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ルークの家

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ルークの家は森から少し離れた、街に程近い場所にあった。2階建ての一軒家で一人暮らしにしては大きめだ。

小さな庭もあり、可愛らしい花や少しばかりの野菜が植わっている。
男の一人暮らしにしては不思議なほど綺麗にされていた。

「一人暮らしなのに綺麗だね。」

「あぁ、庭を作ったりとか掃除とかが好きなんだ。料理も好きでよく作るから野菜も作っている。」

「へぇ、凄いね。俺は料理とか全く出来ないからなぁ。」

「俺がやるから何も心配はしなくていい。ミチルは記憶が戻るまで安静にしていてくれ。」

「さすがに悪いからなんか手伝わせてね。」

とりあえず風呂、ということでさっそくルークが風呂に湯を張りに行った。粘液にまみれたズボンで椅子やソファなどに座るのはさすがに憚られたため、浴室の前で所在無げにいた。

魔法のある世界のため、てっきり風呂も魔法で入れると思っていたが、ルークは浴槽の上の蛇口をひねって湯を出していた。それを見て少し安心する。魔法がつかえないと水も出せない状態だとさすがに困るからね。もしかしたらどこぞのファンタジー小説のように魔法がつかえるようになっている可能性もあるけど。

「風呂はもう少しで沸きそうだ。着替えは俺のだから少し大きいかもしれないがここに用意しておく。風呂に入っている間に飯を作っておくから、ミチルはゆっくり温まってこい。」

「何から何までありがとう。実はおなかもぺこぺこだったんだ。」

そうこうしているうちに風呂が沸いたらしい。俺は簡単に風呂の使い方を教えてもらい、びちゃびちゃのズボンを脱いだ。

風呂は日本で使っていたものと大差はなかった。シャワーがあり、浴槽にはたっぷりのお湯がためられている。シャワーも蛇口をひねれば湯が出てくる仕組みで、戸惑うことなくゆっくりできた。

浴槽につかりながらこれまでの怒涛の展開を頭に思い浮かべる。

あぁ、俺は死んじゃったのか。父さんを一人ぼっちにしてしまった。ご飯食べてるかな。

……なにも伝えられていないのに。母さんが死んでしまってから、父さんが男手一つで俺を18歳まで育ててくれた。母さんが死んだのは父さんのせいじゃないのに、ずっと後悔して自分を責め続けているのも知ってた。

もし、もう一度父さんに会えたらありがとうと伝えよう。18歳まで父さん一人で育ててくれてとても幸せだったと。母さんがいなくて寂しくてつらいことを父さんに聞いたこともあったが、父さんがいてくれて幸せだったと伝えたい。

もしこの世界で死んだら、母さんのいる天国にいけるのかな。俺があと50年くらい生きたら父さんももしかしたらそこにいるかもしれない。違う世界に来てしまった俺が母さんのいる場所にいけるのかはわからないけど、もし会えたらこんな不思議な世界を冒険したんだと伝えたい。

違う世界で温かい湯に入って感傷的な気持ちになっていた。俺はおなかがすいたなぁなんて考えながら湯から上がった。
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