ま性戦隊シマパンダー

九情承太郎

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第四部 大迷惑編

二十八話 夜明けのシマパンダー(2)

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 金王八幡宮の階段に辿り着いてから、能代はシマパンダーを座らせる。
 十五分ほど転た寝をして、少し眠気が晴れた頃合いで、黒鉄能代は重要な決断を告げる。

「能代が、シマパンダー三号になる。シマパンダーだけの、新しい民間戦隊を作ろう」

 シマパンダーは、階段から青い空をぼうっと眺めながら視線を渋谷の街並みへ、最後に能代に視線を固定する。

「二号がアレなのにでありますか?」
「他にシマパンダーを名乗りたいという、奇特な人材でもいるの?」

 シマパンダーは、此の三ヶ月で知り合った全ての業界人との関係を省みる。
 数多くのディープな変人が集う業界ではあるが、シマパン力で変身しても構わないと言える人材は、自分も含めて三人しか該当しない。

「確かに、三人だけでありますな」
「三人いれば、民間戦隊の登録が出来る。岸司令も、登録を手伝ってくれるさ」
「ヨコシマ戦隊シマパンダー、でありますな」

 誰も感心しない、致命的なまでにダサい、戦隊名だった。
 気まずい沈黙の後、能代は自分のスカートをチラっとめくって見せる。
 白と黒のシマパンである。

「いや、能代のシマパンは、縦シマだから」
「ならばヨコシマ戦隊は、却下でありますな」

 受けなかった戦隊名には執着せず、シマパンダーは戦隊名を考え続ける。

「魔性戦隊で、どうだろう?」

 能代の提案を、シマパンダーは考慮する。

「自分は魔性という程には…たわわではありますが…」
「充分に魔性だよ。黒髪ロングGカップが魔性でなかったら、日本に魔性は存在しないね」
「う~ん」

 二人でのんびりと神社の階段に座り込んで戦隊名を考えていると、十三夜更紗が私服(白のチューブトップ&黒のエスカルゴスカート)で隣に座り込んだ。
 ドーナッツとスペシャルティーコーヒーを差し入れると、戦隊名の考案に加わろうとする。
 シマパンダーが、やんわりと、お断りをしてみる。

「更紗さんは、本業に専念した方が、天下万民の為だと思うであります」
「更紗の本業は、シマパンダーを不審人物で変態で反社会的なバカヤローだと全国ネットで偏向報道する事だけど?」

 シマパンダーは、此の無表情毒電波女の首をへし折る為にドーナッツを投げ捨てるかどうか五秒思案し、愛と平和と食欲を選んだ。
 人、それを妥協と云う。

 のんびりと三人で新しい戦隊名を考えていると、母親同伴でバス停へ向かう幼稚園児たちが、シマパンダーを指差して無邪気に笑って通り過ぎる。

「まぬけの人だ~」
「まぬけの戦士だ~」
「まぬけシマパンの人だ~」

 母親が子供達を抱き抱えてダッシュして逃げる。
 シマパンダーは、意外と怒っていなかった。

ま性まぬけな性分戦隊にするであります」
 
 変な所に活路を見出していた。
 此のバカの側から離れようとする能代と更紗の腰を抱き止めて、シマパンダーは背中からシマパン状の翼を二枚、広げる。

「シマパン・ウィィィィィィィィィィング!!」
「ダイナミックプロに密告してやる」
「やっていい事と悪い事の区別は付けようよ~」

 両腕に美人二人を抱えたまま、シマパンの怪人は渋谷の空を飛翔する。

「このまま、登録に行くであります」
「離せ~、本業に戻る~」
「推敲しようぜ~、もう少し~」
ま性まぬけな性分は治らないから、いいであります」


 
 シマパンダーというヒーローがいる。
 シマパンの力で戦い続ける、変な戦士だ。
 まぬけな性格で、同業者をしばき倒す事も少なくない。
 それでも君がピンチの時は、手近なシマパンに助けを求めてみるといい。
 きっと彼女は、のこのこと助けに来てくれる。
 呼ぶのが恥かしければ、110番に通報する方がオススメだけど。




    第一部 ま性戦隊立ち上げ編 完
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