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本編
錬金術師になった
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「え、なに、この釜……。」
朝目が覚めると、家の前に釜がいた。いや、あった。誰かが捨てたのか?それにしては立派な釜だ。
少し大きめの真っ黒な釜で丸いフォルムが不思議な雰囲気を醸し出している。
「魔女の鍋みたい……。」
とりあえず横を素通りして歩く。しばらく歩いてからふと気配を感じて後ろを振り返った。
釜がいた。
「……え?」
もう少し歩いてみる。
ちらりと後ろを見ると釜がついてくる。
「は?え?なにこれ?!」
急に怖くなって走り出した。同じスピードで釜が追いかけてくる。
「うわうわうわうわ!怖!なんで追いかけてくるの?!」
全速力で走る俺の後ろを遅れることなくついてくる釜。恐怖でしかない。
「だ、誰か!助けてぇ!」
俺は平凡な家庭に生まれた。両親からは十分に愛を注がれ、俺がちょうど18歳になった時、両親が亡くなった。
ちなみに1週間前のことである。それから俺が前世を思い出したのが3日前。
前世での名前は藤原祐樹。ここではただのユウキ。平民だからね。前世と名前が同じなのは驚いたけど。
前世でも平凡な人生を送った。何かに特別詳しいという訳でもないし、今までを振り返ってみて、転生チートで勇者だとかそういうのもないだろう。
今までは普通だと思っていたけど、自分のステータスが見れたり冒険者ギルドや商業ギルドがあるのはテンションが上がった。いずれ登録しよう。
そして俺は鏡を見て衝撃を受けた。いや、生まれた時から見慣れた顔ではあるけれど、思い出してみれば前世も同じ顔だった。
なかなか成長しないなとか思ってたけど、俺は一生童顔だったよ……。
幸いこの世界では18で成人となる。18でひとりぼっちになった俺だけど、色々な手続きは俺ひとりでできた。
さて、このまま家に住むか、家を売ってお金にするか、考えていたのが1日前。
釜に追いかけられたのが今日。
結局、釜が諦めてくれなそうなので拾ってしまった。
拾った瞬間、ジョブが錬金術師になった。
「錬金術師……。」
初めて聞いたジョブに驚きを隠せない。いや、前世ではファンタジーの世界ではもちろん聞いたことがあるのだがこの世界ではなかった。
「ねぇ、お前って錬金釜なの?」
あ、やばい。街中で変な釜に話しかける変な人になってしまった。
家に帰ってしばらく眺める。
「錬金術師ねぇ……。」
この世界では初めて聞くし、動く釜はなんだか怖い。うーんと唸ってからもう一度釜を小脇に抱えて外に出る。
向かうのは街の外の廃棄場だ。
あぁ、紐持ってくればよかった。絶対追いかけてくるよな、この釜。
廃棄場に着くとちょうどいい長さの紐を見つけた。
その紐で捨てられていた重そうなベッドに括りつける。
そのまま走って家に帰った。途中で振り返ったが、さすがに釜もついてこれないようだった。
「はぁ、怖かった……。」
家に入ってステータスを開く。だが、名前の下には未だ錬金術師と表示されていた。
寝てたら直るか……。この一週間、分からないものだが、色々と消耗していたらしい。俺は深い眠りに落ちた。
朝目が覚めてカーテンを開ける。
釜がいた。
「呪いの釜かよ……。」
こうして俺は錬金術師として生きていくことに決まった。
朝目が覚めると、家の前に釜がいた。いや、あった。誰かが捨てたのか?それにしては立派な釜だ。
少し大きめの真っ黒な釜で丸いフォルムが不思議な雰囲気を醸し出している。
「魔女の鍋みたい……。」
とりあえず横を素通りして歩く。しばらく歩いてからふと気配を感じて後ろを振り返った。
釜がいた。
「……え?」
もう少し歩いてみる。
ちらりと後ろを見ると釜がついてくる。
「は?え?なにこれ?!」
急に怖くなって走り出した。同じスピードで釜が追いかけてくる。
「うわうわうわうわ!怖!なんで追いかけてくるの?!」
全速力で走る俺の後ろを遅れることなくついてくる釜。恐怖でしかない。
「だ、誰か!助けてぇ!」
俺は平凡な家庭に生まれた。両親からは十分に愛を注がれ、俺がちょうど18歳になった時、両親が亡くなった。
ちなみに1週間前のことである。それから俺が前世を思い出したのが3日前。
前世での名前は藤原祐樹。ここではただのユウキ。平民だからね。前世と名前が同じなのは驚いたけど。
前世でも平凡な人生を送った。何かに特別詳しいという訳でもないし、今までを振り返ってみて、転生チートで勇者だとかそういうのもないだろう。
今までは普通だと思っていたけど、自分のステータスが見れたり冒険者ギルドや商業ギルドがあるのはテンションが上がった。いずれ登録しよう。
そして俺は鏡を見て衝撃を受けた。いや、生まれた時から見慣れた顔ではあるけれど、思い出してみれば前世も同じ顔だった。
なかなか成長しないなとか思ってたけど、俺は一生童顔だったよ……。
幸いこの世界では18で成人となる。18でひとりぼっちになった俺だけど、色々な手続きは俺ひとりでできた。
さて、このまま家に住むか、家を売ってお金にするか、考えていたのが1日前。
釜に追いかけられたのが今日。
結局、釜が諦めてくれなそうなので拾ってしまった。
拾った瞬間、ジョブが錬金術師になった。
「錬金術師……。」
初めて聞いたジョブに驚きを隠せない。いや、前世ではファンタジーの世界ではもちろん聞いたことがあるのだがこの世界ではなかった。
「ねぇ、お前って錬金釜なの?」
あ、やばい。街中で変な釜に話しかける変な人になってしまった。
家に帰ってしばらく眺める。
「錬金術師ねぇ……。」
この世界では初めて聞くし、動く釜はなんだか怖い。うーんと唸ってからもう一度釜を小脇に抱えて外に出る。
向かうのは街の外の廃棄場だ。
あぁ、紐持ってくればよかった。絶対追いかけてくるよな、この釜。
廃棄場に着くとちょうどいい長さの紐を見つけた。
その紐で捨てられていた重そうなベッドに括りつける。
そのまま走って家に帰った。途中で振り返ったが、さすがに釜もついてこれないようだった。
「はぁ、怖かった……。」
家に入ってステータスを開く。だが、名前の下には未だ錬金術師と表示されていた。
寝てたら直るか……。この一週間、分からないものだが、色々と消耗していたらしい。俺は深い眠りに落ちた。
朝目が覚めてカーテンを開ける。
釜がいた。
「呪いの釜かよ……。」
こうして俺は錬金術師として生きていくことに決まった。
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