【DESERTの憂鬱・番外】お前なんか、好きになるか

あきすと

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④案外真面目に

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バイトを終えて、となりのフロアーにあたる
区画に漫画喫茶はある。
アミューズメント施設とは別で求人があったのを覚えている。

連絡は既に要から来ていた、
これから店を探すのは少しだけ
億劫ではあるけど。
せっかく待っていてくれた要に
今日は晩飯くらいなら、おごってもいい。

個室から出て来た要と、通路ではち合った。
「…お前まさか、寝てた?」
『ふぁ…っ…ンん…ねむ~い』

相変わらずのマイペースだな。
「寝癖ついてるんだよ、お前はもー…」
クシャクシャと髪を撫でる。
大人しくて、ぼーっとしてらぁ。
『だって、夜はこれからなのに…』

諦めて無いんだな?
とりあえず明日はバイトも無いから
多少遊んではやれるけど。
「飯食おう?腹減ってんだろ少しは」
要は、大きな袋を持ったまま頷いた。
『ちょっとだけドリンクバー飲んで、メニューも色々あったけど我慢だったよ。今時の漫画喫茶は充実してるね。』

「で、何食べたい?何系…?」
『んー、匂いがつかないものがいい、かな。』
はぁー、お前は女子か!
「なるほど…、じゃあ和食とかどうだよ?定食屋さんだな。」
実家に帰ってるんなら、マトモな食生活にありつけてはいるんだろうが。

『良いよ、じゃあ玲のオススメのお店につれてって。』
可愛い事言うよなぁ、連れてってだなんて。
「…お前、彼女ヅラすんなよ?違うんだからな。」
駐車場まで歩いて行き、俺の車の助手席に
要が乗る。

『気になるんだったら、後部座席に行くよ?』
「あー、もう良いって。めんどくせー」
要が女でも、男でも俺は単純な答えを
見て見ないふりする。

コイツを隣に乗せて、運転してる自分も
そう悪くは無い。
ちら、ちらと視線を要から感じては
言葉を発したくてうずうずする。

『玲、ありがとう。』
「なんでだよ」
『俺ね、まだやっぱり…寂しくて。ダメだなぁって思いながらも玲の優しさに甘えちゃう。』
「でも、寂しさが消えるまでくらいなら…付き合ってやれるかもな。」
『……うん。』

忘れかけてたけど、要は失恋の傷を引きずっている。
優しくしてやりたい、でも同時に
突き放したくもある。


小さな定食屋の駐車場に車をつけて
先に要を降ろしてから
入店をしたが、あと一時間もしない内に
閉店時間だった。

それぞれに注文をして、料理が来るまでの間
に要と話す。
「帰り送ってやるよ。実家だよな?」
『…そ、だけど…』
「それともアパートに?」
『や、あっちはもう…行かないし。』
「まさかお前、俺の方に来ようとしてないか?」

要は、顔を上げた。まっすぐに
俺を見つめて頷く。
「やっぱり…、お前なぁ~」
『泊めて、欲しいなぁ。』

小さな声で言う癖に、テーブルの下では
俺の脚を自分の脚でつついてくる。

「ビッチじゃん、お前マジで…」
『なっ、まだ…だよ。何も無いのにそんな、酷い。』
いやいや、俺は何もなくなかったんだよ。
おかしな夢を見たり、
要をオカズにしてしまったりと
後ろめたい事ばかりが思い出される。

「夏休みだから遊びたい気持ちは分かるけど…不純同性交遊はいかがなものかと。」
『不純なの?玲は。俺はちゃんと…気持ちがあるのに。』

こんなとこで話す内容では無いな。
食事が運ばれて来て、手を合わせてから
食べ始める。
同じタイミングで出された事に
安堵した。

しかし、よく聞いてみないと要の意図は
分かりにくい。
家でゆっくりと聞き出してみるのも
手ではある。

『美味しかったね、また来たいなぁ。』
会計の時に要の分も払おうとすると
露骨に嫌そうな顔をされた。

良いんだよ、そのくらいは。
「満足してもらえたなら、それで充分。」
『奢ってくれてありがとう、ご馳走様でした。』
折り目の正しいお辞儀をされて
悪い気はしなかった。
「お前が彼女だったらな、とは思ったよ。」

『え…?』
素直で可愛げがある。
極めて自然体だ。
「お前は俺とどうなりたいのか、家に帰ってから聞く。どう考えてるのか知りたい。」

また要を隣に乗せて、帰路に着いた。

要の本心を見せて欲しい。
でないと近頃の俺は、要の事ばかり
考え始めてる。

『そうだよな、ちゃんと話さなきゃ。』

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