俺の平凡な学生生活は本日終了いたしました。

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本編

秘密の告白

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「どうかしたか?大丈夫か?」

急に立ち止まった俺に、柿本が心配して近寄ってくる。

こっちに来ないでくれぇ……。

「柿本っ!」

柿本を視界に入れた瞬間俺の体は勝手に動いた。


……あれ?今、俺の体ってどうなってんだ?何か人っぽいものを包んでいるような……?

「なっ?!楠野?!」

アレ、オレ、モシカシテ、カキモトニダキツイテル?

いや、これは違うんだ!!柿本!!って声が出なーい!!

「柿本、俺、俺柿本のことっ……。」

ガターンッ!!

動揺した柿本が椅子を倒した。

「うおりゃァァァァ!何勝手なことしてくれとんじゃ、この機械音声がァ!」

今まで自分の意思で動かすことができなかった体がさっきの音がトリガーとなったのか突然動くようになった。

心の中で散々罵倒していた俺はそのまま口からそれが出てくるわけで……。

俺に抱きつかれたかと思えば急に叫ばれてキョトンとしている柿本と、かなりの熱量で叫んだせいで肩でゼイゼイと息をしている俺の間に沈黙が流れ、かなりカオスな状況となっていた。

「……柿本。今日の俺は頭がおかしいんだ。忘れてくれ。じゃあな。」

パシッと音がした。

そろりと下を見ると柿本の手が俺の手首を掴んでいる。

「……説明してもらいたいんだが。」

「…………デスヨネ。」

柿本が俺の手を掴んだまま椅子をガタガタと動かす。

向かい合うようにふたつ並べられた椅子の片方に座り、もう片方に座るように目で促される。

……なんだこの面談みたいな空気は!かなり話しにくいぞ……。

柿本が向かいからじっと俺の目を見つめている。俺は渋々と言ったように最初から事の顛末を話した。

本当の最初からだ。機械音声がいつから聞こえ始めたとか、この時の行動は機械音声によるものだとか。

「じゃあ楠野は……」

「え?」

「楠野は俺のこと好きじゃないのか?そのよく分からねぇ機械音声に操られて今まで俺に話しかけてたのか?」

「え……それは……」

「楠野は少しも俺のこと好きじゃないのか……?」

「違うっ!」

「でも機械音声に言われて俺に話しかけてたんだろ?」

「違う……。好きだよ。好きだけど、駄目なんだ。」

「駄目って?」

「さっきも言ったけど、機械音声が聞こえたら体が操られることがあるんだ。今は対象が柿本だからいいけど、もし対象が変わったら、柿本を傷つけることになるんだ……。」

「……俺は、楠野が好きだ。それにこれから先その機械音声がどうなるか分からないんだろ?」

「でも……」

「俺は、そんな不確かな不安で楠野と一緒にいることが出来ないなんて嫌だ。」

「柿本……」

柿本が俺の腕を引っ張った。そのままスポッと俺は柿本の腕の中に収まる。

「俺と付き合って欲しい、楠野。」

俺は柿本の胸に顔を埋めたままコクリと頷いた。
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