2 / 3
伯父様は、リアリスト?
しおりを挟む
『八頭くんは、惜しい事をした。』
伯父様がもう、何度も言うこのセリフを僕は
聞くたびに嬉しくなる。
『八頭くんであれば、長く愛される作家になっていただろうに。』
僕が知る限り、僕の父は推理作家であり
伯父様の大学時代の1つ後輩であり
ミステリ研究会に所属している、先輩後輩であったのだと聞いた。
僕の父は、数年前に鬼籍に入り
母は、実家である伯父様の家に転がり込んだ。
「僕、苗字のこと知らなくて。ずっと伯父様が父の事を、サトイモと
勘違いしていたって聞いた時、意味が分からなかったんです。」
『あぁ、他に愛らしい鳥もいたはずだ。ヤツガシラという名の』
伯父様と父の関係性を聞けば、僕がこの先上手くやっていけるのかを
予見できる気がした。
「父の書斎は、僕からすれば本当に神聖で…父が使っていたままの状態で
書斎は保管していたのに、家を母は売りに出してしまって…」
伯父様は、アンティークの椅子に座りつつ
飼い猫の、ミエルを抱き上げる。
小さな声で鳴く、まだ子猫。
はちみつ色の優しい毛色をした伯父様の大切な猫だ。
『家は、人が住まなくなると…まるでその事実に気づいたかのように、痛んで駄目になっていく。
心がある気がするのは、私だけではない筈だ。』
「母は、哀しくて…居られないと言うんです。まだ、書斎を開ければ父が原稿用紙に
ペンを走らせている気がするって。」
『我が妹は、随分と情緒的になったものだ。昔は、本当にお転婆で…困っていた程なのに。
八頭くんと、多くの事を分かち合って来た証拠だ。』
伯父様の猫に、触れてみたくて
座っていたソファから立ち上がると
「伯父様の、友達ですか?この猫ちゃん。」
『いいや、家族でもあり、恋人でもあり、理解者でもある。』
予想以上の答えが返って来て、僕は伸ばし掛けた手を
引っ込めた。
「伯父様、僕はこの家の子に…なるんでしょう?」
『きみは、どうあって欲しいと願う?一つだけ言えるのは、私はきみの
父親にはなれない。まぁ、なるつもりもないのだが…』
「はい…」
『でも、もしかしたら、伯父ではあるものの友人のような存在には
なれるのかもしれない。と、思ってしまったのだよ。』
「…伯父様、」
あれ?こおれは、もしや
伯父様、猫の肉球をフニフニ触りながら
そっぽを向いて…
「照れてらっしゃる…?」
『…きみと言う奴は。ここは、気の付かない振りをするのがスマートな紳士と言うものだろうに。』
伯父様のお顔が、わずかに赤かったのは
やっぱり僕だけの秘密にしておこうと思う。
伯父様がもう、何度も言うこのセリフを僕は
聞くたびに嬉しくなる。
『八頭くんであれば、長く愛される作家になっていただろうに。』
僕が知る限り、僕の父は推理作家であり
伯父様の大学時代の1つ後輩であり
ミステリ研究会に所属している、先輩後輩であったのだと聞いた。
僕の父は、数年前に鬼籍に入り
母は、実家である伯父様の家に転がり込んだ。
「僕、苗字のこと知らなくて。ずっと伯父様が父の事を、サトイモと
勘違いしていたって聞いた時、意味が分からなかったんです。」
『あぁ、他に愛らしい鳥もいたはずだ。ヤツガシラという名の』
伯父様と父の関係性を聞けば、僕がこの先上手くやっていけるのかを
予見できる気がした。
「父の書斎は、僕からすれば本当に神聖で…父が使っていたままの状態で
書斎は保管していたのに、家を母は売りに出してしまって…」
伯父様は、アンティークの椅子に座りつつ
飼い猫の、ミエルを抱き上げる。
小さな声で鳴く、まだ子猫。
はちみつ色の優しい毛色をした伯父様の大切な猫だ。
『家は、人が住まなくなると…まるでその事実に気づいたかのように、痛んで駄目になっていく。
心がある気がするのは、私だけではない筈だ。』
「母は、哀しくて…居られないと言うんです。まだ、書斎を開ければ父が原稿用紙に
ペンを走らせている気がするって。」
『我が妹は、随分と情緒的になったものだ。昔は、本当にお転婆で…困っていた程なのに。
八頭くんと、多くの事を分かち合って来た証拠だ。』
伯父様の猫に、触れてみたくて
座っていたソファから立ち上がると
「伯父様の、友達ですか?この猫ちゃん。」
『いいや、家族でもあり、恋人でもあり、理解者でもある。』
予想以上の答えが返って来て、僕は伸ばし掛けた手を
引っ込めた。
「伯父様、僕はこの家の子に…なるんでしょう?」
『きみは、どうあって欲しいと願う?一つだけ言えるのは、私はきみの
父親にはなれない。まぁ、なるつもりもないのだが…』
「はい…」
『でも、もしかしたら、伯父ではあるものの友人のような存在には
なれるのかもしれない。と、思ってしまったのだよ。』
「…伯父様、」
あれ?こおれは、もしや
伯父様、猫の肉球をフニフニ触りながら
そっぽを向いて…
「照れてらっしゃる…?」
『…きみと言う奴は。ここは、気の付かない振りをするのがスマートな紳士と言うものだろうに。』
伯父様のお顔が、わずかに赤かったのは
やっぱり僕だけの秘密にしておこうと思う。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
A Ghost Legacy
神能 秀臣
ミステリー
主人公である隆之介と真里奈は地元では有名な秀才の兄妹。
そんな二人に、「人生は楽しんだもの勝ち!」をモットーにしていた伯父の達哉が莫大な遺産を残したことが明らかになった。
ただし、受け取る為には妙な条件があった。それは、ある女性の為に達哉の「幽霊」を呼び出して欲しいと言うもの。訳が分からないと戸惑いながらも、二人は達哉の遺言に従って行動を開始する。
違う… 私じゃない…
幻田恋人
ミステリー
平凡なサラリーマンの主人公。
通勤時に街を走っていた男を追って、好奇心から一緒に走った。
そこから始まる主人公の悲喜劇…
さあ、冤罪を晴らすことが出来るか?
限られた時間であなたを感じていたい
ラヴ KAZU
ミステリー
海斗 驍 二十三歳
ある日驍は事故にあい黄泉の国への迎えが来てしまう。
驍は愛する琴葉が気になり、死神に頼み込み三ヶ月の猶予を与えて貰う。
驍は琴葉に気持ちを伝えたかった。
なぜなら琴葉は急に連絡が取れなくなった驍の愛に疑問を持ったのである。
浜咲 琴葉 三十五歳
急に連絡が取れなくなった驍の愛に疑問を抱く琴葉。
霊感を感じる琴葉はそれから不思議な出来事に遭遇する。
危険な目に遭うが霊体が危機を救ってくれた。
驍の死を知らされたが信じたくない気持ちと助けてくれた霊体が驍であって欲しいと思う気持ちの狭間で揺れていた。
驍は事故に遭い黄泉の国への迎えがやって来た。
愛する琴葉が気になり、三ヶ月の猶予を与えて貰う。
しかし自分の気持ちを伝えることが出来ず、同僚の身体を借りる事に。
琴葉は急に連絡が取れなくなった驍の愛に疑問を抱いていた。
危ない目に遭うが危機を霊体によって回避する。
だから驍の死を知らされたが信じたくない気持ちと霊体が驍であればいいと思う気持ちの狭間で揺れていた。
驍と琴葉の三ヶ月の物語である。
アナグラム
七海美桜
ミステリー
26歳で警視になった一条櫻子は、大阪の曽根崎警察署に新たに設立された「特別心理犯罪課」の課長として警視庁から転属してくる。彼女の目的は、関西に秘かに収監されている犯罪者「桐生蒼馬」に会う為だった。櫻子と蒼馬に隠された秘密、彼の助言により難解な事件を解決する。櫻子を助ける蒼馬の狙いとは?
※この作品はフィクションであり、登場する地名や団体や組織、全て事実とは異なる事をご理解よろしくお願いします。また、犯罪の内容がショッキングな場合があります。セルフレイティングに気を付けて下さい。
イラスト:カリカリ様
背景:由羅様(pixiv)
【キャラ文芸大賞 奨励賞】変彩宝石堂の研磨日誌
蒼衣ユイ/広瀬由衣
ミステリー
矢野硝子(しょうこ)の弟が病気で死んだ。
それからほどなくして、硝子の身体から黒い石が溢れ出すようになっていた。
そんなある日、硝子はアレキサンドライトの瞳をした男に出会う。
アレキサンドライトの瞳をした男は言った。
「待っていたよ、アレキサンドライトの姫」
表紙イラスト くりゅうあくあ様
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる