【クソ彼氏から離れらんなくて】⑮クソ彼氏と夏のおあずけ。

あきすと

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①あつくて、つめたいの。

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世は夏休み。当たり前だけど、今日も自炊してる。
俺もすっかりレパートリーが増えた事に自分で驚く。

今日はこの後、朔が来て一緒に課題をする事になっている。
夏場は目が覚めるのが少し早くなる。

毎日が猛暑。家の前に打ち水をしたりして、涼を求める。
両親が空っぽのこの家を、俺は来年には出て行く事にした。
進路は何となく決めてあってよかったとは思う。

1つだけ、懸念があるとしたら
『あついー、しぬー、もう無理。チャリが熱い!!』
このやかましい彼氏の事だけだと思う。

喚き散らした後には、ちゃんと自転車を車庫に停めなおしている姿が
妙に可愛かった。
「おはよー、朔。今日もあっついなぁ。お前さぁ…帽子とかないワケ?」
『…よう、央未。あー、そういえば玄関に真っ黒いサンバイザーあったけど。する訳無いだろ。』
「まぁね、ソレしてきたら笑うわ。少し休んでからゆっくり始めようぜ。」

まだ朝の9時前。朔は朝からお勤めに出たりもしてるから、ちょっともう疲れてそう。
8月にも入って、暑さが本気出して来てるから早めに集まって
涼しい内にやる事をやっておく。

『央未、あんまり俺にくっつくなよ?』
「なんで?」
『…いや、汗臭いかもしれんから。』

朔らしからぬ?気の弱そうな発言に俺は笑う。
「汗出るのはしょうがないよ。そんな気になるなら、シャワーくらいしてけばいいよ。」
というか、高校生の癖に作務衣に頭にタオル巻いてるって
やっぱり朔くらいだと思うんだよね。
『顔は、ちょっと洗いたいかも…洗面所借りていい?』

半分は自分の家みたいに思ってるかと思いきや
朔はちゃんと、そういう所はわきまえている。

「いいよ。じゃ、タオル持ってくね。」
『ん、タオルは一応替えのがある。悪いな。』

案外、神経質と言うのか。細やかな気遣いもしてくれるから
親しくなっていたとしても、変わらないで居てくれる朔がやっぱり
良いな、と思う。

家の中に朔を通して、そのあしで洗面所に行く。
『相変わらず、綺麗な家だよな。生活感が無くて』
「まぁ、ちゃんと生活してるのは俺だけだからな。両親は海外行ったり、研究所にほとんど暮らしてるようなもんだし。」
『…寂しくなる前に、呼べよ?』

さわさわ、と朔が俺の髪を撫でた。
朔は洗顔を終わらせて、自分のタオルで顔を拭いている。
じーっと、朔の顔を見つめてる。
朔の髪の生え際が好きだなぁ、とか。
何してても、イケメンでため息が出そう。

「肌まで綺麗じゃん。」
『あ、そう?…ニキビとかには悩んだ事無かったかもな。』
「俺は、チョコ食べ過ぎると…ヤバイかも。」
『良くない油は摂らない方がいいみたいだしな。』
「へぇ~、朔でもそういうの気にするの?」
『母親がな、ま…うるさいんだよ。』

やっぱり、朔は大事にされてるのを感じる。
俺は、大事にされてない訳ではないだろうけど。
若干、このまま両親が帰って来なかったら…と時々考えたりする事もある。

「ココ来るだけでも大変だったでしょ。少しお茶してからにしよう。」
リビングに戻り、キッチンでお湯を沸かしていると
朔が空調の効いた部屋に入るなり、
『温度差、凄いよな。』
「そう、だから温かいもの淹れるよ。」
『このあっついのに、ホット?』
「うん、エアコンで結局冷えるからね。ハニーホットレモン。」
ソファに座る朔の前に、淹れたてのカップを差し出す。

朔は、ジト目になって
『マジで~?…あ、でも良い匂いがする。』
「美味しいからさ、ゆっくり飲んでみてよ。熱いから気を付けて。」
しずかにローテーブルの上に置き直して、朔の隣に座る。

『なんか、央未といると絵本の中みたいな暮らしが出来そう。』
「絵本かぁ、今でも読んだりするけど。大きなパンケーキとか、憧れない?」
『俺は、そうだなぁ…まったりした暮らしよりも、まだ見ぬ何かを追いかけたりする方が好きかな。』
朔らしい答えに、俺は思わず笑っていた。
合わせてくれなくてもいい、でもなんとなく
邪魔にならない所で、朔の支えになれたらいいなぁと思う。

「正直で良いと思う。」
『でも、必ず帰る先は必要だから。船は港へ帰るものだろ?』
「…朔のは、どうだろうね。」
少し意地悪かもしれない。けど、時々は分かりやすい言葉が
欲しくなる時もある。

『俺も、きっと変わらないと思う。』
肩が、触れあって脇から抱き寄せられた。
さっき言ってた、汗の匂いなんてしやしないし。
いつもの、安心する朔の匂いで心が満たされていく。

このまんま、何もかもを放り出して朔と2人だけの世界になったらいいのに。
ドキドキしながら、目を閉じるとキスをされる。
くっつくのさえ躊躇われるような暑さの事なんか忘れて
薄く開いた唇から、朔の冷たい舌が挿し入れられる。

まだ、一線は越えてないから一度朔のたがが外れたら制御できるのかとか
色々と気がかりで。卒業するまではお預けにしている。
抱き寄せられた腰に、よからぬ圧もばっちり感じている。
これ以上は、ヤバイ。

そーっと朔を押し返すと、あからさまに不機嫌そうな顔をされた。
『言いたい事は、何となく分かるけどさ…。』
よしよし、と朔の頭を撫でる。
「央未に弄ばれてる…。」
えぇ、そんなつもり全然無いし。

朔は、立ち上がってリビングを出掛ける。
「帰るの?」
『…トイレ。』

あ、と。
何となく意味を察して俺は妙な罪悪感を覚えた。

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