狐と狸の昔語り。

あきすと

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コンプレックス(ゆるふわ)

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コンプレックスなんて、要らない。

俺の育ての親のような存在は拾ってくれた、楓だ。

いつだったか言われたのが
『タローは、コンプレックスが強いんだよな。』
と。
内心、ハァ⁉︎って感じで流したけど。
まぁ、思い当たる節が
あったり、無かったりだ。

敵わない。楓には。
てか、立ち向かう気もないし。
だって、最初から別々なんだ。
「そんな、風に見られてたなんて…。」
何だか、ショックだった。

自立して、俺は俺で
やっていけてると
自負していただけに。

その事を楓に話した。

ら、

『そりゃあ…その通りだろ。神力を俺から貰わないといけないあたりが、なぁ…。』
それは、もう
どうしようもない話で。
「俺にも、絶対…あると思うな。楓に勝る部分。」

その言葉を聞いた楓が
口角を片方つり上げた。

『なきゃ、俺が育てた意味が無い。』

「本気で、行くよ。楓、覚悟しろ。」

洗面台に行って、髪を何カ所がヘアピンで、留めて
パーカーに
短パン。
ソックスはニーハイ丈を履いて楓の部屋に戻る。

「…なんか、自分でしときながらかなり恥ずかしいのですが。」

モジモジと、襖の隙間から顔だけを出すと
ガラッと楓に開けられて
部屋へと躓きかける。

『………。』
「急に開けんなよ、アホ!… ビックリしたぁ。」

『これが、俺に勝る事?』

絶対零度の眼差しが
降り注ぐ。
視線が痛い。

でも、ガマン。
「そう、だけど…おかしい、かな?」

カァッ、と今さら後悔して頬が熱い。

『…ぐっ、確かに。可愛い…』

えぇ⁈
チョれえ‼︎
「そっ、そうかな?なんかヤダ…やっぱり脚とか気になるし。着替えてく…『タロー…』うわぁ⁈」

楓に、覆いかぶさられて
身動きが取りにくい。

「ヤダってば、どーけーよっ!」
ゲシゲシと脚で楓を蹴ってると足首を掴まれる。

『…』
「⁉︎うわっ…」
両手と片脚の自由が無い。

『さて、どうする?』
「なっ…んで、もぉ~」

ハッ、と顔を上げたら
やっぱり楓の眼は笑ってない。
このまま、いいように
されちゃうんだろうか?

『俺を弄ぶつもりなら、容赦はしない。だが…応えるつもりがあるなら、考えよう。』

掴まれた脚の裏を
楓の指先がなぞって
くすぐったい。

「この、変態…っ!」
『さぁ?どちらが変態だ。わざわざ俺を煽ってどうするつもりだった?…タロー。』

勝てない、
勝てないから勝ちたい。
困らせたいんだ。
たまには、上手に負けてくれたらいいのに。

案外、真面目に楓には
勝ちにくる。

『ちなみに、今ここで狸に戻ったら…今晩のおかずになってもらうからな。』

ひぃい…っ!

思考よまれてる。
敵わない。

ぐぬぬぬ…っ

…よし、

「楓、脚痛いよ。そろそろ放して?」
生来、少し鼻がかった声で良かった。
楓は、この声が好きらしく
お願いされるとかなり弱いんだ。

じっ、と意識的に
視線を合わせる。
『…』
ぱっ、と手が足首から放されて内心ホッとする。

「楓、ぎゅ~ってしてあげる。」

言葉と一緒に自然と笑みも零れる。

『タロー…。』
ギュッと抱きしめあって
お互いの熱を感じる。

あぁ、やっぱり好きなんだなって。
なんて、安らぐんだろう。
この人になら、負けてもいい。
俺は、この人が負けないように支えれるようになりたいって
そう思い始めてる。
「楓、やっぱり俺は楓には敵わないから。」

『…そうか。』
「うん。正直、悔しいけど大丈夫。だって、俺がいるのは楓のおかげなんだし。」

唇を何度となく
重ねて、楓に寄り添う。
『タローとは張り合いたくない。それは、お前が俺にとって重要で特別な存在だからだ。分かるだろう?』

「ん、嬉しい。」

太ももを楓の大きな掌で撫でられる。
「わぁっ…、くすぐったいよ、楓。」

『しかし、本気で、可愛いな。このまま流れで抱いてしまいそうだ。』

「えぇっ!?」


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