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第3章 王都

陛下と殿下

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「我の息子と結婚する気はないか?」

陛下がそう言い放った瞬間謁見室は静寂に包まれた。実際陛下が入室した時から口を開く者はなく、静かだったのだが、雅人とデイヴィスは思考が停止したような感覚に陥った。
よく見れば周りの重鎮たちは驚いていないように見える。雅人はともかく、デイヴィスも知らされておらず目を見開いている。

「………………は?」

かろうじて雅人の口から出たのは声とは言えないものだった。

「……いやかな?」

殿下が困ったように笑って雅人を見る。

……いや?何が?殿下と結婚すること?誰が?俺?いやいやいやいや、聞き間違いだな!さすがに!はは、俺ってば耳が悪いんだなぁもう。

「すみません。聞き取れなかったようです。もう一度お願いしてもよろしいでしょうか?」

慌てて雅人は陛下に聞く。しかし、それに答えたのは殿下だった。

「マサト、私と結婚してくれないかな?生涯大切にすると誓う。」

「いや、あの…………。」

「我が息子は誠実だし、マサト1人を愛すと思うぞ?うむ、息子が嫌なら我の側室になるか?マサトなら大歓迎だ。」

「え?!側室?!」

「父上!マサトは私の妻となるのです。マサトを側室になど許しませんよ。」

「はは、悪かった。まぁ、マサトがなりたいと言うならいつでも待ってるぞ。」

「父上!」

目の前で繰り広げられる親子の会話に雅人とデイヴィスは固まっている。

「……発言をよろしいでしょうか、陛下。」

先に動き出したのはデイヴィスだ。

「許可する。」

「マサトはいきなりのことで驚いています。それに、我々がマサトを保護してからまだ1週間ほどしか経っていません。記憶が無いようですし、陛下、殿下の御名前すら知らないかもしれません。」

「おぉ!てっきり忘れてたな!マサト、我はこのヒールトン王国国王のルーヴェント・ヒールトンだ。」

「私はこの国の第2王子、シュバルツ・ヒールトンだよ。」

「ま、マサトです。」

ようやく雅人の意識も覚醒する。返事をした雅人に満足気に頷いて、シュバルツが雅人の方へ歩いてくる。雅人の前まで来て雅人の手をとるとそのまま引き上げて立たせた。

「マサト、私たちは今初めて会った。だが私は君が、マサトが好きだよ。どうか私の生涯の伴侶になってくれないかな?」

「え……だ、だが……。」

「殿下、マサトも混乱しているようです。今日はこのくらいで休ませた方がいいのではないでしょうか?」

横からデイヴィスがシュバルツに言う。はっきりとした返事を貰えずやや残念そうだが、今日は部屋に戻ることになった。

「マサト、君はまだ私のことを好きではないだろう?でも私は諦めないよ。城にいる間は口説かせてもらうね?」

雅人は耳元で囁かれるその言葉にほんのり頬を染めてしまう。

「はは、シュバルツ、デイヴィスもライバルのようだぞ?」

「なっ…………!」

ルーヴェントの言葉にシュバルツはデイヴィスに目を向け口角を上げた。デイヴィスは苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「……では退室させていただきます。」

雅人はデイヴィスに手を取られ謁見室を出た。後ろではドアがバタンと閉まる音が響いていた。
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