鬼面の忍者 R15版

九情承太郎

文字の大きさ
上 下
29 / 78
三話 瀬名姫、激おこ?

瀬名姫、激おこ?(5)

しおりを挟む
 日没後。
 服部隊の女忍者二人が交代し、半蔵の屋敷に報告に戻る。
 それに合わせて、呼んでもいないのに情人契約を結んでいる他の二人も参上する。
 半蔵は、自分が包囲されていると感じた。

「まずは、新しい現場での情報から」

 いつもは穏和な月乃が、半蔵を睨みながら報告を始める。

「殿と瀬名姫様は、睦ごとの最中にも高度な政治的駆け引きをしておりました。形上は幽閉状態ですが、子供達には好きに会える事。清洲同盟への文句は、殿だけに述べる事。旧今川の家臣でも、不当な差別をしない事。月に一度は、殿の方から夜伽に来る事」

 今の家康に向かって夜伽に来いとか、今川プリンセスの気位が半端ない。

「今日の処は、瀬名姫様の方に害意は見られませんでした」

 月乃の不機嫌が、目に見えて膨れ上がる。

(ひょっとして、瀬名姫に共感したのか?)

 と思ったが、違った。

「ここからが本題です」

 情人契約四人組の包囲網が、狭まる。

「半蔵様」

 月乃が、本題の口火を切る。

「五年経っても、誰も孕まないなんて、おかしいです」

 月乃が、顔を半蔵の至近距離まで近付けて責める。

「ズルをしていませんか?」

 ズルをした覚えがあるので、半蔵は困る。

「ズルなんかしてないよ」
「本当に?」

 月乃の目が、据わっている。
 嘘が通用しない位に、縁が深くなっている。

(思えば、仲の拗れた奥方と速攻で休戦した殿は見事だった。見事過ぎて、俺の参考には成らないけど)

 更紗が下半身褌一丁になり、背後から襲い掛かるポーズを取る。

「やり盛り産み盛りの健康な女四人が、五年間孕まない。考えられる原因は、半蔵様の、玉袋?」

 更紗が、半蔵の股間に話しかける。

「種無しカボチャさん、な~の~か~な~~?」

 そう言われてしまうと、半蔵も不安になる。

「すみません。今度から、意識して精のつくものを食べてから出します」

 月乃と更紗の機嫌が、少しだけ改善される。

「騙されてはいけません」

 陽花が、火縄銃でヘッドショットする時の眼付きで半蔵を見下ろす。
 仁王立ちで見下ろす。

「月一で四人を回すから、一年で三回、五年で十五回。一人頭十五回しか、種付け合体をしていません。平均的なご家庭の一ヶ月分にも満たない種付け回数ですよ! これは意図的な、怠慢行為です!」

 算術的に根拠を提示しながら、陽花が月乃と並んで半蔵を睨む。
 これには心当たりが有るので、半蔵は陽花から眼を逸らす。

「私たちを可能な限り妊娠させずに扱き使う為に、発射回数を故意に減らしましたね? 普通の間隔なら二三人は産んでいてもおかしくないのに!」
「う」
「う、じゃないよ! 怪しいと思っていたんだ、いつも一発しか撃たないから」
「え?」
「…え?」

 夏美が迂闊に反応してしまい、陽花の視線が四人の中で一番肉付きの良い体に集まる。
 月乃と更紗にも視線を向けると、二人も陽花と目を合わせないように姿勢を変える。
 気まずい空気を吸い込んで、陽花の糾弾が仲間に向く。

「…怒ってないよ。先生、怒ってないから、お前ら正直に答えろ? 半蔵様の最多発射回数を、指で答えろぉぉ!」

 月乃は四本、更紗は五本、夏美は七本、指を立てた。
 嫌な沈黙と硬直の後、陽花が能面を被って火縄銃に弾込めを始めたので、皆で取り押さえて簀巻きにする。

「放せ~~! そこの限定火縄銃野郎に、あたしの火縄銃を撃ち込んでやる~~!」
「契約内容を見直しましょう」

 月乃が簀巻きの上に腰を下ろし、本題を続けようとするが、陽花は尚も暴れようとする。

「一発。一発だけだから」
「正気に戻りなさい、陽花」
「大丈夫。一発で気が済むから~~」

 更紗が無表情に『うふふふふふふ』と笑いながら、身動きの取れない陽花に指を五本見せる。

「半蔵様も、一発で済ませたものねえ」
「お前には五発撃ち込んだるわ~~!!」

 夏美が、常識的な意見を述べる。

「何発だろうと、当たらなければ、無意味です」

 情人四忍の視線が、再び半蔵一人に集中する。

「半蔵様。五年も外そうとして外した手際、見事です」

 月乃が、嫌味を言った。

「ですが、もう逃がしません」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

和ませ屋仇討ち始末

志波 連
歴史・時代
山名藩家老家次男の三沢新之助が学問所から戻ると、屋敷が異様な雰囲気に包まれていた。 門の近くにいた新之助をいち早く見つけ出した安藤久秀に手を引かれ、納戸の裏を通り台所から屋内へ入っる。 久秀に手を引かれ庭の見える納戸に入った新之助の目に飛び込んだのは、今まさに切腹しようとしている父長政の姿だった。 父が正座している筵の横には変わり果てた長兄の姿がある。 「目に焼き付けてください」 久秀の声に頷いた新之助だったが、介錯の刀が振り下ろされると同時に気を失ってしまった。 新之助が意識を取り戻したのは、城下から二番目の宿場町にある旅籠だった。 「江戸に向かいます」 同行するのは三沢家剣術指南役だった安藤久秀と、新之助付き侍女咲良のみ。 父と兄の死の真相を探り、その無念を晴らす旅が始まった。 他サイトでも掲載しています 表紙は写真ACより引用しています R15は保険です

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

武田義信は謀略で天下取りを始めるようです ~信玄「今川攻めを命じたはずの義信が、勝手に徳川を攻めてるんだが???」~

田島はる
歴史・時代
桶狭間の戦いで今川義元が戦死すると、武田家は外交方針の転換を余儀なくされた。 今川との婚姻を破棄して駿河侵攻を主張する信玄に、義信は待ったをかけた。 義信「此度の侵攻、それがしにお任せください!」 領地を貰うとすぐさま侵攻を始める義信。しかし、信玄の思惑とは別に義信が攻めたのは徳川領、三河だった。 信玄「ちょっ、なにやってるの!?!?!?」 信玄の意に反して、突如始まった対徳川戦。義信は持ち前の奇策と野蛮さで織田・徳川の討伐に乗り出すのだった。 かくして、武田義信の敵討ちが幕を開けるのだった。

天下人織田信忠

ピコサイクス
歴史・時代
1582年に起きた本能寺の変で織田信忠は妙覚寺にいた。史実では、本能寺での出来事を聞いた信忠は二条新御所に移動し明智勢を迎え撃ち自害した。しかし、この世界線では二条新御所ではなく安土に逃げ再起をはかることとなった。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】

しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。 歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。 【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】 ※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。 ※重複投稿しています。 カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614 小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/

処理中です...