ま性戦隊シマパンダー

九情承太郎

文字の大きさ
上 下
28 / 29
第四部 大迷惑編

二十八話 夜明けのシマパンダー(2)

しおりを挟む
 金王八幡宮の階段に辿り着いてから、能代はシマパンダーを座らせる。
 十五分ほど転た寝をして、少し眠気が晴れた頃合いで、黒鉄能代は重要な決断を告げる。

「能代が、シマパンダー三号になる。シマパンダーだけの、新しい民間戦隊を作ろう」

 シマパンダーは、階段から青い空をぼうっと眺めながら視線を渋谷の街並みへ、最後に能代に視線を固定する。

「二号がアレなのにでありますか?」
「他にシマパンダーを名乗りたいという、奇特な人材でもいるの?」

 シマパンダーは、此の三ヶ月で知り合った全ての業界人との関係を省みる。
 数多くのディープな変人が集う業界ではあるが、シマパン力で変身しても構わないと言える人材は、自分も含めて三人しか該当しない。

「確かに、三人だけでありますな」
「三人いれば、民間戦隊の登録が出来る。岸司令も、登録を手伝ってくれるさ」
「ヨコシマ戦隊シマパンダー、でありますな」

 誰も感心しない、致命的なまでにダサい、戦隊名だった。
 気まずい沈黙の後、能代は自分のスカートをチラっとめくって見せる。
 白と黒のシマパンである。

「いや、能代のシマパンは、縦シマだから」
「ならばヨコシマ戦隊は、却下でありますな」

 受けなかった戦隊名には執着せず、シマパンダーは戦隊名を考え続ける。

「魔性戦隊で、どうだろう?」

 能代の提案を、シマパンダーは考慮する。

「自分は魔性という程には…たわわではありますが…」
「充分に魔性だよ。黒髪ロングGカップが魔性でなかったら、日本に魔性は存在しないね」
「う~ん」

 二人でのんびりと神社の階段に座り込んで戦隊名を考えていると、十三夜更紗が私服(白のチューブトップ&黒のエスカルゴスカート)で隣に座り込んだ。
 ドーナッツとスペシャルティーコーヒーを差し入れると、戦隊名の考案に加わろうとする。
 シマパンダーが、やんわりと、お断りをしてみる。

「更紗さんは、本業に専念した方が、天下万民の為だと思うであります」
「更紗の本業は、シマパンダーを不審人物で変態で反社会的なバカヤローだと全国ネットで偏向報道する事だけど?」

 シマパンダーは、此の無表情毒電波女の首をへし折る為にドーナッツを投げ捨てるかどうか五秒思案し、愛と平和と食欲を選んだ。
 人、それを妥協と云う。

 のんびりと三人で新しい戦隊名を考えていると、母親同伴でバス停へ向かう幼稚園児たちが、シマパンダーを指差して無邪気に笑って通り過ぎる。

「まぬけの人だ~」
「まぬけの戦士だ~」
「まぬけシマパンの人だ~」

 母親が子供達を抱き抱えてダッシュして逃げる。
 シマパンダーは、意外と怒っていなかった。

ま性まぬけな性分戦隊にするであります」
 
 変な所に活路を見出していた。
 此のバカの側から離れようとする能代と更紗の腰を抱き止めて、シマパンダーは背中からシマパン状の翼を二枚、広げる。

「シマパン・ウィィィィィィィィィィング!!」
「ダイナミックプロに密告してやる」
「やっていい事と悪い事の区別は付けようよ~」

 両腕に美人二人を抱えたまま、シマパンの怪人は渋谷の空を飛翔する。

「このまま、登録に行くであります」
「離せ~、本業に戻る~」
「推敲しようぜ~、もう少し~」
ま性まぬけな性分は治らないから、いいであります」


 
 シマパンダーというヒーローがいる。
 シマパンの力で戦い続ける、変な戦士だ。
 まぬけな性格で、同業者をしばき倒す事も少なくない。
 それでも君がピンチの時は、手近なシマパンに助けを求めてみるといい。
 きっと彼女は、のこのこと助けに来てくれる。
 呼ぶのが恥かしければ、110番に通報する方がオススメだけど。




    第一部 ま性戦隊立ち上げ編 完
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

女子高校生集団で……

望悠
大衆娯楽
何人かの女子高校生のおしっこ我慢したり、おしっこする小説です

鬼面の忍者 R15版

九情承太郎
歴史・時代
陽花「ヤングでムッツリな服部半蔵が主人公の戦国コメディ。始まるざますよ!」 更紗「読むでがんす!」 夏美「ふんがー!」 月乃「まともに始めなさいよ!」 服部半蔵&四人の忍者嫁部隊が、徳川軍団の快進撃に貢献するチープでファンキーな歴史ライトノベルだぜ、ベイベー! ※本作品は、2016年3月10日に公開された「鬼面の忍者」を再編集し、お色気シーンを強化したイヤんバカン版です。 ※カクヨムでの重複投稿をしています。 表紙は、画像生成AIで出力したイラストです。

百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話

釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。 文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。 そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。 工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。 むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。 “特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。 工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。 兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。 工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。 スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。 二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。 零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。 かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。 ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

処理中です...