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本編

イケボさん

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はぁ……。やってしまった……。

柿本とまさかあんなことになるなんて……!

しかも、しかも自動モードじゃなくて自分の意思で!!別にしたかった訳じゃないけども……。

さて、柿本がいつも登校してくる時間まで後5分……。辛い……。顔見れない……。

かくなる上は……逃げるしかない!

俺は教室を飛び出し、柿本が登校してくるのとは反対側へ走る。

屋上へと続く階段を少し上がり死角になったところで座り込む。

こんな、逃げてたらダメだってわかってるけど……。どうせ顔合わせなきゃ行けないんだし……。

本日何回目かも分からないため息をつく。

「何かあったの?」

「うひゃぁぁぁ?!」

耳元で囁かれ、思わず叫ぶ。かなりのいい声に腰が抜けそうになったのは秘密だけれど。

「ま、真辺?」

「うん。」

くそっ、イケメンは絶対イケボなのか……!昨日の柿本だってかなり、よかった、し……。

思い出してしまってかあっと頬が赤くなる。

「べ、別に何もないけど?」

「うーん、でも顔赤いし、もしかして体調悪い?」

「い、いや健康だ!と言うよりなんで真辺がここにいるんだよ?」

「今朝からすごい元気なさそうな柿本が、いきなり教室から出ていくから何事かと追いかけてきたんだよ。心配してるの。」

「そ、それはありがとう……?あの、真辺?ちょっと耳元で喋るのやめてもらっていいかな……」

「え、なんで?」

「いや、こんな距離近くなくても聞こえるし。」

「あ、もしかして……」

「な、なんだよ……。」

訳が分からず聞き返すと真辺がさらに耳に口を近づけた。

こ、こいつ!これ耳に口、くっついてんじゃない?!

「俺の声、そんなにイイ?」

「うわぁ!」

がばりと立ち上がって教室に向かって走り出す。

直接耳に吹き込まれた声がゾワゾワする。

なんだよあれ!どいつもこいつも!

いや、柿本は意図的に好感度上げてるから分かるけど、真辺はなんで?!

教室に戻り自分の席に座って机に突っ伏す。

「おはよう、楠野。」

上から聞こえてきた声に身体が固まる。

わ、忘れてたー!教室には柿本がいたんだった!

「お、はよう、柿本。」

「おう。」

お、耳赤い。かわい……ってやばいやばいやばい!俺の思考が何かに侵されてる!

今日まじで熱あんのかな?

予鈴がなり始めてドアがガラリと開いた。

予鈴ギリギリで入ってきた真辺と目が合って、真辺がにやりと笑う。

そんな姿もイケメンだから様になっているんだけど。

とりあえず、機械音声さーん、真辺優気の好感度、分かりませんかー?

あ、ガン無視ね。ま、分かってたけど、分かってたけど!
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