命を追う白虎

あきすと

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④(辰海視点)

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少しは仲良くなったつもりでいた。

夏休みもそろそろ迎える梅雨明けの時期。
何だか最近、よく見かける女のコがいる。
どうやら、悠寅と同じ選択授業で親しく
なったらしい。

今までにも学食で何度か3人で
ランチをした事もある。

どう接したものかと悩むところでもあるし、
多分?悠寅の事が好きなんじゃないかと
予想してる。
毎回、悠寅とばかりお昼時間を一緒に
過ごす訳では無いけど。
気をつかう。
だって、どう考えても俺は邪魔っぽい。

回数を重ねる度に、気まずくて
今日はとうとう外に出て1人で
お昼を済ませて来た。
多分、何にも無いだろうとは思う。
でも、心のどこかで期待してる。

スマホに手を伸ばす。

連絡先は早い段階で交換していたから
大学以外でも時々遊びに行く事がある。
悠寅は、どうして?と聞きたくなる程
いつも俺に優しくて。
いつか、なにかしらのカタチで
お返しをしたいと思っている。

待ち受け画面には、悠寅からのメッセージが
いくつか表示されていた。

「人の恋路は邪魔しちゃ、いけないよ。」
午後からの講義で悠寅とバッチリ目が合った。
慌てて視線を教授の方へと戻した。
いつもなら、隣に座って講義を受けるけど
今日は悠寅より後ろの席に着いていた。
けど、早速バレてしまって苦笑いした。

俺は、悠寅を避けたいのかな?
違うはずなのに、これじゃあ勘違い
されそうで辛い。

燃える様に紅い髪の色をした女のコ。
身長もスラリと高くてモデルさんみたいに
カッコよくて綺麗なんだ。
もしかしたら、もう2人はお付き合いを
してるかもしれない。

憂鬱だった。
ジメジメした季節を越えて、やっと
自由な夏休みが目前だというのに。
俺はしばらく試験に備える事を口実に
悠寅との交流を控える事にした。

その間も相変わらず、悠寅からの連絡は
ほぼ毎日来ていた。
大学の夏休みは長い。
短期のバイトを探して、自分の小遣い稼ぎ方
ぐらいはできそうだ。

試験期間最終日。
ひと雨来そうな空模様の中、大学構内の
図書館に足を向けた。
ひとコマ開いてしまったせいで、
時間を潰したい。

何となく気になり、手に取った本。
パラパラと目次をめくっていると、
背中に温かい感触が伝わった。
「…?!」
あ、と思う暇も無く抱き締められた。
『辰…、やっと見つけた。』

すぐに悠寅だと分かった。
俺は体が動かなくて、どうしたら良いのかも
分からずにただジッとしていた。

見つけて欲しかったんだ、
悠寅から逃げたり隠れたりするのは
前世からの俺の癖だから。

分かっててやってる。
気を引きたくて、ずるい事だと思う。

首筋にかかる悠寅の吐息が、くすぐったい。
心臓がドキドキうるさい。
ゆっくりと後ろを振り向くと、
琥珀色の悠寅の瞳が優しくてホッとする。

俺、やっと分かった気がする。
『辰…逃げないで』
「やだよ。だって、俺は邪魔者だから。」
悠寅の優しい声色が今は怖い。
『話したい事がある。家に、来てくれないか?』

突然何を言うのかとハラハラしながら
俺は、心のやり場に困ったまま
悠寅の言葉を承諾した。
「…お付き合い、してるんでしょ?」
『え?いや、まだだけど。』
「まだって…ほらぁやっぱり」
『やっぱり?』
「だから、あの女の子との話でしょ。付き合いの事なんて俺に報告なんかしなくていいのに。」
俺の言葉に悠寅は目をしばたき
『伽音の事か?…待て待て、アイツは俺のイトコにあたるんだけど。』

「イトコ…なの?え、そんなの聞いてなかったから知らないし。」
『もしかして、ここ最近俺に近寄らなかったのは?』
「イイ感じの2人の邪魔をしたくなくて…」

『勘違い、勘違い…!絶対に伽音なら誤解されないと逆に思ってたから。こまっしゃくれたイトコで手に負えないんだよ。』

不意に視線が絡んで、俺は気恥ずかしくて
消えたくなった。
だって確実に構ってちゃん全開だし。
ヤキモチ妬いてたのも、これでもかと
言う程に悠寅に伝わったに違いない。
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