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⑧もどかしさ
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『千寿君、連絡待ってるのね。』
モーニングの時間帯が終わって、次はランチの向けての準備をしていた。
僕は、奥さんの優しい落ち着いた声に
話し掛けられると心が柔らかくなる。
同居人である、ノビがお葬式に出ている。
はずなんだけど…まだノビからの連絡がない。
落ち着かない。
もちろん、向こうに着いてから色々と忙しいであろうことは
予想はしている。
「まだ、落ち着かないんでしょうね。心配は、あんまりしてないつもりです。」
奥さんは、オペラケーキを焼く。
焼き時間中に僕へと、休憩の飲み物を淹れてくれる。
今日は、少し肌寒いからショコラテにした。
甘くてあたたかな飲み物は、冷えた心をいとも容易く
和ませてくれる。
僕自身も、この喫茶店で働く事により
癒され、満たしてもらっている事がよく分かる。
『待つ事って、どうしてこんなにも…もどかしくて。遣る瀬無いのかしらね。』
ひっそりと厨房の端に座って、ただ奥さんの言葉に相槌をうつ。
「自分でも、大丈夫だと心のどこかでは…思ってるのに。」
『今は、色んな便利なものがあるけれど。これでも、少しは時間を縮めているって
思うのに。どうしようもないわ。忙しくしてると、きっとすぐに時間は流れるでしょ?』
「フロアに出てると、時間は確かに早く感じます。」
シナモンが効いたショコラテを飲んで、一息つく。
あまり、考えない様にしよう。
ノビも自分もイイ大人なんだし、お互いに干渉しあわない
気楽な関係が心地よくて始めた同居なんだ。
僕も、甲斐甲斐しくなることもないし
帰って来たら来たで、なんとなくご飯を一緒に食べて
これまで通りにすればいい。
幼馴染で、親友で…兄弟の様に接してきたのに
近頃僕の方が、距離感が分からなくなっている気がした。
『千寿君が家にいるんだったら、帰って来るわよ。きっと、大丈夫。』
奥さんの微笑みが、優しい。
僕を気に掛けてくれる言葉にも、丸みを感じる。
『あなたとだから、一緒に暮らしてるのよ…。尚更ね』
奥さんは、きっと何かが見えてるのかもしれない。
勇気づけられる。人は、人を見たいようにしか
見ないものだから。
奥さんは、焼き上がった生地にコーヒーシロップを
打っていく。
今日も相変わらず良い匂い。
あと数時間も待っていれば、美しい光沢の
オペラケーキが、ショーケースに並んできっとすぐに
売り切れてしまう。
モーニングの時間帯が終わって、次はランチの向けての準備をしていた。
僕は、奥さんの優しい落ち着いた声に
話し掛けられると心が柔らかくなる。
同居人である、ノビがお葬式に出ている。
はずなんだけど…まだノビからの連絡がない。
落ち着かない。
もちろん、向こうに着いてから色々と忙しいであろうことは
予想はしている。
「まだ、落ち着かないんでしょうね。心配は、あんまりしてないつもりです。」
奥さんは、オペラケーキを焼く。
焼き時間中に僕へと、休憩の飲み物を淹れてくれる。
今日は、少し肌寒いからショコラテにした。
甘くてあたたかな飲み物は、冷えた心をいとも容易く
和ませてくれる。
僕自身も、この喫茶店で働く事により
癒され、満たしてもらっている事がよく分かる。
『待つ事って、どうしてこんなにも…もどかしくて。遣る瀬無いのかしらね。』
ひっそりと厨房の端に座って、ただ奥さんの言葉に相槌をうつ。
「自分でも、大丈夫だと心のどこかでは…思ってるのに。」
『今は、色んな便利なものがあるけれど。これでも、少しは時間を縮めているって
思うのに。どうしようもないわ。忙しくしてると、きっとすぐに時間は流れるでしょ?』
「フロアに出てると、時間は確かに早く感じます。」
シナモンが効いたショコラテを飲んで、一息つく。
あまり、考えない様にしよう。
ノビも自分もイイ大人なんだし、お互いに干渉しあわない
気楽な関係が心地よくて始めた同居なんだ。
僕も、甲斐甲斐しくなることもないし
帰って来たら来たで、なんとなくご飯を一緒に食べて
これまで通りにすればいい。
幼馴染で、親友で…兄弟の様に接してきたのに
近頃僕の方が、距離感が分からなくなっている気がした。
『千寿君が家にいるんだったら、帰って来るわよ。きっと、大丈夫。』
奥さんの微笑みが、優しい。
僕を気に掛けてくれる言葉にも、丸みを感じる。
『あなたとだから、一緒に暮らしてるのよ…。尚更ね』
奥さんは、きっと何かが見えてるのかもしれない。
勇気づけられる。人は、人を見たいようにしか
見ないものだから。
奥さんは、焼き上がった生地にコーヒーシロップを
打っていく。
今日も相変わらず良い匂い。
あと数時間も待っていれば、美しい光沢の
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売り切れてしまう。
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