【DESERTの憂鬱・番外】お前なんか、好きになるか

あきすと

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⑧要との再会

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「お前、もストーカーしてんのかと思った。偶然?」
いつもどこか掴み処の無い要は、本当何を考えているのか分からない。

要は背中にかけたリュックで、
『まさか。そんな暇じゃないし。』
「荷物多くね?」
『ん…そうだよ。ちょっと、色々ね。』
相変わらずの曖昧さが、今は心がモヤモヤしてくる。

なんで、見てみぬ振りもしてくれないのか。
気を持たせてしまうんじゃないかと、思わないのか?

「彼氏と、…璃端とはまだ続いてるんだろ?」
『うん。玲の事教えてくれたの、璃端なんだよ。わりと、
真剣に心配してた。』

複雑そうな表情で、要は笑っている。
ちょっと意外だった。
まさか、あの高飛車そうな璃端が?
わざわざ要に、俺の事を。

余裕なのか。まー、そうだろうな。
「はぁ、人格までイケメンだね。それは、どうも。お陰様で
歩き回れるほどには回復したって伝えてくれ。」

『会いに来たのは、俺の意思だけど。変にひねくれんなよなー。俺はまだ…
玲の事は友達だと思ってるけど。』

は?
は?
はぁーーー!?

おいおい、要は俺に喧嘩を売りに来たのか?

散々振り回されて、しまいには璃端にほぼ脅迫まがいの
事までされたってのに。

「お前ら、キチクだな。さすがに引くわ~。」
意図が見えない。
要がのこのこと俺に会いに来ることも、なんか気に入らない。
『玲さ、今は誰とも付き合ってないんだろう?』

説明もしたくない。
考えなくとも想像はつくだろうに。
「俺を構わないでくれ。もう、しばらくは誰も相手したくないんだわ。」

要はきゅっと眉根を寄せつつ、うつむいている。
『こんな話、言いづらいんだけど。あのさ、ちょっと話せる?2人で話したいんだ。』
「…要、お前は璃端と何を企んでるんだよ。」

恐い。単純に人間不信だ。
口では何とでも言える。簡単に信用すれば、簡単に裏切られる気がする。
『俺さ、信じてもらえないかもしれないけど…玲の事すごく心配して、しばらく璃端とも
事情を説明して会うの控えてたんだ。』

この本庄要という生命体は、何を言い出すんだろう。

頭の中で、なんかよく分からんけど宇宙みたいなものが
爆発した気がした。

んん?ちょっと、意味が分からなかった。

待ってくれ、ここでする様な話なのか?
「分かった、話は聞くから。ちょっとどこかの店でも入ろう。」

頭がくらくらしてくる。
なんで、要が泣きそうになって俺を見ているのかも
理解できないでいる。

要をショッピングセンター内の喫茶店に連れて行く。
歩くのが以前より遅くなった俺を見て、何か言いたげにするのも癪だった。
要に手を借りたくも無かった。

でも、心配して来てくれたんだよな?彼氏がいるのに、わざわざ。
ぶっ飛んでるなー。

昔、何度か要とも来た事がある喫茶店だ。少し懐かしくて
全然変わらない外観と内装に心が揺れる。

『ここのワッフル、美味しかったなぁ…玲も食べるよね?』
「ぇ、あぁ…。」
案内された席で、メニュー表を俺に向けてくれて要は子供みたいに
上機嫌だ。

『懐かしい、じゃあ玲が頼みたいの当ててみようか?』
さっきとは、うって変わって要はニコニコして対面する俺を
見つめて来る。

久し振りだから、かなり耐性が薄らいでいる。
「駄目だ…可愛い。くそ、こんな奴~!!」

要は一瞬ひるんで、すぐに
『ちょろいなぁ。まぁ、でもその方が俺も言いやすいんだけど。』
本題に入る前にオーダーを通してもらって、気を取り直す。

「まさか、璃端と上手くいってないのか?俺がどうなろうとお前ら2人には
関係ないはずだろう。」
冷静に、考えて話さないといけない。
でないと、要の雰囲気に飲まれてしまう。

『全然、そんな事はないよ。ただ、申し訳ないなぁとは思うんだけど。その…、玲の一件は
俺も結構ダメージが大きかったみたいで。本当は、病院も行ったんだけど。きっと、玲が知ったら
絶対に怒るだろうなって思って。連絡だって取りたかったけど、…うぅ、俺今回の事が無かったら
気が付かなかったかも。』

薄々、感じてはいたけど。
なんかこのまま、押されて流されそうで背筋が寒い。
「話の雰囲気としては…なに、俺に会いたかったってだけだろう?もう、気が済んでくれよな。」
『……玲、冷たい。』
「お前は、付き合ってるのに…璃端が居るのに良いのかよ?」
『了解はとってある。璃端も俺の落ち込みように心配はしてくれてたから。』

訳が分からん。このバカップルに何かしら巻き込まれそうな気がして
ひたすらに警戒する。

要は運ばれて来たワッフルに、メープルシロップを掛けながら
『彼氏が2人居てもさ、お互いが納得してれば問題ないと思うんだよね。』
にっこりと、要はワッフルに添えられたクリームをフォークで
掬って口へ運ぶ。

しばらくの沈黙なのか、余韻なのかはどうでもいい。

俺は、初めて自分が凍り付いた瞬間を味わった。
刺された時も衝撃だったけれど、要の爆弾発言の威力は
今でもすごかった。

「俺、女のビッチも知り合いには居たけどさ。お前みたいなのは本当に
初めてだわ。」

璃端に少し、同情してしまうわ。
『好きなんだよ。比べられないし、選べなかったんだよ。急には無理なら…月に何回か
会うとか。そういうのは無理?』

言葉が上手く出てこなかった。
俺は、自分でも優柔不断で流されやすい部分もあるとは自覚してる。

「お前、璃端にはこの案?話したのかよ。」
『…うん。話したよ?なんか、驚かれたね。』

いやぁ、璃端さん。本当にお気の毒すぎるって。

俺は今、とんでもない悪魔を相手にしている気分だ。
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