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今年の梅雨入りが報じられた。
明け方の小雨は、肌寒さを思い出させる。
考えない様にしていた、でないと寂しさできっと
礼緒くんに迷惑を掛けてしまう。
こちらからは、連絡をしない様にと。
帰って来る時のメッセージを受け取ってから
僕はその日、遅番のシフトだった。
ソワソワしながら、喫茶部門で提供するパルフェを
作っていた。
この春から、先輩に教えて貰ってレシピを少しずつ覚えていく。
夜限定のメニューと言う珍しさもあって、市内から
喫茶利用のお客様も増え始めている。
夜には大雨になっていて、警報級の雨量も心配されている。
勤め先は比較的、山間だからライフラインが絶たれたりすると
かなり厄介。
近隣は、里山公民館などがあってもし
避難するような事になれば、そこへ行く事になる。
ハザードマップが、近年ではかなり身近で
現実的なものになって来てしまっている。
フロントの兼務もしながら、今日はもうきっと
静かな夜では終われなさそう。と思っていた。
窓ガラスに風雨が荒れ狂っている。
今頃、礼緒くんは無事に家に帰ってるのかな?
南の方も、荒天ではあるとお昼過ぎに見た
ネットのニュースを見て、気がかりだった。
電車も、空の便ももしかしたら遅延。
もしくは、欠航しているかもしれない。
気にはなるけれど、もう数時間すれば僕も帰宅でき…るのかな?コレ。
会社の早番の人も大丈夫なのか。
送り迎えしてもらえる職場は、かなり便利で助かっている。
帰り道の道路に倒木や土砂崩れがあれば、絶望的だったり。
「無事に、朝を迎えられたらいいけど。」
朝の食堂のキッチンも手伝いながら、極力
気を紛らわせていた。
宿泊のお客様も、ネットの情報をとりながら今日のスケジュールを
確認している。
不安なのは、他の人も同じだ。
朝食バイキングが終わると、帰宅の途につく。
一回り上の先輩に、いつもの様に家まで送ってもらって
ホッとしていた所。
携帯に着信があって、驚きつつも応答する。
『大丈夫か、避難指示出てる区域だったろ?勤め先。』
……あ~、いかにも。
「おはよう、礼緒くん。ふふっ…大丈夫だよ。」
彼らしい勢いと、心の温かさが伝わって来る。
僕が、礼緒くんを素敵だと思う部分。
『寝る前に、会えるか?その、しんどくなかったらで良いから。』
「うん。大丈夫。…僕も、早く礼緒くんに会いたかったから。」
家の前で傘をさして礼緒くんの姿を見つけると、
「傘、さしてないの?!…も~っ」
すぐに家から出て来たらしい礼緒くんを、駆けて迎えに行く。
小雨では無いのに、濡れちゃうよ。
傘に礼緒くんを迎え入れて一安心する。
『お前は、あんまり心配させるな。』
「え…?そんなにも、心配してたんだったら…僕も礼緒くんの帰りの足取りばっかり
気にしてたよ。」
『後で、お土産渡しに行く。話はその時な。顔見たら安心した。疲れてるだろうに…呼び止めて
悪かった。』
きっちり、しっかりはっきりしているのが、礼緒くんらしくて
ついつい顔がにやけちゃう。
「僕なら平気だよ。礼緒くんも、今日はお休みなんでしょう?ゆっくり休んでね。」
『行く時、また連絡する。』
「あ、玄関先まで送るよ~。」
相合傘は、すぐに終わってしまったけれど。
礼緒くんに玄関先で頭を撫でられた。
小声で、『お休み』と言われて。
その声の優しさに僕は胸が沸き立つ感覚を覚えた。
明け方の小雨は、肌寒さを思い出させる。
考えない様にしていた、でないと寂しさできっと
礼緒くんに迷惑を掛けてしまう。
こちらからは、連絡をしない様にと。
帰って来る時のメッセージを受け取ってから
僕はその日、遅番のシフトだった。
ソワソワしながら、喫茶部門で提供するパルフェを
作っていた。
この春から、先輩に教えて貰ってレシピを少しずつ覚えていく。
夜限定のメニューと言う珍しさもあって、市内から
喫茶利用のお客様も増え始めている。
夜には大雨になっていて、警報級の雨量も心配されている。
勤め先は比較的、山間だからライフラインが絶たれたりすると
かなり厄介。
近隣は、里山公民館などがあってもし
避難するような事になれば、そこへ行く事になる。
ハザードマップが、近年ではかなり身近で
現実的なものになって来てしまっている。
フロントの兼務もしながら、今日はもうきっと
静かな夜では終われなさそう。と思っていた。
窓ガラスに風雨が荒れ狂っている。
今頃、礼緒くんは無事に家に帰ってるのかな?
南の方も、荒天ではあるとお昼過ぎに見た
ネットのニュースを見て、気がかりだった。
電車も、空の便ももしかしたら遅延。
もしくは、欠航しているかもしれない。
気にはなるけれど、もう数時間すれば僕も帰宅でき…るのかな?コレ。
会社の早番の人も大丈夫なのか。
送り迎えしてもらえる職場は、かなり便利で助かっている。
帰り道の道路に倒木や土砂崩れがあれば、絶望的だったり。
「無事に、朝を迎えられたらいいけど。」
朝の食堂のキッチンも手伝いながら、極力
気を紛らわせていた。
宿泊のお客様も、ネットの情報をとりながら今日のスケジュールを
確認している。
不安なのは、他の人も同じだ。
朝食バイキングが終わると、帰宅の途につく。
一回り上の先輩に、いつもの様に家まで送ってもらって
ホッとしていた所。
携帯に着信があって、驚きつつも応答する。
『大丈夫か、避難指示出てる区域だったろ?勤め先。』
……あ~、いかにも。
「おはよう、礼緒くん。ふふっ…大丈夫だよ。」
彼らしい勢いと、心の温かさが伝わって来る。
僕が、礼緒くんを素敵だと思う部分。
『寝る前に、会えるか?その、しんどくなかったらで良いから。』
「うん。大丈夫。…僕も、早く礼緒くんに会いたかったから。」
家の前で傘をさして礼緒くんの姿を見つけると、
「傘、さしてないの?!…も~っ」
すぐに家から出て来たらしい礼緒くんを、駆けて迎えに行く。
小雨では無いのに、濡れちゃうよ。
傘に礼緒くんを迎え入れて一安心する。
『お前は、あんまり心配させるな。』
「え…?そんなにも、心配してたんだったら…僕も礼緒くんの帰りの足取りばっかり
気にしてたよ。」
『後で、お土産渡しに行く。話はその時な。顔見たら安心した。疲れてるだろうに…呼び止めて
悪かった。』
きっちり、しっかりはっきりしているのが、礼緒くんらしくて
ついつい顔がにやけちゃう。
「僕なら平気だよ。礼緒くんも、今日はお休みなんでしょう?ゆっくり休んでね。」
『行く時、また連絡する。』
「あ、玄関先まで送るよ~。」
相合傘は、すぐに終わってしまったけれど。
礼緒くんに玄関先で頭を撫でられた。
小声で、『お休み』と言われて。
その声の優しさに僕は胸が沸き立つ感覚を覚えた。
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