21 / 29
第三部 大迷子編
二十一話 爆風のシマパンダー(8)
しおりを挟む
ま性《まぬけな性分》の戦士シマパンダー
VS
牛鬼女帝《ステーキ・エンプレス》バビ・ビロン(姉)
無尽殺刃《ブレード・マンティス》ビバ・ビロン(妹)
只今、大絶賛、膠着中。
シマパンダーは理解している。
ビロン姉の桁外れの剛力と、ビロン妹の規格外の切断能力を。
半日で二つの民間戦隊を壊滅させて、ほぼ無傷という戦力を。
そして…
【極秘戦隊スクリーマーズ 内密回線】
シマパンダー一号「あのう、どうして誰も援護に来てくれないでありますか?」
シマパンダー二号「来ているよ~? 隙を見て、背後から攻撃するから」
シマパンダー一号「呼んでもいない人が来ていたであります?!」
レッド二代目「右に同じ。パワー差が半端ないから、奇襲しかない。目で探すな! 居場所がバレたら死ぬる!」
シマパンダー一号「それは理解しているでありますが…ミントとゴールドの事情は、何でせう?」
ミント「二人目を妊娠中なの。三ヶ月目」
ミント以外全員「・・・・・・」
父親が誰かは、誰も聞かなかった。
ミント「産休と育児休暇で、二年間は戦闘に参加しません」
ミント以外全員「おめでとうございまーす」
シマパンダー一号「ゴールド! おめでとうであります! ゴールド! 返事をするであります、このヤロー、てめえ、このヤロー!」
シマパンダー一号以外全員「・・・」
失恋確定でブチ切れているシマパンダーに、誰も触りたがらなかった。
シマパンダー一号「返事をするであります、この全身ゴールデンボール女…いや男! 男! 種蒔きマン!! 人の家の隣家で、何に励んでやがるんでありますか、このムッツリ忍者!! つーか、ユーシアとして挨拶に来いや、種蒔き忍者!! 自分は君の叔母にあたるでありますよ! でもお姉さまと呼ぶであります。敬愛を込めて!」
会いに行かなくて本当に正解だなあと、シマパンダー以外は思った。
ゴールド「煩いなあ」
ゴールドスクリーマーは、慣れない者が混乱しないように、女性版の声で内密回線に応じる。
ゴールド「五年間、隣家からこっそり守ってやったんだ。俺の家族計画にクレーム入れるな」
ティル・初代レッドと遊び疲れて、ゴールドスクリーマー・金沢利家の膝の上で寝てしまった長男・悠を起こさないように、最低限の声で話す。
ゴールド「今度は、君に俺の家族を守って欲しい。叶うだろうか、この願いは?」
シマパンダー一号・入谷恐子は、初恋の人に『一人前の戦士』として認められている事に気付く。
それは、心に生じたばかりの失恋の断裂を満たして溢れた。
シマパンダー一号「ユーシアが自分たちを守ってくれたように、今度は自分が子供達を守り抜くであります」
高らかに宣言した側から、シマパンダーはビバ・ビロンの首に突き付けていた大太刀を、横に引いて首を刎ねようとする。
「内緒話の間、待っていてあげたのに、容赦なしですか?!」
ビバ・ビロンは体内から出した刃で大太刀を防ぎながら、シマパンダーの不義理に猛抗議する。
「感謝の証に、一撃必殺であります」
「思い遣りが重過ぎる」
体内から出した刃の四本を防御に回したまま、ビバ・ビロンは八本の刃を居合切りの速度で体内から出す。
シマパンダーはバックステップで刃の間合いから逃れ際、ビバ・ビロンの右肩を斬った。
ビバ・ビロンが今日初めて負った戦傷である。
間合いから離脱したシマパンダーは肉体的な傷こそ負わなかったが、戦闘服が数カ所、切り裂かれていた。
特に戦闘服の腰回りが大きく切られ、青と白のシマパンが露わに。
「恐ろしや、シマパンダー」
ビバ・ビロンは、傷よりも敗北感に打ちのめされて膝を着く。
「僕の刃を全て躱しながら、ワザと戦闘服を切らせてシマパンを披露するショーマンシップ」
「…いえ、ワザとではないであります」
シマパンダーとは呼ばれても、シマパンのパンチラを披露する気は全くない入谷恐子である。
「僕と戦いながら、ここまでキャラ立てを貫き通すとは…なんて恐ろしいまでの余裕」
「だから~」
「いっそ、あのまま首を刎ねられた方が、こんな敗北感を覚えずに済んだのに」
「…実力差が分かったら、刃を引くであります」
勘違いを正す面倒を諦めて、シマパンダーは勘違いに乗った。
世間様からシマパンダーと呼ばれて数ヶ月のうちに身に付けた処世術である。
「貴様たちなど、私のショーマンシップにおける踏み台! いわば黒い三連星のガイアなポジション!」
「ひいいい!?」
「どーーーん」
「ひいいいいいいい?!?!」
戦闘意欲を失った妹を庇うように、バビ・ビロンが前に出る。
牛鬼女帝《ステーキ・エンプレス》バビ・ビロンと一度目を合わせただけで、シマパンダーは「切れるだけの妹」とは別ランクの怪物だと悟った。
妹の方だけなら、どの民間戦隊も全滅したりはしなかっただろう。一人か二人は斬死にしただろうが。
この怪物は、絶命するより先に闘志を失ったりはしない。
シマパンダーが、そうであるように。
「君は何者なのだろうね、シマパンダー」
犠牲者の廃血と腐肉が染み付いた鉄製棍棒を中腰で構えながら、バビ・ビロンは剣道の立会いのように、シマパンダーの大太刀に切っ先を合わせる。
VS
牛鬼女帝《ステーキ・エンプレス》バビ・ビロン(姉)
無尽殺刃《ブレード・マンティス》ビバ・ビロン(妹)
只今、大絶賛、膠着中。
シマパンダーは理解している。
ビロン姉の桁外れの剛力と、ビロン妹の規格外の切断能力を。
半日で二つの民間戦隊を壊滅させて、ほぼ無傷という戦力を。
そして…
【極秘戦隊スクリーマーズ 内密回線】
シマパンダー一号「あのう、どうして誰も援護に来てくれないでありますか?」
シマパンダー二号「来ているよ~? 隙を見て、背後から攻撃するから」
シマパンダー一号「呼んでもいない人が来ていたであります?!」
レッド二代目「右に同じ。パワー差が半端ないから、奇襲しかない。目で探すな! 居場所がバレたら死ぬる!」
シマパンダー一号「それは理解しているでありますが…ミントとゴールドの事情は、何でせう?」
ミント「二人目を妊娠中なの。三ヶ月目」
ミント以外全員「・・・・・・」
父親が誰かは、誰も聞かなかった。
ミント「産休と育児休暇で、二年間は戦闘に参加しません」
ミント以外全員「おめでとうございまーす」
シマパンダー一号「ゴールド! おめでとうであります! ゴールド! 返事をするであります、このヤロー、てめえ、このヤロー!」
シマパンダー一号以外全員「・・・」
失恋確定でブチ切れているシマパンダーに、誰も触りたがらなかった。
シマパンダー一号「返事をするであります、この全身ゴールデンボール女…いや男! 男! 種蒔きマン!! 人の家の隣家で、何に励んでやがるんでありますか、このムッツリ忍者!! つーか、ユーシアとして挨拶に来いや、種蒔き忍者!! 自分は君の叔母にあたるでありますよ! でもお姉さまと呼ぶであります。敬愛を込めて!」
会いに行かなくて本当に正解だなあと、シマパンダー以外は思った。
ゴールド「煩いなあ」
ゴールドスクリーマーは、慣れない者が混乱しないように、女性版の声で内密回線に応じる。
ゴールド「五年間、隣家からこっそり守ってやったんだ。俺の家族計画にクレーム入れるな」
ティル・初代レッドと遊び疲れて、ゴールドスクリーマー・金沢利家の膝の上で寝てしまった長男・悠を起こさないように、最低限の声で話す。
ゴールド「今度は、君に俺の家族を守って欲しい。叶うだろうか、この願いは?」
シマパンダー一号・入谷恐子は、初恋の人に『一人前の戦士』として認められている事に気付く。
それは、心に生じたばかりの失恋の断裂を満たして溢れた。
シマパンダー一号「ユーシアが自分たちを守ってくれたように、今度は自分が子供達を守り抜くであります」
高らかに宣言した側から、シマパンダーはビバ・ビロンの首に突き付けていた大太刀を、横に引いて首を刎ねようとする。
「内緒話の間、待っていてあげたのに、容赦なしですか?!」
ビバ・ビロンは体内から出した刃で大太刀を防ぎながら、シマパンダーの不義理に猛抗議する。
「感謝の証に、一撃必殺であります」
「思い遣りが重過ぎる」
体内から出した刃の四本を防御に回したまま、ビバ・ビロンは八本の刃を居合切りの速度で体内から出す。
シマパンダーはバックステップで刃の間合いから逃れ際、ビバ・ビロンの右肩を斬った。
ビバ・ビロンが今日初めて負った戦傷である。
間合いから離脱したシマパンダーは肉体的な傷こそ負わなかったが、戦闘服が数カ所、切り裂かれていた。
特に戦闘服の腰回りが大きく切られ、青と白のシマパンが露わに。
「恐ろしや、シマパンダー」
ビバ・ビロンは、傷よりも敗北感に打ちのめされて膝を着く。
「僕の刃を全て躱しながら、ワザと戦闘服を切らせてシマパンを披露するショーマンシップ」
「…いえ、ワザとではないであります」
シマパンダーとは呼ばれても、シマパンのパンチラを披露する気は全くない入谷恐子である。
「僕と戦いながら、ここまでキャラ立てを貫き通すとは…なんて恐ろしいまでの余裕」
「だから~」
「いっそ、あのまま首を刎ねられた方が、こんな敗北感を覚えずに済んだのに」
「…実力差が分かったら、刃を引くであります」
勘違いを正す面倒を諦めて、シマパンダーは勘違いに乗った。
世間様からシマパンダーと呼ばれて数ヶ月のうちに身に付けた処世術である。
「貴様たちなど、私のショーマンシップにおける踏み台! いわば黒い三連星のガイアなポジション!」
「ひいいい!?」
「どーーーん」
「ひいいいいいいい?!?!」
戦闘意欲を失った妹を庇うように、バビ・ビロンが前に出る。
牛鬼女帝《ステーキ・エンプレス》バビ・ビロンと一度目を合わせただけで、シマパンダーは「切れるだけの妹」とは別ランクの怪物だと悟った。
妹の方だけなら、どの民間戦隊も全滅したりはしなかっただろう。一人か二人は斬死にしただろうが。
この怪物は、絶命するより先に闘志を失ったりはしない。
シマパンダーが、そうであるように。
「君は何者なのだろうね、シマパンダー」
犠牲者の廃血と腐肉が染み付いた鉄製棍棒を中腰で構えながら、バビ・ビロンは剣道の立会いのように、シマパンダーの大太刀に切っ先を合わせる。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
鬼面の忍者 R15版
九情承太郎
歴史・時代
陽花「ヤングでムッツリな服部半蔵が主人公の戦国コメディ。始まるざますよ!」
更紗「読むでがんす!」
夏美「ふんがー!」
月乃「まともに始めなさいよ!」
服部半蔵&四人の忍者嫁部隊が、徳川軍団の快進撃に貢献するチープでファンキーな歴史ライトノベルだぜ、ベイベー!
※本作品は、2016年3月10日に公開された「鬼面の忍者」を再編集し、お色気シーンを強化したイヤんバカン版です。
※カクヨムでの重複投稿をしています。
表紙は、画像生成AIで出力したイラストです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
(同級生+アイドル÷未成年)×オッサン≠いちゃらぶ
まみ夜
キャラ文芸
様々な分野の専門家、様々な年齢を集め、それぞれ一芸をもっている学生が講師も務めて教え合う教育特区の学園へ出向した五十歳オッサンが、十七歳現役アイドルと同級生に。
【ご注意ください】
※物語のキーワードとして、摂食障害が出てきます
※ヒロインの少女には、ストーカー気質があります
※主人公はいい年してるくせに、ぐちぐち悩みます
第二巻(ホラー風味)は現在、更新休止中です。
続きが気になる方は、お気に入り登録をされると再開が通知されて便利かと思います。
表紙イラストはAI作成です。
(セミロング女性アイドルが彼氏の腕を抱く 茶色ブレザー制服 アニメ)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
スーパー戦隊すみっこ語り
九情承太郎
エッセイ・ノンフィクション
日曜朝のお約束。スーパー戦隊に登場した味のある脇役たちを語ります。
100%筆者の趣味で書かれています。
※他の投稿サイトでも公開しています。
表紙は、画像生成AIで出力したイラストです。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる