鬼面の忍者 R15版

九情承太郎

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三話 瀬名姫、激おこ?

瀬名姫、激おこ?(4)

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 次は、側近の中で一番抜け目のない鳥居元忠とりい・もとただ
 彼に話を通せば、家康の周囲にいる家臣全てに情報が行き届く。
 日課として土塁の保全状況を確かめている元忠を、三人が捕捉する。

「殿が瀬名姫とヤりそうになったら、止めてくれ」
「難しいですな」

 鳥居元忠は、人質時代からずっと一緒に暮らしている主君の性生活を知り尽くしているが故に、確約を渋る。

「あの御二人の愛は止められませんよ。相性も頗る良かったですし。事後は必ずフキフキ&お掃除フェラをする程です」

 夫婦の情愛の話で返されたので、酒井忠次が面食らう。

「…いや、今は事情が違う。寝首を掻かれる危険が大きい」
「それなら大丈夫ですよ。殿は、済ませた後でも寝ない方ですから」

 三人が怪訝な顔をしていると、元忠は事情を補足説明する。

「駿府城での御二人は、寝室が別々でしたから。殿が奥方様の寝所に赴き、済ませてから戻って寝る。今でも、このやり方で側室たちと済ませています」

 土塁の芝に生えた目立つ雑草を抜きながら、元忠は正信すら初めて知る閨事情を語る。

「以前通りにしていれば、寝首の心配はしなくていいでしょう」
「助言、かたじけない」

 酒井忠次は、頭を下げて礼を言った。

 最後に三人は、瀬名姫を幽閉した城の外れ、築山の惣持尼寺に向かう。

「半蔵、お主の所には、女忍者が余っておるだろう」
「はい」
「二人以上、瀬名姫に張り付かせろ」
「既に張り付かせました」
「よし」

 呼吸をするように先手を打つ、半蔵と上司だった。


 寺の門前に、聡明そうな小姓が一人待機しているので、三人は足を早める。

「亀丸。殿が中に居るのか?」

 読んでいた本から顔を上げて、榊原亀丸は直属の上司(榊原家は、酒井家の家臣)である酒井忠次に返答する。

「事を済ませるまで、誰も通すなとの、御命令です」
「わしでも?」
「勿論。止めますよ」

 榊原亀丸は、本を懐に仕舞い、戦場格闘技の構えをする。
 このトリオを前に、いい度胸の小姓である。
 怪我をさせたくないので、本多正信は説得にかかる。

「亀丸。殿の危機かもしれないのだ。通してくれ。寝首を掻かれてからでは、遅い」
「殿は、皆様方よりも智慧者です。その殿が、奥方様との房事に問題はないと判断したのです。自分は、殿の判断を信じます」

 本多正信が、言い返せなかった。
 服部半蔵は、構わずに門を通る。
 亀丸が腰にタックルするが、止まらない。

「いい攻めだ、亀丸。次の戦で、初陣に致そう」
「賄賂は受け取りませんよ」

 酒井忠次の誘いを、亀丸は半蔵にしがみ付いたまま、お断る。
 亀丸がどう攻めても、半蔵の歩みは止まらない。
 亀丸が脇差を抜こうとした瞬間、半蔵は歩きながら取り上げる。

「殿の危機だ。小姓であろうと、邪魔すれば次は斬る」

 亀丸は、固唾をガブ飲みする。


 半蔵が寺の客間の襖をノックなしで開けると、家康の褌が掛けられた屏風の手前に、月乃と夏美が控えていた。
 二人とも、顔をやや赤らめて『問題なし』のサインを送る。
 屏風の反対側から、肉が心地よく弾む音と吐息が重なる。
 夫婦の団欒が、クライマックスに達している。
 何度も。
 何度も、

「勘違いしないでよね…んぁあ…許した訳じゃ…んぅがぁ…ないんだからっ…んぅんぅ」
「はぁ…全部受け止めてくれ」
「んぅぁ…もぅ…溢れているのにぃ…」
「おぉうっ…ふう…」
「あぁ…ぁ……」

 肉の花が薫り、半蔵の嗅覚を刺す。
 少しの小休止も挟まずに、屏風の反対側では連戦が始まり肉欲の絡む音が激しくなる。

「まだ、あ、致すの、ですか?」
「実はな、ずっとここまで、徹底的に致したかった」
「あふんっ」
「居候の身では、全開で致せなかった」
「こ、これが、全開…くあああ」 
「わしだって初めてだからな。リミッターを外して致すのは、初めてだからな」
「やや、疲れます」
「ならば、これで打ち止めにするか」
「いえ、瀬名も、あっっ、はっ、あんっ、外します」

 呻き声と嬌声が、絡まって区別が付かなくなる。
 床の軋みが激しさを増し、室内の湿り気が梅雨の如く厚みを膨らましていく。
 凄まじい激しさと密度のイチャラブである。


 半蔵は襖を閉め直すと、脇差を榊原亀丸に返す。
 皆と忍び足で門前まで戻ると、ため息を吐いてから解散する。
 夫婦喧嘩は、三河武士でも食わない。
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