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番外編①天乃屋兄弟の家に行く
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この宿命を、まさか誰かに話す日が来るとは思わなかった。
きっと理解できないであろうし、複雑怪奇に歪んだ自分の
思慕を悟られる事は、耐えがたいと思っていた。
男性の占い師が居る。そして、占いは当たる事を聞いて
興味を持った。
異性に話すよりも、もしかしたら同性の方が話しやすいのかもしれない。
頭の片隅に、占い師の事はあったけれど。
まさか、奇縁がもたらされるとは思いもせずに俺は
留学先で不思議なご夫婦を紹介された。
大学の教授何人かと面識があるらしく、夫婦で学者をしている事を
聞かされた。
自己紹介の際に、『天乃屋』と言う名字を聞いて驚いた。
俺が、気になっている占い師の名前と同じ苗字だったからだ。
かなり変わった名字なのは分る。
俺がお世話になっている教授の研究室で引き合わされたのは
本当に運の良い偶然なのかもしれない。
「天乃屋さん、この…占い師さんと同じ名前ですよね。」
テーブル越しにスマホの画面をご夫妻に見せてみると
2人は何故か笑った。
『この子、私の…息子です。』
ご婦人は笑いながら、きっとこの偶然を面白く思っていたのかもしれない。
「最近、動画や雑誌でもよく取り上げられてる有名な占い師さんみたいで。まさか、親子だったとは…。」
『私等、夫婦で家に子供2人を置いたまま、こうやって海外の学者と一緒に
研究やフィールドワークに明け暮れている内に…いつのまにか占い師になってたんです。』
あっけらかんとした受け答えだけれど、おそらくはもう自立しているのであれば
問題はない気がした。
「占い…を、観てもらいたいと思っていたので驚きました。」
『……へぇ~恋の悩みですか?』
ニコリ。とご婦人の笑みが少しあどけなく見える。
「そうですね、または…因縁なのか。」
『ぇ~…どっちにしても気になる。なんなら私が観ましょうか?』
「ご婦人も、占い師さんなのですか?」
『生業ではないけれど、師匠にしっかり習っていたわ。今は本当に気になる人と。タイミングが合えば観てるの。』
ご婦人を隣でたしなめている夫人を見て、俺は静かに笑った。
「では帰国したら、月夜さんに鑑定をお願いしてみようかと思います。」
『家の隣が事務所でね、そこで鑑定もしてるみたいだから。いつでもどうぞ。』
「有難うございます。」
『…私が言うのも、何だけど。なんだか、大変そうね。ずーーーーーっと気にして生きるなんて。』
「分かりますか、何か。」
『教授も言っていたけれど、講義中も時々物憂げにしているって。心配していたから。』
教授は、留学生である俺をいたく心配してくれる。
よく、声を掛けてもくれる。
学内の行事にも誘ってくれるし、とても面倒見が良い事は伝わってくる。
今世に於いてやるべき事は理解している。
一刻も早く本人に会って、それから…。
前世での遺恨を出来る限り無くさなければいけない。
人としての姿を得て、この先どうやってアレと関わって生きて行くのか。
あれから月日は流れ、俺の隣には辰海がいる。
「今日は、俺のワガママに付き合ってもらう事になるが…よろしくな。」
『知らなかった~、まさかあの動画で占いやってるお兄さんの?まさか家にまで行くなんて。』
「あぁ、約束をしたからな。次回は本人…辰海を連れて来るって言う。」
夏の異様な暑さもそろそろ落ち着きを見せた頃。
俺は、また天乃屋兄弟の家を訪ねた。
さすがに今回は、事前にきちんとアポイントメントを取って
手土産を辰海に持たせての訪問にした。
玄関先でチャイムを鳴らして、少し待って居ると走って来る音が聞こえた。
多分、月夜さんの弟だろう。
『ハーイ、今、鍵開けますね…。』
勢いよくドアが開き、綺麗な銀髪が風圧でフワリと舞う。
赤い瞳は、俺と辰海をしっかりと捉えている。
「お久しぶりです、この前はお世話になりました。」
『こんにちは、あの…今日は西原の付き添いで…』
「…この子が…?あ、どうぞどうぞ。兄貴は事務所の方にもう準備してるので。今、ご案内しますね。」
星明さんは、靴を履いてすぐ隣の事務所に案内してくれた。
清潔感のある光源多めの部屋に案内されて、辰海は少し安心した様子だ。
俺は、星明さんに手土産を渡してから月夜さんに促されて席に着いた。
すぐに、お茶とお菓子が運ばれてきて。
まるで喫茶店みたいだと少し驚いた。
鑑定をする隣の部屋は、控室か。または給湯室になっているのだろう。
きっと理解できないであろうし、複雑怪奇に歪んだ自分の
思慕を悟られる事は、耐えがたいと思っていた。
男性の占い師が居る。そして、占いは当たる事を聞いて
興味を持った。
異性に話すよりも、もしかしたら同性の方が話しやすいのかもしれない。
頭の片隅に、占い師の事はあったけれど。
まさか、奇縁がもたらされるとは思いもせずに俺は
留学先で不思議なご夫婦を紹介された。
大学の教授何人かと面識があるらしく、夫婦で学者をしている事を
聞かされた。
自己紹介の際に、『天乃屋』と言う名字を聞いて驚いた。
俺が、気になっている占い師の名前と同じ苗字だったからだ。
かなり変わった名字なのは分る。
俺がお世話になっている教授の研究室で引き合わされたのは
本当に運の良い偶然なのかもしれない。
「天乃屋さん、この…占い師さんと同じ名前ですよね。」
テーブル越しにスマホの画面をご夫妻に見せてみると
2人は何故か笑った。
『この子、私の…息子です。』
ご婦人は笑いながら、きっとこの偶然を面白く思っていたのかもしれない。
「最近、動画や雑誌でもよく取り上げられてる有名な占い師さんみたいで。まさか、親子だったとは…。」
『私等、夫婦で家に子供2人を置いたまま、こうやって海外の学者と一緒に
研究やフィールドワークに明け暮れている内に…いつのまにか占い師になってたんです。』
あっけらかんとした受け答えだけれど、おそらくはもう自立しているのであれば
問題はない気がした。
「占い…を、観てもらいたいと思っていたので驚きました。」
『……へぇ~恋の悩みですか?』
ニコリ。とご婦人の笑みが少しあどけなく見える。
「そうですね、または…因縁なのか。」
『ぇ~…どっちにしても気になる。なんなら私が観ましょうか?』
「ご婦人も、占い師さんなのですか?」
『生業ではないけれど、師匠にしっかり習っていたわ。今は本当に気になる人と。タイミングが合えば観てるの。』
ご婦人を隣でたしなめている夫人を見て、俺は静かに笑った。
「では帰国したら、月夜さんに鑑定をお願いしてみようかと思います。」
『家の隣が事務所でね、そこで鑑定もしてるみたいだから。いつでもどうぞ。』
「有難うございます。」
『…私が言うのも、何だけど。なんだか、大変そうね。ずーーーーーっと気にして生きるなんて。』
「分かりますか、何か。」
『教授も言っていたけれど、講義中も時々物憂げにしているって。心配していたから。』
教授は、留学生である俺をいたく心配してくれる。
よく、声を掛けてもくれる。
学内の行事にも誘ってくれるし、とても面倒見が良い事は伝わってくる。
今世に於いてやるべき事は理解している。
一刻も早く本人に会って、それから…。
前世での遺恨を出来る限り無くさなければいけない。
人としての姿を得て、この先どうやってアレと関わって生きて行くのか。
あれから月日は流れ、俺の隣には辰海がいる。
「今日は、俺のワガママに付き合ってもらう事になるが…よろしくな。」
『知らなかった~、まさかあの動画で占いやってるお兄さんの?まさか家にまで行くなんて。』
「あぁ、約束をしたからな。次回は本人…辰海を連れて来るって言う。」
夏の異様な暑さもそろそろ落ち着きを見せた頃。
俺は、また天乃屋兄弟の家を訪ねた。
さすがに今回は、事前にきちんとアポイントメントを取って
手土産を辰海に持たせての訪問にした。
玄関先でチャイムを鳴らして、少し待って居ると走って来る音が聞こえた。
多分、月夜さんの弟だろう。
『ハーイ、今、鍵開けますね…。』
勢いよくドアが開き、綺麗な銀髪が風圧でフワリと舞う。
赤い瞳は、俺と辰海をしっかりと捉えている。
「お久しぶりです、この前はお世話になりました。」
『こんにちは、あの…今日は西原の付き添いで…』
「…この子が…?あ、どうぞどうぞ。兄貴は事務所の方にもう準備してるので。今、ご案内しますね。」
星明さんは、靴を履いてすぐ隣の事務所に案内してくれた。
清潔感のある光源多めの部屋に案内されて、辰海は少し安心した様子だ。
俺は、星明さんに手土産を渡してから月夜さんに促されて席に着いた。
すぐに、お茶とお菓子が運ばれてきて。
まるで喫茶店みたいだと少し驚いた。
鑑定をする隣の部屋は、控室か。または給湯室になっているのだろう。
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