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③(悠寅視点)
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人には言えない秘密がある。
前世での記憶が今でも、ハッキリとある事。
人間でこそなかったものの、とある命を受けて
1人の人間を監視下に置く事となった。
大いなる自然の中で、界隈の守護者は何体か存在している。
前世ではそこそこの立場にあったが、
禁忌を犯してしまい、その座を追われた。
『その元凶が、俺って事?』
大学生になってから、同じ学部の白井 辰海とは急速に
仲良くなった。
「今でも、あの頃と変わってない。が、時代が変わったから生きてはいけるだろう。」
学食で、ランチをしながら昔話を交えて話せる程までに
親しくなっていた。
辰は、物腰が柔らかでその割に芯がしっかりと通った性格をしている。
『いくら重ねようとしても、やっぱり・・・前世は前世だよ。俺、直感は鋭い方だとは思ってたけど
どうして、びゃ・・・悠寅に狙われていたのかは結局分からなかったし。』
ホットサンドを食み、辰が美味しいと目を細めている。
どこまで、話せばいいのか自分でも分からない。
命を護る為に行った事だとか、今更言われてもきっと
辰も困惑してしまうだろう。
喰らった、と思われている様だけれどまさか
そんな事が出来るはずも無く。
一瞬だけ、よこしまな想いを抱いて亡くなった辰を
『聞いてる?悠寅・・・』
とっさに考えを止めて、斜め向かいに座っている辰に視線を移した。
「ぁ、悪い。考え事してた。」
『大丈夫?あんまり考え過ぎは身に毒だよ。』
時々、前世のフラッシュバックが起きて全身で汗をかく。
白虎だった頃に見た、夢。
「なぁ、辰・・・ちょっと頭を触らせてくれないか?」
コーヒーを飲んでいた辰が目を丸くしている。
で、そのまま首を下げて来た。
いやいや、警戒心が無さ過ぎる。
人目も気にせずに、俺は両手で辰の頭を静かに触る。
指先から手のひらまで意識を集中させて、触れていく。
形のいい、頭蓋骨だな。とはさすがに言えない。
ひとしきり確認が終わると、辰は髪を手櫛で直して
頼りなく笑っている。
「何でもない。無かった。安心した。」
『焦った~。俺、頭とか首に触られるのドキドキするんだよね。悠寅、知っててやってるのかと思った。』
「へぇ・・・。」
油断しているのは、俺なのか辰なのか。
『ここの学食美味しいよね。俺、すっかりお弁当作らなくなっちゃった。』
「そうだな、試験の時は持参して来てたのに。」
『あれ?なんで、悠寅が知ってるの?確か、俺がお弁当食べてる頃には会場に居なかったよね。』
「・・・それは、確かに。」
『あはは、悠寅ってやっぱり不思議だね。いつも急に俺の前に現れて、びっくりするんだけどさ・・・嬉しくなる。』
俺は、前世での辰の願いを知っていた。
結婚して、子供を育てながら小さな寒村でごく平凡に静かに暮らしていきたい。
と、本人から聞いた事があった。
あまりにもありきたりな願いで、前世の俺は鼻で笑っていた。
何も辰の事を知らずにいた頃は、俺もまだ心は平らかだった。
「なぁ、辰海。今でも結婚して・・・子供が欲しいか?」
蒼海を思わせる艶を帯びた髪に、陽光が差して目が目映い。
屈託のの無い笑顔で、辰は頷く。
『うん。できれば好きな人と一緒に生きて行きたいな。』
辰の瞳の奥の光が煌いて見える。
俺は、少しだけとある感情を思い出しかける。
人を惑わす、恋という惑わせに一瞬心を奪われそうになった。
前世での記憶が今でも、ハッキリとある事。
人間でこそなかったものの、とある命を受けて
1人の人間を監視下に置く事となった。
大いなる自然の中で、界隈の守護者は何体か存在している。
前世ではそこそこの立場にあったが、
禁忌を犯してしまい、その座を追われた。
『その元凶が、俺って事?』
大学生になってから、同じ学部の白井 辰海とは急速に
仲良くなった。
「今でも、あの頃と変わってない。が、時代が変わったから生きてはいけるだろう。」
学食で、ランチをしながら昔話を交えて話せる程までに
親しくなっていた。
辰は、物腰が柔らかでその割に芯がしっかりと通った性格をしている。
『いくら重ねようとしても、やっぱり・・・前世は前世だよ。俺、直感は鋭い方だとは思ってたけど
どうして、びゃ・・・悠寅に狙われていたのかは結局分からなかったし。』
ホットサンドを食み、辰が美味しいと目を細めている。
どこまで、話せばいいのか自分でも分からない。
命を護る為に行った事だとか、今更言われてもきっと
辰も困惑してしまうだろう。
喰らった、と思われている様だけれどまさか
そんな事が出来るはずも無く。
一瞬だけ、よこしまな想いを抱いて亡くなった辰を
『聞いてる?悠寅・・・』
とっさに考えを止めて、斜め向かいに座っている辰に視線を移した。
「ぁ、悪い。考え事してた。」
『大丈夫?あんまり考え過ぎは身に毒だよ。』
時々、前世のフラッシュバックが起きて全身で汗をかく。
白虎だった頃に見た、夢。
「なぁ、辰・・・ちょっと頭を触らせてくれないか?」
コーヒーを飲んでいた辰が目を丸くしている。
で、そのまま首を下げて来た。
いやいや、警戒心が無さ過ぎる。
人目も気にせずに、俺は両手で辰の頭を静かに触る。
指先から手のひらまで意識を集中させて、触れていく。
形のいい、頭蓋骨だな。とはさすがに言えない。
ひとしきり確認が終わると、辰は髪を手櫛で直して
頼りなく笑っている。
「何でもない。無かった。安心した。」
『焦った~。俺、頭とか首に触られるのドキドキするんだよね。悠寅、知っててやってるのかと思った。』
「へぇ・・・。」
油断しているのは、俺なのか辰なのか。
『ここの学食美味しいよね。俺、すっかりお弁当作らなくなっちゃった。』
「そうだな、試験の時は持参して来てたのに。」
『あれ?なんで、悠寅が知ってるの?確か、俺がお弁当食べてる頃には会場に居なかったよね。』
「・・・それは、確かに。」
『あはは、悠寅ってやっぱり不思議だね。いつも急に俺の前に現れて、びっくりするんだけどさ・・・嬉しくなる。』
俺は、前世での辰の願いを知っていた。
結婚して、子供を育てながら小さな寒村でごく平凡に静かに暮らしていきたい。
と、本人から聞いた事があった。
あまりにもありきたりな願いで、前世の俺は鼻で笑っていた。
何も辰の事を知らずにいた頃は、俺もまだ心は平らかだった。
「なぁ、辰海。今でも結婚して・・・子供が欲しいか?」
蒼海を思わせる艶を帯びた髪に、陽光が差して目が目映い。
屈託のの無い笑顔で、辰は頷く。
『うん。できれば好きな人と一緒に生きて行きたいな。』
辰の瞳の奥の光が煌いて見える。
俺は、少しだけとある感情を思い出しかける。
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