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微かに
しおりを挟むここ最近、清瀬がおかしなことを言い出した。
『武蔵、なんかこう…匂いがするんだけど。誰かの移り香?』
そもそも自分がそういう物には
手を出す事もないのを、解った上で
聞いてくる清瀬。
いつも通り、接待やもてなしの
仕事が忙しい。
帰宅も相変わらず遅くて、
前とは変わらない日々。
お風呂から上がって、リビングで
ゆったりしてるとソファに座る
足元には、清瀬が定位置で。
「お風呂入った後にそんな事言われても…どゆこと?」
お風呂上がりのアイスを持って来てくれる
清瀬がニコリと笑みを浮かべた。
『どゆこと?はコッチの台詞。最近ずっと気になってたんだけど。別に何かつけてる訳でもないよな?』
ありがと、と棒付きアイスを
手にして包み紙を外した。
「え、仕事上そういうのは付けられないよ。…そんな気になる匂いなの?」
清瀬に匂いを嗅がれる事には、もう
慣れてるし。思い当たる事もなくて
少し戸惑いつつも、アイスを食む。
あれ?清瀬は食べないのかな。
膝には清瀬の手のひらが、這っていて
もう片方の手は腰にまわされてる。
『控え目に言って、めちゃくちゃ良い匂いがしてる。ちょっと今まで嗅いだこと無い様な、こう…うにゃうにゃした匂い。』
うにゃうにゃって、それ本当に
良い匂いなの?
と、疑いたくなる表現をされて
微妙な表情をしながら清瀬の頭を撫でた。
「うにゃうにゃね、でも清瀬が好きな匂いなんだ?」
『…好き、好きだよ。好き過ぎて頭おかしくなりそう。心が沸き立つって多分こんな感じなんだと思う。』
そんなに?
ちょっと驚いてしまう。
だってさ、他の誰かにはそんな
匂いの事なんて言われてもないのに。
どうしてまた、清瀬だけなのかな?
「俺、カラダどこかおかしいの?」
『まさか、別に良い匂いなんだから心配要らなくないか?』
「具体的には何の匂いがする?」
もう少し情報がないとね、自分の匂いって
分かりにくいものだから。
『え…、だから、今までで1番優しくてフワフワして、少し花みたいな?でも微かで』
語る清瀬の瞳が本当に嬉しそうで
何となく気恥ずかしくなって来た。
「大袈裟だよ、清くん。ん、アイス食べといて。」
ちょっと黙ってもらいたくて、バニラアイスの半分を清瀬の口元に差し出した。
僕の手を使って、器用に口へと運ぶ動作を
黙って見つめながら密かにドキドキしていた。
清瀬は、無言になった時に適度な威圧感が
出てしまう。
本人も無意識なんだろうけど。
身内だからこそ、理解しているから
わずかに心に余裕があって
静観できる。
内心、惚れ惚れしてしまう。
今でこそ金髪になってしまっている
けれど、昔は黒髪の頃とても綺麗な
眼の色も人目を引くと噂の美男子と
噂されていた。
誇らしげで、でもどこか
面白くなくて。
清瀬の僕に対する独占欲もかなりの
ものだけど、僕から清瀬への
独占欲も結構あったのだと思う。
「ね、美味しい…?」
『どうだろ、武蔵の方がもっと甘くて濃い…』
「?!も~、なんの話だよ…っ、バカ!」
ぐぐっ、と清瀬の手が肩口から首に絡んで
キスを交わされる。
少し冷たくて、甘い…良い匂い。
お口のなかがトロトロになってく、
初めから解ってた?望んでたのが
きっと清瀬にはバレてる。
パジャマの上から、胸を清瀬の手のひら
でまさぐられる。
「ンぅ…っ、」
舌先で、上顎をくすぐる様に舐められて
ゾクゾクがとまらない。
抵抗する事も忘れちゃうくらいに
もどかしくて気持ち良い。
ちゅっ、と音を立てながら吸い付く唇が
胸に移る頃には僕の腰がそろそろ
はしたなく揺れ始めていた。
僕と清瀬は霊力供給の関係では
ないけれど、1人分を分かち合うと言う
ある意味では特殊な関係性ではある為
個人の霊力値としては、あまり高くは
なかったりもする。
だからこそ、出来るだけそばに居て
シンクロ状態を保つ事により
霊力を維持しやすくしている。
「中って、その…シても、意味ないのかなぁ?」
『そんな事、考えてたの?武蔵』
「まぁ、出来れば意義があった方が…清くんの為にも『そんなの、全然気にする事ない。俺は、ただ武蔵が好きだから。損得なんて一切ない』ゴメンね、僕も勿論そうだよ。色々考えちゃうよ…だって、僕らが対の意味とか。そこに何かがあるんじゃないかって。」
向き合う事を避けて来た話に、僕は自然と涙がこぼれ落ちるのも構わずに続けた。
『武蔵と俺は…特別だって、思いたかった?』
改めて言葉にされると、恥ずかしいし
何だか考えが浅ましいって清瀬に
思われるんじゃないかって、
気が気じゃない。
でも、認める他ない。
じ、と清瀬と視線を合わせてから
ゆっくり頷いた。
『特別なのが当たり前過ぎて、もう普通になってた。』
「…清くんらしいカモ。」
『俺の対として存在してるんだろ?』
「うん、一応はそうです。」
『その時点で充分過ぎるし…あのさ、あんまり俺の事煽るのやめてくんない?最近の匂いといい、いくら何でも身が持たないカラ。』
思わず、えっ?
と言いかけると清瀬にソファに
押し倒されてしまう。
「僕、煽ってなんか無いよ…。でも、最近は清くんに対してちょっと独占したい気持ちが強くなって来ちゃってさ、どうしたらいいのか分かんなくて悩んだりしてた。」
『だから、それが煽ってるっての…』
はぁあ、と珍しく清瀬のため息が
聞こえる。
「ぇ、あ…ごめんなさい。でも、確かに悶々としてるって職場でも少し注意されたかな。」
僕の言葉に、清瀬がすぐに反応して
『どんな顔して働いてんだよ、武蔵は…』
「どんなって、普通だよ。」
『とりあえずその、悶々としてるのを解消しない事にはな。俺の武蔵が変な輩に目でも付けられないか心配になって来た。』
あれ、いつの間に?と思う程に
既に僕のパジャマのボタンは外されていて
バサッと服が脱げ落ちる音に
目をみはる。
少し先に見えるのは、清瀬の上半身(半裸)
だった。
ヤダなぁ、そんな姿見せられたら
胸の奥がきゅぅっと、
締め付けられてしまう。
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