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①弄ばれてる
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中学時代から、なんとなく気になってはいた。
気の迷いかと思った。し、まさか?とごまかす事で逃げて来た。
なのに急に呼び出されて、本当に焦った。
異性との付き合いは、そこそこ経験はあったけれど。
同性にまで手を出す男だったとは、自分でも驚いている。
とりあえず、横に寝ているのは本庄要。
中学が同じで、たまたま大学で再会した。
妙に、綺麗…と言うよりは前よりも少しだけ瞳に精気が戻っている気がした。
俺の終わっている貞操観念を知ってて、要は俺を誘惑してきた。
コイツは、俺が気持ちをまだ持っている事に多分気付いてる。
『上か、下かくらいでしょ?どーせ玲なら割り切れるんじゃん。でなきゃ、股掛けない。』
顔に似合わない、下品な表現。
勝手に俺の家の前で、偉そうに煙草吸いながら笑ってんじゃねぇ。
なんて、言える訳もない。
集中講義が終わった、正午過ぎ。
俺はうかつにも、本庄要と言う悪魔を自分の部屋の中へと
招き入れてしまった。
エアコンはタイマーで既についている。
『ぁはっ、すずし~…用意が良いね?さすがはヤリ「お前な~…マジで勘弁しろよ。何?欲求不満?」』
くるりと上がり込んだリビングで、小さく一回転をしてから要は
『どうだろう?ただ、分かんなくてさ。』
急に真面目なトーンに変わった。
「話なら聞くけど…。」
『アイスかジュース欲しいなぁ。』
嗚呼、神様…一刻も早くこの悪魔を部屋から追い出させてください。
俺は、椅子の上にデイパックを下ろして冷蔵庫を開ける。
『メロンクリームソーダが良いなぁって、思わない?』
もう、会話にもなってなくて呆れて来た。
「ねーよ…。あ、色ついてないサイダーと、バニラのアイスならあるけど。」
『ハイ、来た~』
ほらな、結局俺は要と居るとなんやかんや楽しめる。
単純に、嬉しそうにしてるトコ見てると可愛い奴だとは思う。
せめて、雰囲気を出したくて琉球グラスに静かにサイダーと
バニラアイスを添えてみた。
少し細長いコンビニで貰って余ってたスプーンをつけて要の座るテーブルに
出してやる。
『あ~…良いね、コレ。綺麗、玲ってこういう所がきっとモテるんだろうなぁ。』
ふわふわ笑ってる要は、穏やかで何となく愛おしい。
「これで、解消してくれよな?要の欲求不満。」
目を伏せていた要と、一瞬視線が絡む。
もったいない奴だ。
異性の気配は今のところしない。
でもまさか、あのモデル…ri-haと高校時代に付き合っていたなんて
夢みたいと言うか。
あれ?と思う瞬間は実は今までに何度かあった。
妙に要は俺に距離感が近い。
俺に触れる事にも触れられる事にも、否定的な反応は見た事が無かった。
『ふわしゅわ…ね、さくらんぼがあったらなぁって思ってる?』
「ホントだな、缶詰で良けりゃ今度買っとくわ。」
『…玲、はさ…女の子と今は何人付き合ってるの?』
どんな質問だよ!
「ぇ?!あ~そういう関係なのは2人くらい。」
『この、クズ~』
「まぁでも、恋愛じゃないし。俺の…割り切ってるからな。もう、スポーツだよ。」
要は何か言いたげにしつつも、バニラアイスをすくって食べている。
『それ、気持ちいいからしてる?お金は…絡まないんでしょ?』
「お金では、やってない。どっちかと言えば女の子の深層の部分ってのに、たどり着くために少し協力してる感じかな。」
『しんそうの部分?』
「SEXで、ちゃんと気持ちよく解放されてみたい。とか、そういったちょっとメンタリティの解放のお手伝いかな。」
ぱち、ぱちと瞬きを繰り返して要は笑う。
『俺なんて、まだそんな性交渉もした事ないってのに。玲はすごいね、誰かのお手伝いまで出来ちゃうなんて…』
嫌味で言ってないだけに、要の言葉がぐっさりと心に刺さる。
コイツの遠慮のない本心は、時々俺を追いつめる。
「まだ、気にしなくていいと思うけど。ちゃんと好きな人見つけてからでも充分だって。」
変な慰めではある。けど、俺の初体験は確かに早かったから。
他に言い様が無かった。
『玲なら分かるでしょ?心の状態と体の状態って必ずしもイコールじゃない。…衝動って、だから怖いの。』
「お前さ、俺に何を望んでるワケ?」
ごく、とサイダーを嚥下する音が要からやけにハッキリと聞こえた気がした。
『俺ね、多分…玲なら飲み込んでしまえそう。』
俺は、今日この日に友人が熱さで頭がイカれてしまったんだと
思い込む事にした。
黒目と白目の間のあわいが優しくて、水色がかった白目には
根拠のない純粋さを勝手に感じていた。
ぷくぷくと、サイダーのあぶくが消えていく。
この真夏に真っ白い半袖の、バンドカラーのシャツを着た
友人はにこりと笑って、俺の視界を満たしていく。
気の迷いかと思った。し、まさか?とごまかす事で逃げて来た。
なのに急に呼び出されて、本当に焦った。
異性との付き合いは、そこそこ経験はあったけれど。
同性にまで手を出す男だったとは、自分でも驚いている。
とりあえず、横に寝ているのは本庄要。
中学が同じで、たまたま大学で再会した。
妙に、綺麗…と言うよりは前よりも少しだけ瞳に精気が戻っている気がした。
俺の終わっている貞操観念を知ってて、要は俺を誘惑してきた。
コイツは、俺が気持ちをまだ持っている事に多分気付いてる。
『上か、下かくらいでしょ?どーせ玲なら割り切れるんじゃん。でなきゃ、股掛けない。』
顔に似合わない、下品な表現。
勝手に俺の家の前で、偉そうに煙草吸いながら笑ってんじゃねぇ。
なんて、言える訳もない。
集中講義が終わった、正午過ぎ。
俺はうかつにも、本庄要と言う悪魔を自分の部屋の中へと
招き入れてしまった。
エアコンはタイマーで既についている。
『ぁはっ、すずし~…用意が良いね?さすがはヤリ「お前な~…マジで勘弁しろよ。何?欲求不満?」』
くるりと上がり込んだリビングで、小さく一回転をしてから要は
『どうだろう?ただ、分かんなくてさ。』
急に真面目なトーンに変わった。
「話なら聞くけど…。」
『アイスかジュース欲しいなぁ。』
嗚呼、神様…一刻も早くこの悪魔を部屋から追い出させてください。
俺は、椅子の上にデイパックを下ろして冷蔵庫を開ける。
『メロンクリームソーダが良いなぁって、思わない?』
もう、会話にもなってなくて呆れて来た。
「ねーよ…。あ、色ついてないサイダーと、バニラのアイスならあるけど。」
『ハイ、来た~』
ほらな、結局俺は要と居るとなんやかんや楽しめる。
単純に、嬉しそうにしてるトコ見てると可愛い奴だとは思う。
せめて、雰囲気を出したくて琉球グラスに静かにサイダーと
バニラアイスを添えてみた。
少し細長いコンビニで貰って余ってたスプーンをつけて要の座るテーブルに
出してやる。
『あ~…良いね、コレ。綺麗、玲ってこういう所がきっとモテるんだろうなぁ。』
ふわふわ笑ってる要は、穏やかで何となく愛おしい。
「これで、解消してくれよな?要の欲求不満。」
目を伏せていた要と、一瞬視線が絡む。
もったいない奴だ。
異性の気配は今のところしない。
でもまさか、あのモデル…ri-haと高校時代に付き合っていたなんて
夢みたいと言うか。
あれ?と思う瞬間は実は今までに何度かあった。
妙に要は俺に距離感が近い。
俺に触れる事にも触れられる事にも、否定的な反応は見た事が無かった。
『ふわしゅわ…ね、さくらんぼがあったらなぁって思ってる?』
「ホントだな、缶詰で良けりゃ今度買っとくわ。」
『…玲、はさ…女の子と今は何人付き合ってるの?』
どんな質問だよ!
「ぇ?!あ~そういう関係なのは2人くらい。」
『この、クズ~』
「まぁでも、恋愛じゃないし。俺の…割り切ってるからな。もう、スポーツだよ。」
要は何か言いたげにしつつも、バニラアイスをすくって食べている。
『それ、気持ちいいからしてる?お金は…絡まないんでしょ?』
「お金では、やってない。どっちかと言えば女の子の深層の部分ってのに、たどり着くために少し協力してる感じかな。」
『しんそうの部分?』
「SEXで、ちゃんと気持ちよく解放されてみたい。とか、そういったちょっとメンタリティの解放のお手伝いかな。」
ぱち、ぱちと瞬きを繰り返して要は笑う。
『俺なんて、まだそんな性交渉もした事ないってのに。玲はすごいね、誰かのお手伝いまで出来ちゃうなんて…』
嫌味で言ってないだけに、要の言葉がぐっさりと心に刺さる。
コイツの遠慮のない本心は、時々俺を追いつめる。
「まだ、気にしなくていいと思うけど。ちゃんと好きな人見つけてからでも充分だって。」
変な慰めではある。けど、俺の初体験は確かに早かったから。
他に言い様が無かった。
『玲なら分かるでしょ?心の状態と体の状態って必ずしもイコールじゃない。…衝動って、だから怖いの。』
「お前さ、俺に何を望んでるワケ?」
ごく、とサイダーを嚥下する音が要からやけにハッキリと聞こえた気がした。
『俺ね、多分…玲なら飲み込んでしまえそう。』
俺は、今日この日に友人が熱さで頭がイカれてしまったんだと
思い込む事にした。
黒目と白目の間のあわいが優しくて、水色がかった白目には
根拠のない純粋さを勝手に感じていた。
ぷくぷくと、サイダーのあぶくが消えていく。
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友人はにこりと笑って、俺の視界を満たしていく。
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