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①
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『その日、休みだよ。』
俺の誕生日は、央未とだいたい1ヶ月違い。
先月の、誕生日に祝う事を忘れる事も無く
しっかりと2人でお決まりの誕生祝いをした。
『ケーキ、ハロウィンになるんだよね。この時期の誕生日だと。』
オレンジに紫とかなりカラフルでポップな、時期限定品を用意して
央未と一緒に買いに行った、パティスリーの箱を開ける。
「明日もゆっくりできるし、朔が居るし。ちょっと、俺もう満たされ過ぎなんじゃない?」
央未の殊勝な言葉が、ひと月前の俺には心地よく響いた。
『ケーキさぁ、朔と一緒に作りたいなって思うんだけど…。面倒?』
仕事から帰って、先に夕飯を作っている俺に央未が寄って来た。
ジッ、と央未のつむじを見下ろす。
はぁーーーー。
「勤労感謝の日に生まれた事に感謝しようっと。」
『せっかくの休みなのに、朔の事使おうとしてるけどね。』
「そんくらいは、別に?俺の為に作りたいんでしょーよ。柊木さんは。」
『俺は、まだお菓子作るのは自信が無いってのもある。』
だからって、俺のエプロンの裾をちっこく握るのは
無意識なんだろうけど、あざといって言うのか何なのか。
「央未とイチャイチャしながら、一つのものを作り上げるだなんて…最高じゃん。」
『…ちょっとー、真面目に作らないとだよ?お菓子は分量と作業工程しっかり守らないと。失敗する。』
「分かってるって、お前面倒くさいから先に風呂入って来いよ。」
『良いの?朔、まだでしょ。』
「後でイイ。俺は、まだこの料理仕上がるまでココ離れらんないからさ。」
そろそろと俺から離れた央未は、静かにスーツの上着を脱いだ。
『朔も、もうベスト着てる?』
「一応な。」
『匂い移るからって、朔は着替えてから料理するし。そういう所、細かいよね。』
「服の匂いって、結構・・・分かるからな。少し、気を遣う。」
央未は納得した様に頷きながら、廊下に歩いて行った。
外の匂いをくっつけて帰宅した央未を、すぐに抱き締める余裕が無かった
自分が珍しいと思った。
ただ、俺は俺で央未と一緒に居られればそれでいい。
でも、時々よく分からない歯がゆさにイライラさせられたり
漠然とした不条理感に頭がおかしくなりそうになる。
いつも、いつまでも恐らくは一緒に居たい。
なのに、急に1人になって少し考えたいだなんて思う事もある。
何かのカタチに、なりたい訳では無い。
紙の上での永久は願えない事を知っている。
例えば、指輪を交わしてもきっと同じ事だ。
心も体も、絶対的に央未のものであり侵す事は許されない。
くつくつと弱火で煮えているパンを見下ろして、少しだけため息が漏れた。
ハグでもキスでもセックスでも無い。
きっと昔の自分の方が、この理屈をもう少し高尚に理解していたはずだ。
俺にだけみせる柊木央未が欲しい。
とは違う。
もっと自由に央未を愛せる自分で居たいのだ。
さんざん、肉欲に溺れてもおきながら今更きれい事を言うのも
おかしな話だろうが。
自分勝手に恋したり、愛を押し付けたり。
本当に人と言う生き物の身勝手さには、うんざりする。
「俺、一応は坊主なんだよな。」
俺の誕生日は、央未とだいたい1ヶ月違い。
先月の、誕生日に祝う事を忘れる事も無く
しっかりと2人でお決まりの誕生祝いをした。
『ケーキ、ハロウィンになるんだよね。この時期の誕生日だと。』
オレンジに紫とかなりカラフルでポップな、時期限定品を用意して
央未と一緒に買いに行った、パティスリーの箱を開ける。
「明日もゆっくりできるし、朔が居るし。ちょっと、俺もう満たされ過ぎなんじゃない?」
央未の殊勝な言葉が、ひと月前の俺には心地よく響いた。
『ケーキさぁ、朔と一緒に作りたいなって思うんだけど…。面倒?』
仕事から帰って、先に夕飯を作っている俺に央未が寄って来た。
ジッ、と央未のつむじを見下ろす。
はぁーーーー。
「勤労感謝の日に生まれた事に感謝しようっと。」
『せっかくの休みなのに、朔の事使おうとしてるけどね。』
「そんくらいは、別に?俺の為に作りたいんでしょーよ。柊木さんは。」
『俺は、まだお菓子作るのは自信が無いってのもある。』
だからって、俺のエプロンの裾をちっこく握るのは
無意識なんだろうけど、あざといって言うのか何なのか。
「央未とイチャイチャしながら、一つのものを作り上げるだなんて…最高じゃん。」
『…ちょっとー、真面目に作らないとだよ?お菓子は分量と作業工程しっかり守らないと。失敗する。』
「分かってるって、お前面倒くさいから先に風呂入って来いよ。」
『良いの?朔、まだでしょ。』
「後でイイ。俺は、まだこの料理仕上がるまでココ離れらんないからさ。」
そろそろと俺から離れた央未は、静かにスーツの上着を脱いだ。
『朔も、もうベスト着てる?』
「一応な。」
『匂い移るからって、朔は着替えてから料理するし。そういう所、細かいよね。』
「服の匂いって、結構・・・分かるからな。少し、気を遣う。」
央未は納得した様に頷きながら、廊下に歩いて行った。
外の匂いをくっつけて帰宅した央未を、すぐに抱き締める余裕が無かった
自分が珍しいと思った。
ただ、俺は俺で央未と一緒に居られればそれでいい。
でも、時々よく分からない歯がゆさにイライラさせられたり
漠然とした不条理感に頭がおかしくなりそうになる。
いつも、いつまでも恐らくは一緒に居たい。
なのに、急に1人になって少し考えたいだなんて思う事もある。
何かのカタチに、なりたい訳では無い。
紙の上での永久は願えない事を知っている。
例えば、指輪を交わしてもきっと同じ事だ。
心も体も、絶対的に央未のものであり侵す事は許されない。
くつくつと弱火で煮えているパンを見下ろして、少しだけため息が漏れた。
ハグでもキスでもセックスでも無い。
きっと昔の自分の方が、この理屈をもう少し高尚に理解していたはずだ。
俺にだけみせる柊木央未が欲しい。
とは違う。
もっと自由に央未を愛せる自分で居たいのだ。
さんざん、肉欲に溺れてもおきながら今更きれい事を言うのも
おかしな話だろうが。
自分勝手に恋したり、愛を押し付けたり。
本当に人と言う生き物の身勝手さには、うんざりする。
「俺、一応は坊主なんだよな。」
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