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本編
人間に会いました。
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やっと王都につき、馬車から降りて伸びをする。この3日間ずっと誰かに抱き抱えられていたので全身が固まっているような気がする。おしりは痛くないが。
「わぁ!王都は人がいっぱいだね!」
「あぁ、はぐれるなよ?シーア。」
そう言ってカルロスは僕の手をとった。はぐれない自信はなかったので正直ありがたい。気がつくと反対側の手も握られた。フォレストが繋いでいるようだ。
「おい、フォレストそこ変われ。」
「何故ですか?僕が先に繋いだんです。いくら兄上でも変わりませんよ。」
エーヴェンが羨ましそうにフォレストとカルロスを見る。
「エーヴェンお兄ちゃん!後で僕と手を繋いでくれる?」
「……!!あぁ、もちろんだ。」
しっぽが揺れ、顔も緩んでいることから喜んでいることが分かって、僕もくすぐったい気持ちになる。
改めて周りを見回してみる。王都と言うだけあってクレセントと比べるまでもなく獣人が溢れていた。みんなこちらをちらちら見ながら通り過ぎて行く。
……パパたちが王都に来るの珍しいのかな?あぁ!パパたちみんなとってもかっこいいからみんな見てるのか!
僕はバッと上を向いて家族の顔を凝視する。みんな優しい慈しむような笑顔で僕を見ていた。またどこかくすぐったい気持ちになって、視線を周囲に戻す。ふと一点を見て目をとめた。僕がこの国に来て初めて見た。少し安心する。
「あぁ!パパ!あそこに人間がいる!僕以外の人間初めて見た!!」
「あぁ、そうだな。王都には何人かいるんだ。って、あれはトルムじゃねえか。」
どうやらカルロスの知り合いらしい。エーヴェンとフォレストも知っているようだった。そうこうしていると、向こうもこちらに気づいたらしい。
「やぁ!カルロス!王都に来るなんて珍しいね。おや、こっちの可愛らしい人間の子は君がさらったのか?」
近くで見るその人はとても優しそうな人だった。獣人に比べると華奢だがか弱くはない。爽やかな笑顔を浮かべ僕を見つめてくる。
「初めまして。シーアです。パパに拾ってもらって、パパの息子になりました。」
「うわぁ、可愛いね!俺はトルムだ。カルロスのところじゃなくて俺のところに来ないか?」
「こら!勝手にうちの子を勧誘するな!」
「いいじゃないか。こんなに可愛い子だったら将来が心配だね。」
ふとトルムの後ろに黒猫の獣人を見つけた。アメジストの瞳に見覚えがある。
「あぁーー!」
「?!どうした?シーア、なんかいたか?」
僕は思わず黒猫の獣人を見つめる。
「この獣人さん、僕と前に会ったことあるよね?!」
「ん?ネルと知り合いか?」
僕を見つめてぽかんとしていたネルだが、僕の顔に見覚えがあったらしく少し眉を顰める。
「ネルさん?」
「あぁ、ネルは僕の番なんだ。可愛いでしょ?」
「番!そっか!」
可愛いと言われたネルは実際にはトルムよりも背が高く力がありそうだ。ゆらゆらと揺れるしっぽやピルピル動く猫耳は可愛いと思うが、トルムと並べばトルムの方が可愛く見えるだろう。
「で、どこで会ったんだ?」
トルムが僕に聞いてくる。ネルの方をちらりと見ると顔をぶんぶんと横に振っていた。
言われて欲しくないのかな?どうしようかな……。
僕が答えるのを悩んでいる間にエーヴェンが答えてしまった。
「会ったとしたらクレセントだな。俺と一緒に街に行った時に会ったんじゃねえか?別行動してた時もあったからな。」
「へぇ、クレセントね。」
ちらりとトルムがネルを見る。若干ネルの顔色が悪い。
「そっかぁ。急にいなくなったと思ったらそんな辺境まで行ってたんだね。これは、お仕置かな?」
「そ、それは!悪かったよ、トルム。で、でもほら、俺にも休みが必要というか、か、体が持たないというか!!」
ネルが青くなったり赤くなったりしながらトルムに弁解する。そんなネルにトルムがにっこり微笑む。
「じゃあ家に帰ろうか、ネル。」
「おいおい、あんまりネルをいじめるなよ。」
「いじめる?何を言ってるの、カルロス。僕はネルを愛してるんだ。こんなに可愛いのに。」
トルムはとろりと瞳を溶かしてネルの頬にキスをする。ネルは一気に真っ赤になった。
「もう、逃げちゃダメだよ?」
「うん。」
実際、ネルも満更ではないようなのでこれがこの番の愛なんだろう。
「じゃあね!トルムさん、ネルさん!」
「あぁ、じゃあね。シーア。同じ人間同士だし困ったことがあれば俺に聞いてくれ。カルロスにいえば俺に連絡してくれると思うし。」
「うん、ありがとう!」
「気をつけてね。ここじゃシーアのことみんな狙うと思うから襲われないようにね。襲われそうになったら俺に言って。人間の護身術とか教えるから。」
「?うん。分かった。」
そのままネルはトルムに腰を抱かれて歩いていった。
「わぁ!王都は人がいっぱいだね!」
「あぁ、はぐれるなよ?シーア。」
そう言ってカルロスは僕の手をとった。はぐれない自信はなかったので正直ありがたい。気がつくと反対側の手も握られた。フォレストが繋いでいるようだ。
「おい、フォレストそこ変われ。」
「何故ですか?僕が先に繋いだんです。いくら兄上でも変わりませんよ。」
エーヴェンが羨ましそうにフォレストとカルロスを見る。
「エーヴェンお兄ちゃん!後で僕と手を繋いでくれる?」
「……!!あぁ、もちろんだ。」
しっぽが揺れ、顔も緩んでいることから喜んでいることが分かって、僕もくすぐったい気持ちになる。
改めて周りを見回してみる。王都と言うだけあってクレセントと比べるまでもなく獣人が溢れていた。みんなこちらをちらちら見ながら通り過ぎて行く。
……パパたちが王都に来るの珍しいのかな?あぁ!パパたちみんなとってもかっこいいからみんな見てるのか!
僕はバッと上を向いて家族の顔を凝視する。みんな優しい慈しむような笑顔で僕を見ていた。またどこかくすぐったい気持ちになって、視線を周囲に戻す。ふと一点を見て目をとめた。僕がこの国に来て初めて見た。少し安心する。
「あぁ!パパ!あそこに人間がいる!僕以外の人間初めて見た!!」
「あぁ、そうだな。王都には何人かいるんだ。って、あれはトルムじゃねえか。」
どうやらカルロスの知り合いらしい。エーヴェンとフォレストも知っているようだった。そうこうしていると、向こうもこちらに気づいたらしい。
「やぁ!カルロス!王都に来るなんて珍しいね。おや、こっちの可愛らしい人間の子は君がさらったのか?」
近くで見るその人はとても優しそうな人だった。獣人に比べると華奢だがか弱くはない。爽やかな笑顔を浮かべ僕を見つめてくる。
「初めまして。シーアです。パパに拾ってもらって、パパの息子になりました。」
「うわぁ、可愛いね!俺はトルムだ。カルロスのところじゃなくて俺のところに来ないか?」
「こら!勝手にうちの子を勧誘するな!」
「いいじゃないか。こんなに可愛い子だったら将来が心配だね。」
ふとトルムの後ろに黒猫の獣人を見つけた。アメジストの瞳に見覚えがある。
「あぁーー!」
「?!どうした?シーア、なんかいたか?」
僕は思わず黒猫の獣人を見つめる。
「この獣人さん、僕と前に会ったことあるよね?!」
「ん?ネルと知り合いか?」
僕を見つめてぽかんとしていたネルだが、僕の顔に見覚えがあったらしく少し眉を顰める。
「ネルさん?」
「あぁ、ネルは僕の番なんだ。可愛いでしょ?」
「番!そっか!」
可愛いと言われたネルは実際にはトルムよりも背が高く力がありそうだ。ゆらゆらと揺れるしっぽやピルピル動く猫耳は可愛いと思うが、トルムと並べばトルムの方が可愛く見えるだろう。
「で、どこで会ったんだ?」
トルムが僕に聞いてくる。ネルの方をちらりと見ると顔をぶんぶんと横に振っていた。
言われて欲しくないのかな?どうしようかな……。
僕が答えるのを悩んでいる間にエーヴェンが答えてしまった。
「会ったとしたらクレセントだな。俺と一緒に街に行った時に会ったんじゃねえか?別行動してた時もあったからな。」
「へぇ、クレセントね。」
ちらりとトルムがネルを見る。若干ネルの顔色が悪い。
「そっかぁ。急にいなくなったと思ったらそんな辺境まで行ってたんだね。これは、お仕置かな?」
「そ、それは!悪かったよ、トルム。で、でもほら、俺にも休みが必要というか、か、体が持たないというか!!」
ネルが青くなったり赤くなったりしながらトルムに弁解する。そんなネルにトルムがにっこり微笑む。
「じゃあ家に帰ろうか、ネル。」
「おいおい、あんまりネルをいじめるなよ。」
「いじめる?何を言ってるの、カルロス。僕はネルを愛してるんだ。こんなに可愛いのに。」
トルムはとろりと瞳を溶かしてネルの頬にキスをする。ネルは一気に真っ赤になった。
「もう、逃げちゃダメだよ?」
「うん。」
実際、ネルも満更ではないようなのでこれがこの番の愛なんだろう。
「じゃあね!トルムさん、ネルさん!」
「あぁ、じゃあね。シーア。同じ人間同士だし困ったことがあれば俺に聞いてくれ。カルロスにいえば俺に連絡してくれると思うし。」
「うん、ありがとう!」
「気をつけてね。ここじゃシーアのことみんな狙うと思うから襲われないようにね。襲われそうになったら俺に言って。人間の護身術とか教えるから。」
「?うん。分かった。」
そのままネルはトルムに腰を抱かれて歩いていった。
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