を避けて
廊下に上がる。
草履を残して、二階へと階段を踏み締める。
『まぁ、そうだけど。』
「いい匂いがするな、何か部屋で焼いてたのか?」
『あっ、はい。胡桃貰ったのを焼いてました。』
「胡桃、また懐かしいな。しばらく食べてなかった。」
まるで、栗鼠だ。
『あ、ごめんなさい。胡桃はもう品切れです。銀杏だったら。』
「いや、結構。」
『…査定って、初めてなんで怖いんですが。俺は、何したらいいんですか?』
美祢と、柳部の部屋は相変わらずいつ来ても
暖められていて、落ち着ける。
「柳部は、いないか。」
『はい。』
「任務か?」
『うーん…、調べ物があるみたいで。出かけてます。』
「分かった。」
まぁ、居ても居なくても
差し支えない。
『じゃあ、座布団。』
ぺしゃんこな座布団を部屋の隅から持って来て
美祢は、その上に座る。
「お前は、案外落ち着き払ってるな。」
『だって、白島さんは上司なんでしょう?査定されるのは、仕方ありません。』
う、
こいつは。
何でこういう間で、そんな事を言うのか。
「そうだ。…さて、」
『あの、お茶淹れます。』
「往生際悪いぞ、美祢。大丈夫だから…話をさせてくれ。」
どうにも、結局は落ち着かないらしく
美祢の視線が泳いでいた。
『大人が言う大丈夫って、だいたい大丈夫じゃない。』
一理ある。
「そうか?しかし、こんなに自信を持っていないとは思ってなかったぞ。」
『根拠の無い自信は、駄目でしょう。』
「馬鹿言え。お前の剣腕での評価は…かなり良いぞ。後は、まぁ、協調性だな。大人を信じてくれ。」
どこか、細い糸を張ったような緊張感が伝わる。
『大事な物を守りたい。だから、白島さんと柳部さん。葵様は…信じてるよ?』
言おうか、どうか
迷っていた言葉だったのかもしれない。
が、酷く正直で
いかにも美祢らしい考えだ。
「そうか。ありがとう…。ん、話もな、これと言って無いんだが。何か不満や不安は無いか?」
美祢がよく、頑張っているのは
恐らく俺が誰より知っている。
『不安なのは、いつまで続くか分からない事とか。不満なのは、白島さんがいきなりやって来る事。』
「はっきり言いやがって…。じゃあ次からは文で知らせたらいいか?」
ちらっ、と美祢を見て冗談ぽく笑う。
『出来ないでしょ?そんなマメなの。』
「当たり前だ。突然会いにくるから楽しみなんだ。」
『まだ、昼前ですね。良かったら外に何か食べに行きません?』
「…どうした、珍しい。」
『逢い引きみたいで、楽しそうでしょ?』
美祢も、気晴らしがしたかったのだろうか。
身支度を済ませた美祢は
やっぱり、目を奪われるくらいに魅力に溢れていた。
着物の上に、羽織。
まだまだ寒い今の時期、
襟巻きも出歩くには
欠かせない。
「お前と俺が逢い引きか。笑えるな。」
『おかしくなんかないよ。きっと、楽しいよ。』
美祢の、急にただの子供に戻る瞬間には毎回
心が乱される。
まっすぐにしか、見ていないその瞳に俺を映されてしまうと。
なんだか、罪悪感にさいなまれる。
いざ、二人で外に出ると
やっぱりまだまだ寒い。
当たり前のように、手を繋ぐ。
美祢の手は、冷えきっている。
「手が、氷みたいに冷たいな。あんな暖かい部屋に居たのにな。」
『白島さんの手、どうしてこんなに温かいの?』
少し、手を引かれながら歩く往来。
「さぁな。美祢の手を温めるために、とでも言っておこうか。」
『ね、白島さん。』
「ん?」
『…こんな風に出かけたりするの俺、初めてなんですよ。』
「柳部とは、あるだろ?」
何を言うのかと思えば。
茶屋に入り、席に座る。
隣同士になるように。
『下宿に来て、すぐの頃だけね。今は、だいたい一人だから。』
「寂しい、か?」
『前は、寂しかった。今は、寂しい気持ちにも慣れて来ちゃってる。』
「慣れるな。周りに大人が要るんだから甘えたらいい。」
『甘えていいのかさえ、分からないよ。甘えたら…きっと、その心地よさにさえ、
溺れそうな位今の俺は、気持ちがね…不安定。』
みたらし団子と、お汁粉を頼んだ。
横目に、美祢の美しい髪を見て
思わず手が伸びそうになった。
この髪を撫でる日が、
いつか来るのだろうか?
本当に、よく似ている。
朔夜…。
許されそうにないが、
どうしても重なる。
俺には、分かる。
この人は、間違いなく…
俺が仕えていた朔夜姫なんだ。
今は、美祢として生きているが
魂が同じなのくらいは
俺も、守護職の端くれといえども
見抜ける。
『…どうかしました?白島さんのも来ましたよ。』
お先に上がってます、と
団子を頬張る美祢の声に
我に帰る。
だめだ、直ぐに過去と今とを
照らし合わせるのは
止めよう。
悪い癖だ。
今は、共にある。
それでいいじゃないか。
「あ、すまん…。考え事だ。」
後頭部を掻きながら、椅子に
座り直して
湯呑みのお茶を飲む。
『白島さんって、本当掴めませんよね?毎日何、考え事がありますか。』
子供らしい表情を見せて
美味しそうにする姿も
やっぱり俺の見てきた姿に重なる。
「なぁ、美祢。お前…本当にな、俺が愛していた人に似てるよ。」
溜め息さえ出ない。
これ以上は、無理だった。
やはり、本人に一度言ってから
どんな風に思われるか知りたい。
『…また、そんな話?例えそうなんだとしても俺は、どうしたらいいですか。』
まっとうな返答だった。
美祢は、確かに困っている。
「あぁ、俺も参ってるよ。何で同じ顔してるのに…お前みたいな修羅と同じなんだって思うと、朔夜が浮かばれない。」
なんて、馬鹿な八つ当たりだろう。
美祢の顔が、悲哀に沈むように
見えた。
『白島さんの愛した人の魂が俺に今あるんだったら…持ってってくれて構わない。俺も、そしたら少しはくだらない想いに振り回されずに済むし。せいせいする筈だよ。』
精いっぱいの強がり。
「美祢、悪い…。今のは俺が悪かった。」
『俺は、産まれて来て良かったのかな?俺は、人を傷付ける。こんな俺じゃあさ…國のために働けやしない。』
ぐっ、と何かに耐えるように
美祢は手を震わせていた。
「馬鹿言え…。俺は、お前がいないと生きてても意味が無いんだ。ずっと探してたんだからな。」
『探して、た?』
もう、全てを打ち明けてしまえたらどんなに楽なのか。
「詳しく言えない。が、俺は今のお前の姿をずっと見ていたい。」
『訳が分からないよ。俺が、邪魔なんじゃないの?』
恨めしそうに、ジッと美祢がこちらを軽くねめ付けてきた。
「まさか…。そうじゃないから悩むんだ。邪魔だったらな、こんな一緒に出掛けたりなんかしないさ。」
『白島さんの…邪魔には、なりたくないよ。だってさ、アンタは信じたいって思わせる何かを感じるから。』
照れたように
はにかむ柔らかな表情で
美祢は頷いた。
「顔は、好きだぞ。」
『…ん?かお、だけ?』
「中身は、まだまだ分からないしな。」
そっか、と
満更でもなさそうに
美祢は目元を綻ばせていた。
『白島さんに認めて貰えたら…嬉しいかも。』
今はまだ、髪にも触れられない
美祢だが…
少しずつ、分かり合えていけたらいい。
まだまだ、葵からの命令は
下される事だろうから。
まだ、籠の中に閉まっておきたい。
狂気がお前を手に掛ける前に
必ず救うと
誓ったはずなのに。
『要らぬ芽は、摘まねばなるまい。ましてや、この者は…安芸と通じて居る。使い道はまだある。』
「美祢…」
『可哀想に、愛した人にさえ気付かれずにお前は、ここで人としては最後の時を迎えた。安芸も、罪な事をした。…そうだな、一つだけ良い事を教えてやろう。美祢、お前は安芸の愛した女の魂を有して居る。また、このまま転生するのだよ。次は、少しだけ悩まずとも安芸を愛せよう。だが、その肉体は不死になる。意味は、分かるか?永遠に私の下で安芸と共に仕えて貰う。…そういう事だ。』
あの日、
あの時…
美祢は
葵によって
人としての生涯が終った。
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