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不穏
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「もーっ、おばか。なんでこんな大事な事忘れてるの?…ね~」
朔のお姉さんに預けられた甥っ子くんを抱っこしながら、俺は
リビングに戻って朔が荷物の確認をしているのを見ていた。
『悪かったって。義兄さんと姉貴と親父は本家の行事に行ったんだけどさ。
俺もこの後は練習あるし…少し空けるけど、央未に晄稀の事任せていい?』
「ぇ、練習って?」
『今年の秋季祭禮…去年も出てただろ?俺。』
「あ、あー、獅子舞ね。ぇ!?夜いないの?いつ帰って来るのさ」
『十時までには、遅くとも帰って来るつもり。』
と言うか、晄稀くんって名前だったんだよね。
可愛いなぁ。すっかり大きくなってて驚いた。
「ねぇ、晄稀くんっていくつになったの?」
『もうそろそろ2歳だな。そんな、心配いらないって。最近、風呂嫌がるらしくて
もう大変らしいからな。俺が帰って来てから入れてみる。』
さすがにずっと抱っこも疲れて来たから、ソファに座ってみる。
「大人しいね…朔と似て無くて良かった。」
『義兄さんと似てるんだろな。いつもなら、俺によく近寄って来るし。
話そうとするんだけど。』
「知らないお家…居心地よくないのかも。」
『椅子まで持って来てあるな。ま、とりあえず今は眠そうだから…寝させておけば大丈夫。』
時々、実家には帰って晄稀くんと遊んでるんだな。
うーん、やっぱりクソ彼氏にしては高スペック。
「この年頃って、記憶が無かったし。俺の周りにはまだ、身近に赤ちゃん居なくてさ。」
『そか、央未は一人っ子だもんな。俺は、昔から親戚が多いし家にもよく子供連れで集まってるから。
今から、気張り過ぎるなよ?俺も居るんだし。』
そうだよね、朔が居てくれなきゃちょっと困るかも。
でも、本当に可愛い。ほっぺただってまるまるしてて、ぷにぷにだし。
まだまだ小さい手のひらも、久し振りに見た気がする。
すっかり寝てしまった寝顔を見てると、横から朔に肩をツンツンされて
「ん…?何、朔」
『これ、レシピノート。で、今から作っとくと後で晄稀が起きた時に楽だから。』
そんな事まで考えてるの!?と驚く暇もなく台所に向かう朔の横で
一緒になって食事の準備をしていく。
どちらも料理は苦じゃないし、むしろ好きな方だから
そんなに時間もかからずに、晄稀くんの食事は出来た。
後は、静かに静かに。起こさない様に気を遣っていると
あっという間に昼過ぎになっていた。
自分たちの昼食もついでに作ってしまっておいたから
テーブルに皿が並ぶ。
「ミルクってもう飲んでないの?」
『そろそろ飲まないらしい。まぁ、それぞれらしいけど…離乳食も食べてるし。過渡期なんだろうな。』
「様子を見ながらなのかな。難しいんだね…。」
『1日預かるだけでも、くたびれそうだな央未は。真面目なのはいいけど、もっと気楽にな。』
「そうもいかないよ、朔の甥っ子くんなのに。」
『…ありがとなぁ、央未。』
不意に朔に頭を撫でられて、ドキドキしてしまった。
なんでだろう。いつもの朔なのに。
「よく寝るねぇ…お腹空いてないのかな?」
『起きたら、さっきの食事…まぁ、食べてくれればいいけどな。』
一瞬、朔が不敵な笑みを浮かべた気がしたけど
気のせいかな?
朔と昼食が終わった後に、2人でソファでうとうとしていたら
泣き声で目が覚めた。
『ほーら、始まったぞ。央未』
朔は、スッと立ち上がり晄稀くんのもとに行くとオムツの確認をして
「しちゃってる?」
『時間的にも替えといた方が良いかな。央未、そのバッグ取って』
あっさりとオムツを交換してくれた。
「すごい…、朔って子供苦手そうなのに」
『…え、俺は子供も赤ちゃんも大人よりかはまだ、好きな方だけど。』
ほんと、この朔と言う男ってのは意外性の塊でしかない。
「初耳だけど…。そうなの」
『長く生きてると、心も薄汚れてくもんだろ?そういう意味で、な。』
晄稀くんをあやしながら、ゆるく笑ってる朔が
あまりに穏やかで。
俺は、やっぱり…朔の未来をどこか奪ってしまっている気がして
いたたまれなくなって来た。
「朔は、良い父親にはなると思うんだけど。」
『今、くだらない事言ったら…央未、解ってるよな?』
言わせてもくれない、やっぱり全然優しくなんてない朔は。
ずっと無い物ねだりをするなんて、あまりに辛すぎる。
「朔には、あたたかい家庭をもってもらいたいよ。」
『俺の事は、俺が決めるの。』
「俺だって、そう思うけど……ごめん。」
それから数時間、俺は朔と口をきけなかった。
朔のお姉さんに預けられた甥っ子くんを抱っこしながら、俺は
リビングに戻って朔が荷物の確認をしているのを見ていた。
『悪かったって。義兄さんと姉貴と親父は本家の行事に行ったんだけどさ。
俺もこの後は練習あるし…少し空けるけど、央未に晄稀の事任せていい?』
「ぇ、練習って?」
『今年の秋季祭禮…去年も出てただろ?俺。』
「あ、あー、獅子舞ね。ぇ!?夜いないの?いつ帰って来るのさ」
『十時までには、遅くとも帰って来るつもり。』
と言うか、晄稀くんって名前だったんだよね。
可愛いなぁ。すっかり大きくなってて驚いた。
「ねぇ、晄稀くんっていくつになったの?」
『もうそろそろ2歳だな。そんな、心配いらないって。最近、風呂嫌がるらしくて
もう大変らしいからな。俺が帰って来てから入れてみる。』
さすがにずっと抱っこも疲れて来たから、ソファに座ってみる。
「大人しいね…朔と似て無くて良かった。」
『義兄さんと似てるんだろな。いつもなら、俺によく近寄って来るし。
話そうとするんだけど。』
「知らないお家…居心地よくないのかも。」
『椅子まで持って来てあるな。ま、とりあえず今は眠そうだから…寝させておけば大丈夫。』
時々、実家には帰って晄稀くんと遊んでるんだな。
うーん、やっぱりクソ彼氏にしては高スペック。
「この年頃って、記憶が無かったし。俺の周りにはまだ、身近に赤ちゃん居なくてさ。」
『そか、央未は一人っ子だもんな。俺は、昔から親戚が多いし家にもよく子供連れで集まってるから。
今から、気張り過ぎるなよ?俺も居るんだし。』
そうだよね、朔が居てくれなきゃちょっと困るかも。
でも、本当に可愛い。ほっぺただってまるまるしてて、ぷにぷにだし。
まだまだ小さい手のひらも、久し振りに見た気がする。
すっかり寝てしまった寝顔を見てると、横から朔に肩をツンツンされて
「ん…?何、朔」
『これ、レシピノート。で、今から作っとくと後で晄稀が起きた時に楽だから。』
そんな事まで考えてるの!?と驚く暇もなく台所に向かう朔の横で
一緒になって食事の準備をしていく。
どちらも料理は苦じゃないし、むしろ好きな方だから
そんなに時間もかからずに、晄稀くんの食事は出来た。
後は、静かに静かに。起こさない様に気を遣っていると
あっという間に昼過ぎになっていた。
自分たちの昼食もついでに作ってしまっておいたから
テーブルに皿が並ぶ。
「ミルクってもう飲んでないの?」
『そろそろ飲まないらしい。まぁ、それぞれらしいけど…離乳食も食べてるし。過渡期なんだろうな。』
「様子を見ながらなのかな。難しいんだね…。」
『1日預かるだけでも、くたびれそうだな央未は。真面目なのはいいけど、もっと気楽にな。』
「そうもいかないよ、朔の甥っ子くんなのに。」
『…ありがとなぁ、央未。』
不意に朔に頭を撫でられて、ドキドキしてしまった。
なんでだろう。いつもの朔なのに。
「よく寝るねぇ…お腹空いてないのかな?」
『起きたら、さっきの食事…まぁ、食べてくれればいいけどな。』
一瞬、朔が不敵な笑みを浮かべた気がしたけど
気のせいかな?
朔と昼食が終わった後に、2人でソファでうとうとしていたら
泣き声で目が覚めた。
『ほーら、始まったぞ。央未』
朔は、スッと立ち上がり晄稀くんのもとに行くとオムツの確認をして
「しちゃってる?」
『時間的にも替えといた方が良いかな。央未、そのバッグ取って』
あっさりとオムツを交換してくれた。
「すごい…、朔って子供苦手そうなのに」
『…え、俺は子供も赤ちゃんも大人よりかはまだ、好きな方だけど。』
ほんと、この朔と言う男ってのは意外性の塊でしかない。
「初耳だけど…。そうなの」
『長く生きてると、心も薄汚れてくもんだろ?そういう意味で、な。』
晄稀くんをあやしながら、ゆるく笑ってる朔が
あまりに穏やかで。
俺は、やっぱり…朔の未来をどこか奪ってしまっている気がして
いたたまれなくなって来た。
「朔は、良い父親にはなると思うんだけど。」
『今、くだらない事言ったら…央未、解ってるよな?』
言わせてもくれない、やっぱり全然優しくなんてない朔は。
ずっと無い物ねだりをするなんて、あまりに辛すぎる。
「朔には、あたたかい家庭をもってもらいたいよ。」
『俺の事は、俺が決めるの。』
「俺だって、そう思うけど……ごめん。」
それから数時間、俺は朔と口をきけなかった。
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