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「ん…。こんなの、ふしだらだよ。付き合っても無いのに。」
桐哉の手で一旦落とされて、一気に気持ちも体も
しんどくなっていた。

躊躇が無いんだよなぁ。フツウ、抵抗ないか?
って思うけれど。
また、いいように揶揄われてるのかなって。

『付き合って…エー…なかったっけ?』

はあ?おい、何言ってんだこのオッサン。

と言うか、何回出させる気だよ。

桐哉に体を預けたくないのに、脳がおかしくなってるみたいな?
ふわふわの、だるぅ~…。が続いてた。

「だって、何も言われて無いよ?俺。」
桐哉が、気まずそうにして少し口ごもりながら
『前に、結構な高級店行ったじゃん?』
俺を抱き締め直して、頬にキスをする。

「え、宝くじ当たった時の?」
『そうそう、その帰りにさ…俺は、言ったよ?俺なりの告白を。』

真剣に考えた。待てよ、この愛の詩人(一応褒めている)
愛情表現がかなり独特の言い回しなんだった。

なんだっけ、何て言ってたっけ?
帰り道にそう言えば何か、それっぽい事言ってた気がする。
あの時、珍しく俺は酒飲んで…悪酔いしかけてたんだった。

「……ぁ~…そう言えば、ね。言ってた。言ってた。」
『忘れてるだろ…、酷い!中年の純情弄んでるのは、静瑠の方じゃん!』

面倒な事になって来てる。

「や、覚えてるよ。マジで…。リングも貰ったしさ。」
『一回も俺の前で、そのリングだって嵌めた事ないし。』

やっば、反論できなくなって来た。

「ちょ、一回パンツ履かせて。お腹冷えちゃう。」
『ぁ、まだ拭いてないから…べったべた…』

はぁ、出した後って思考するのもめんどくさい。
このまま寝たいんだけど。さすがになぁ。
「シャワー浴びて来る。」
桐哉の腕から逃れて立ち上がり、みっともない格好でそのまま脱衣所に向かった。

ちょっと、反省してた。
頭から降り注ぐシャワーに身を打たれながら、もう一度思い返してみる。

「はぁ、めんどくせー…。」


スッキリした体と頭でリビングに戻ると、桐哉は寝る前にシンクの掃除をしていた。
あ、と直ぐに分かった。
ちょっとだけ、拗ねている空気を感じる。
寝たら忘れるタイプじゃないからなぁ。

『あのさ、静瑠…俺、お前に話しておきたい事がある。』

初めて、桐哉の言葉が怖いと思った。
優しい声で、大好きな歌を歌いあげる人。
でも、ただそれだけじゃない。
1人の人間としての多面性を知るべき時が来ている事を実感する。

「ん、聞きたくない。」
部屋着で髪をタオルで拭きながら、桐哉の言葉を拒否する。
『じゃ、もう俺個人の話は一切しない方が良いか?例えば、過去の事も』

聞きたいに決まってはいるけど。
きっと俺の感情がついて行かないと思うんだ。

「重いよ、そんないきなり。俺はまだ心の準備が…出来てないし。」

フッと桐哉から小さく笑い声が聞こえて、なんとなくカチンと来た。
『お前さ、そういう心の準備はできない癖に。アッチの心の準備は出来るんだな。』
「はぁ~…?種類が違うし。」
『むしろ、アッチのが余程の心の準備…必要だろうに。』
「あーーーーー。もう、分かったって。別に喧嘩したい訳じゃないから。聞くよ。」

俺が根負けすると、桐哉は少しだけ哀しそうに笑う。
『お前には、ちゃんと…俺の事を知ってもらいたいんだよ。』



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