DESERTの憂鬱【カシスソルベが溶ける前に】

あきすと

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『やっぱり神様ってのはいないわな。』
僕の話を聞いた要は、つぶやいた。

寝る前に、きちんと要と向かい合って
僕のこの先の進路について
思うところを話した。

『これもきっと、因果応報ってヤツだ。』
要はとにかく分かりやすく気落ちしている。
僕の瞳に映る恋人は、今にも消えてしまうんじゃないかと思うほど、儚く感じる。

「愛してます、要…。例え少し離れてても僕の想いは変わりません。」
何か言いたげに、要は僕を見つめて
またうつむいてしまう。

『お、れは…、その…今一瞬の気持ちがさ、ものすごく大事なんだよ?璃端。だから、お前に逢えない事自体がきっと無理。耐えられないと思う。』

僕は、一度海外に出てモデルとして活動
しておきたいと思っていた事を
要に話した。
「今から向こうで実績を積みたいんだ、要の気持ちはすごく…僕にも伝わってるよ。だから、毎日でも画面越しでもイイから話しましょう?」

雲行きが怪しくなる事は予想できてた。
でもここまでとは、思わなかった。
ベッドの上で要は正座をしたまま、
首を横に振る。

『…多分、きっとそんな事したらもっと璃端に逢えない事が辛くなると思う。俺さ、自分でも思うよ?遠距離は向かないって。』
「要…、」
『そばに居なくても、心は繋がってるとか綺麗事は求めてない。俺は、璃端に触れたいし触れられたい。好きな相手だからこそ、我慢できないんだよ。』

要に思い切り抱き付かれて、僕は嬉しい反面少しだけ戸惑っていた。
こんなにも、要の想いが濃くて強いなんて。
クラクラしそうだった。
要がこんな風に、自分を見せてくれるのは
結構珍しいから。

「…要、分かりました。少し考えてみます。それこそ、事務所とよく話し合いをしなきゃいけないですし。違う方向性も探してみますね。僕だって、好き好んで要から離れたい訳じゃありませんから。」

薄くくびれた要の腰を抱き締める。
どちらからともなく、キスをして
涙に潤んだ愛しい要の目尻にも
口付けた。

感情豊かで、まっすぐな要の想いには
僕も心を揺さぶられる。
本当に自分に素直に生きている人と言うのは
なぜか人を惹きつける。

『僕は要のワガママな所がすごく、愛おしいですよ。』
「…え、俺ってそんなにワガママ?」
キスで上気した頬を両手で押さえながら
要は少し上を向き僕と視線を合わせた。

『そうですね、時々ワガママ出ちゃってますよ。』
「~いい歳こいて、恥ずかしい…ごめん、なんか。」
『そう言う所ですってば、要可愛いです。』

ひとつだけ歳上の同性が、何故こんなにも
愛らしいのか。
要は人を惑わせるのが上手い。
惹きつけて、引き放して。
追わせたくなる距離を、おそらく
無意識にとっている。

「泣きそうな目で僕を見つめる貴方を、僕が置いていけるはずがない。」

身を寄せてくる仕草が、まるで人懐こい猫みたいで笑みが自然と溢れる。
要にのし掛かられてる僕は、なすがままで
段々とベッドに押し倒されていく。

視界には、イタズラな笑みを浮かべた
要のドアップ顔。
ただただ、可愛い。
頬に、要の髪がサラサラとかかって
くすぐったい。

腰をしっかり抱き込んで、深いキスを交わす。
ラングドシャのモデルになった
猫をふと思い出す。

柔らかくて滑らかな舌触り、触れ合えば
繊細に震えている。
『っぁ…、』
じわりと滲み出てくる、唾液を
舌先に絡めて要の上顎を優しくなぞる。

トロトロに溶けて行くのが、淫靡で
欲情を煽られる。
たったキスひとつだったはずなのに、
収まりがつかなくなっていた。

僕の上で、もどかしげに要が腰を
よじっている仕草を見てしまうと
このまま眠りにつくのは惜しい。

「良い?要…」
無色の糸を途絶えさせて、要は頷く。
『さっきっから、ずーっと当たってんだよ。もぉ、璃端のえっち…』
跨られながらも、その間もちろん
反応はしていた。

要は腰を少し浮かせて、僕の股間に
自分の内股を擦り付ける。
眩暈を覚えそうな程の刺激だ。
「ちょ…っ、そんな事したら…っ…」
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