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①もたらされるもの
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僕には幼馴染がいる。
とても、頭が良くてカッコよくて優しい自慢の幼馴染。
姉でさえも、ベタ褒めにする様な幼馴染だ。
子供の頃から、同じ学年でクラスも何度か一緒になった事がある。
義務教育の期間は、本当によく遊んだ仲のいい幼馴染だ。
とにかく、クラスでも人気があって女の子には持てるし
同性からも好かれているのは、はたから見ても分かる程だった。
高校はお互いに違うから、たまに駅で見かける程になっていた。
僕は、幼馴染の事を好きになって行く自分が心の奥で
何となく怖い気がして会えなくなった事にも
ホッとしてしまっていた。
いつも、違う女の子と駅で見かける事にもショックだったけれど
これでいいのだと必死に思い込んでいた。
『玲くん、彼女と本屋さんで見かけたよ。』
姉からの報告を聞かされて。
複雑な思いで、居間で猫と遊んでいたら
『真裕は、いいの~?』
姉からのからかいの言葉がうっとおしい。
高校から帰って来て、大学生の姉はメイクをした顔に
お出かけの服を着ている。
「デート行くんでしょ?ほっといてよ。」
『玲くん、面食いだからねぇ…真裕あせってるんじゃない?』
何と、困った事に…僕の幼馴染への想いは姉には
見透かされているのだった。
「どうせ、いつも長続きしないもん。」
『…それも、どうかと思うけどね~。』
高校生の割に大人っぽい玲は、社会人とも交際しているとか
噂を母からも聞いていて。
本当に、いつもどういう経緯で知り合うのか不思議だ。
姉は、僕に言いたい放題言ってから彼氏が家の前まで迎えに来て
出掛けて行った。
「…僕はもう、恋したくないんだよ。ね、じゅげむ。」
猫のじゅげむの毛並みに顔を埋めて、モフモフする。
と、インターフォンが鳴った。
「!!??」
びっくりしたじゅげむが、僕の顔を蹴り上げて逃げていく。
「イタタ、はぁ~い……」
起き上がって、廊下に出て玄関のドアを開ける。
『真裕、久し振り。』
「…玲くん…ぇ、なに?珍しいね。ウチに来るなんて。」
僕と玲の家は、斜め向かいの近所に住んでいる。
『ウチの父親の実家から。おすそ分け。』
はい、と手渡された白い箱には
「ぶどう、前にも貰ったよね。ありがとう。」
『ここ何年か、生育が悪かったんだけど。今年はいい出来らしいからさ。おばさんにヨロシクって。』
「嬉しい…うん、伝えておくね。」
『真裕さ…』
玲が僕の顔をじっと覗き込んで、指を伸ばしてくる。
「ぇ、わ…っ」
『顔に、毛?沢山ついてるけど。そっか、お前の家ネコ飼ってたよな。』
「うん。そうそう。いっぱいついてるカモ…」
『白い毛、スゲー沢山…』
「……」
玲の指先が顔に触れて、余計にくすぐったい。
『取り切れんって。なー、たまにはさ…俺とも遊んでくれよな。』
「へ…?だって、彼女いるんじゃないの?」
『ぁ~居ない時もあるし。それに、幼馴染なんだから。さみしい事言うなよ。』
「ん、玲が迷惑じゃないなら良いよ?僕は、高校の友達遠い子ばっかだし。」
『そういう話も聞きたいからさ。んじゃな~』
相変わらず、颯爽としていて尾を引かない。
玲は、昔から距離感が絶妙なんだと思う。
自分が寂しくならない様に、生きているのかな?と感じる瞬間が多々あった。
それこそ、僕の都合はあんまり気にしちゃくれない。
なのに、一緒に居れるだけで嬉しかった。
会えばまた、心が動くだろうし。
フツウに触れて来る気安さが、なんだか憎くて愛おしい。
家のドアを開ければ、玲の家は簡単に視界に入る。
愛に行けない距離ではないから、かえって辛い。
僕の高校三年間は、ただただ玲への想いを燻ぶらせて終わった。
とても、頭が良くてカッコよくて優しい自慢の幼馴染。
姉でさえも、ベタ褒めにする様な幼馴染だ。
子供の頃から、同じ学年でクラスも何度か一緒になった事がある。
義務教育の期間は、本当によく遊んだ仲のいい幼馴染だ。
とにかく、クラスでも人気があって女の子には持てるし
同性からも好かれているのは、はたから見ても分かる程だった。
高校はお互いに違うから、たまに駅で見かける程になっていた。
僕は、幼馴染の事を好きになって行く自分が心の奥で
何となく怖い気がして会えなくなった事にも
ホッとしてしまっていた。
いつも、違う女の子と駅で見かける事にもショックだったけれど
これでいいのだと必死に思い込んでいた。
『玲くん、彼女と本屋さんで見かけたよ。』
姉からの報告を聞かされて。
複雑な思いで、居間で猫と遊んでいたら
『真裕は、いいの~?』
姉からのからかいの言葉がうっとおしい。
高校から帰って来て、大学生の姉はメイクをした顔に
お出かけの服を着ている。
「デート行くんでしょ?ほっといてよ。」
『玲くん、面食いだからねぇ…真裕あせってるんじゃない?』
何と、困った事に…僕の幼馴染への想いは姉には
見透かされているのだった。
「どうせ、いつも長続きしないもん。」
『…それも、どうかと思うけどね~。』
高校生の割に大人っぽい玲は、社会人とも交際しているとか
噂を母からも聞いていて。
本当に、いつもどういう経緯で知り合うのか不思議だ。
姉は、僕に言いたい放題言ってから彼氏が家の前まで迎えに来て
出掛けて行った。
「…僕はもう、恋したくないんだよ。ね、じゅげむ。」
猫のじゅげむの毛並みに顔を埋めて、モフモフする。
と、インターフォンが鳴った。
「!!??」
びっくりしたじゅげむが、僕の顔を蹴り上げて逃げていく。
「イタタ、はぁ~い……」
起き上がって、廊下に出て玄関のドアを開ける。
『真裕、久し振り。』
「…玲くん…ぇ、なに?珍しいね。ウチに来るなんて。」
僕と玲の家は、斜め向かいの近所に住んでいる。
『ウチの父親の実家から。おすそ分け。』
はい、と手渡された白い箱には
「ぶどう、前にも貰ったよね。ありがとう。」
『ここ何年か、生育が悪かったんだけど。今年はいい出来らしいからさ。おばさんにヨロシクって。』
「嬉しい…うん、伝えておくね。」
『真裕さ…』
玲が僕の顔をじっと覗き込んで、指を伸ばしてくる。
「ぇ、わ…っ」
『顔に、毛?沢山ついてるけど。そっか、お前の家ネコ飼ってたよな。』
「うん。そうそう。いっぱいついてるカモ…」
『白い毛、スゲー沢山…』
「……」
玲の指先が顔に触れて、余計にくすぐったい。
『取り切れんって。なー、たまにはさ…俺とも遊んでくれよな。』
「へ…?だって、彼女いるんじゃないの?」
『ぁ~居ない時もあるし。それに、幼馴染なんだから。さみしい事言うなよ。』
「ん、玲が迷惑じゃないなら良いよ?僕は、高校の友達遠い子ばっかだし。」
『そういう話も聞きたいからさ。んじゃな~』
相変わらず、颯爽としていて尾を引かない。
玲は、昔から距離感が絶妙なんだと思う。
自分が寂しくならない様に、生きているのかな?と感じる瞬間が多々あった。
それこそ、僕の都合はあんまり気にしちゃくれない。
なのに、一緒に居れるだけで嬉しかった。
会えばまた、心が動くだろうし。
フツウに触れて来る気安さが、なんだか憎くて愛おしい。
家のドアを開ければ、玲の家は簡単に視界に入る。
愛に行けない距離ではないから、かえって辛い。
僕の高校三年間は、ただただ玲への想いを燻ぶらせて終わった。
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