ここち・くらし

あきすと

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⑤守りたいもの

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そろそろお互い、いい歳ではある。
よく言われてきた言葉たちを振り返ると
いつも必ず出てくる言葉があった。

【それって、好きなんじゃない?】
とか、
【同性愛者なの?】
という言葉が何度となく、僕の心に投げかけられた。

分からない。一番は、こう思う。
一緒に居たい相手を、選んでるんだと
ノビはいつか言っていた。

僕は、どうなんだろう?きっと同じなんだろうと思う。
まだ心を掘り下げるまでに至らないだけなのか。
大きな声では、言えないんだけど…
僕も選んでいるんだと時々実感する。

家に帰る必要がなくなった、と
ノビが子供みたいに笑ってくれた
あの日から。

嫌いなら一緒には、居られないだろうし。
でも、恋愛として好きなのかと聞かれたら
考え込んでしまうだろうけど。

一番しっくりくるのは、ノビが嬉しそうにしてくれて
僕が同じ様に嬉しい気持ちになれた。
これ以上のことが、今の僕には無い。
プライベートな空間はせめて持ちたいだろうから、と
ノビは僕だけの部屋もちゃんと準備してくれていた。

『来週は、少し帰りが遅くなると思うから』
お風呂を洗い終えた僕は、リビングに戻った。
ノビはテーブルに向いて、タブレットを操作している。
「…あ、そっかぁ。もう、そんな時期なんだよね。」
『そ…。泊り込んだりもあったりするから。何は無くとも、連絡は入れる。』

ノビは、僕よりももっとレベルの高い学校にも行けたのに。
もったいない事をしてたと思う。
「あんまり無理を重ねない様にな。後、何か必要になったりしたら届けたりも『それは、駄目だ。』
え…、何で?」
『俺の事は、自分でする。お前が俺に甲斐甲斐しくするのは、この生活のバランスが崩れそうだからヤメテ。』
拒絶されてる訳では無いんだろうけど、ちょっと面くらってしまう。

ノビは、昔からどうにも冷たい印象を持たれたり
誤解される事が多い性格だったから。
自分だけは、理解者でありたいと思ってるのに
なんでこれくらいで心が揺れそうになるのか。

「分かった。けど、困ったら…一応は、俺の存在も頭の片隅に置いといてくれたら」
ノビは、ジッと俺を見てからため息をつく。
『こんな年がら年中一緒に居て、頭の片隅だなんて…やっぱりお前の感覚はズレてるよ。』

すっかり冷めてしまったコーヒーに気が付いて
「淹れ直すよ。ノビ、眉間…恐いって。」
テーブルの上のコーヒーカップを一旦下げて、キッチンでお湯を沸かす。
『コンタクトに戻したい。』
眼鏡を外して、ノビは眉間を押さえてる。
「やっぱり、まだ慣れないんだ?そんなに変わる?」
『めっちゃ変わる。風呂場なんて、ほとんど見えないからな。』
「あ、お風呂はね…確かに。」

キッチンのキャビネットから、フィンガーサイズの
ミルクチョコレートを2枚添えて、ノビの前にコーヒーを差し出す。
『で、慣れなさ過ぎて頭痛…』
「珍しいよ、ノビは頭痛持ちじゃないのに。酷かったら薬ある?」
『飲まない。飲むとまた頼りそうだからな。…それに、お前がコーヒー淹れ直してくれたから
大丈夫だと思う。』

疲れてるのが、ひしひしと僕にも伝わって来る。
子供の頃から変わらない。
意地っ張りで、少し頑固な親友。

ノビの言葉に何となく心が軽くなっていた。
心配し過ぎるから、うんざりされないかと思ったりもしたけど。
「ちょっとはさ、息抜きも必要だね。」
ノビも、僕も。
この暮らしを続けるために、何となく無意識で
頑張り続けてる。

構えてしまう、外からの介入を恐れている。


【次回の更新を、お楽しみに♪】
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