鬼面の忍者 R15版

九情承太郎

文字の大きさ
上 下
6 / 78
一話 三河戦線異常なし

三河戦線、異常なし(5)

しおりを挟む
 松平元康の小姓たちが、場を整える。
 畳の上で相対すると、服部半蔵へ松平元康から手渡しで感状が贈られる。戦功の公式認定書としての役割が有るので、武家にとっては重要な家宝となる。
 続いて、武具の譲渡。
 頂いた武具は、換金するも良し、戦場で使うのも良し、床の間に飾ったり、蔵に仕舞って置くのも良し。
 自由度が高いようだが、品によって送る側が何を期待しているのか、頂く側に一目瞭然の場合が多い。
 松平元康は、自分の槍を服部半蔵に手渡す。

「初陣は未だなので、新品だ」

 受け取りながら半蔵は、小姓たちの残念そうな顔色から、不憫な可能性を導く。

(槍は、これ一本しか、お持ちでないのでは?)

 今の元康には、収入源が全くない。
 今川の人質兼客将として、最低限の食い扶持を貰っているだけである。
 親戚からのお情けで、何とか武士として恥ずかしくない装備は揃えているが、数は最低限。
 ならば服部半蔵の答えは、決まっている。

「殿の初陣の折には、この服部半蔵が、この槍で一番槍を務めます」

 室内の皆と廊下で聞き耳を立てていた今川侍たち全てが、激しいリアクションを起こす。
 ハードルを上げすぎた半蔵に、元康が助け舟を一応出す。

「参戦だけで有り難いよ。たとえ一番槍が出来なくても、責めない。楽にしようよ」

 半蔵は、気遣いに一礼しつつも、笑って言い返す。

「疑われるのは此方の不徳ですな。では、一番槍が出来ない時は、駿府城の門前で、裸踊りをしてみせます。この月乃と一緒に」

 月乃が、半蔵をマジ睨みする。
 半蔵は、皆と一緒に笑っている。
 殴った方がいいかなと、月乃は思案する。
 皆の笑いが引く頃合で、元康は半蔵に本題を持ち出す。

「半蔵。頼みが有る」



 駿府城下から離れ、郊外にある農家に偽装した伊賀忍者のセーフハウスに泊まる事にした服部半蔵は、寝込みを月乃に襲われた。
 既に灯りは消しているので、壁板の隙間から差し込む月明かりだけが光源にもかかわらず、二人の忍者は互いにマウントポジションを取ろうと絡み合う。
 粗末な藁寝具の上で押し倒されて服を剥かれながら、服部半蔵は苦笑する。
「初めての夜も、こうして月乃に襲われたな」
「先手を取るのは、趣味です」
 馬乗りになった笑顔の月乃が、そのまま互いのふんどしをズラして下半身合体に及ぼうかという瞬間に、服部半蔵は月乃の両足を抱えて持ち上げると、体勢を入れ替える。
 月乃の体を傷付けないように、優しくマウントを取る。

「今回の任務では、性交しないと言ったはずだ」
「罰です。あんな約束に、勝手に私を含めるからです」
「自信がある」

 半蔵は、いつもの様に、月乃の着物の前合わせを開いて、白い乳房を双方剥き出しにする。
 僅かな月明かりでも、美しく花盛る双丘が半蔵の目に溢れる。

「月乃の裸踊りを、俺以外に見せるつもりはない」
「本当に一番槍を敢行するつもりなら、先に雇用条件を満たして下さい」

 月乃は両足で半蔵の腰を挟み込んで、性急な子作りを諦めない。最小限の動きで、合体フォーメーションを先っぽまで進める。

「一番槍が戦死する確率は、少なくありませんから」
「生還するから、そんなに焦らなくても」

 強引な結合を回避しようと、半蔵は膣穴に引き込まれかけた肉棒を抜いて、月乃を背後から抱き締める。

「帰ってから、ゆっくりしよう」
「まだ勃起したままですよ」
「敵地で耽る気はない。もう寝よう」
「…おやすみなさい」
「おやすみ、月乃」
「まだ勃起したままですよ」
「寝ようよ」
「はあい」

 暫くして、半蔵が本当に眠りに落ちる。
 月乃は半蔵の睾丸を掌で少し愛撫してから、諦めて眠った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

武田義信は謀略で天下取りを始めるようです ~信玄「今川攻めを命じたはずの義信が、勝手に徳川を攻めてるんだが???」~

田島はる
歴史・時代
桶狭間の戦いで今川義元が戦死すると、武田家は外交方針の転換を余儀なくされた。 今川との婚姻を破棄して駿河侵攻を主張する信玄に、義信は待ったをかけた。 義信「此度の侵攻、それがしにお任せください!」 領地を貰うとすぐさま侵攻を始める義信。しかし、信玄の思惑とは別に義信が攻めたのは徳川領、三河だった。 信玄「ちょっ、なにやってるの!?!?!?」 信玄の意に反して、突如始まった対徳川戦。義信は持ち前の奇策と野蛮さで織田・徳川の討伐に乗り出すのだった。 かくして、武田義信の敵討ちが幕を開けるのだった。

7番目のシャルル、狂った王国にうまれて【少年期編完結】

しんの(C.Clarté)
歴史・時代
15世紀、狂王と淫妃の間に生まれた10番目の子が王位を継ぐとは誰も予想しなかった。兄王子の連続死で、不遇な王子は14歳で王太子となり、没落する王国を背負って死と血にまみれた運命をたどる。「恩人ジャンヌ・ダルクを見捨てた暗愚」と貶される一方で、「建国以来、戦乱の絶えなかった王国にはじめて平和と正義と秩序をもたらした名君」と評価されるフランス王シャルル七世の少年時代の物語。 歴史に残された記述と、筆者が受け継いだ記憶をもとに脚色したフィクションです。 【カクヨムコン7中間選考通過】【アルファポリス第7回歴史・時代小説大賞、読者投票4位】【講談社レジェンド賞最終選考作】 ※表紙絵は離雨RIU(@re_hirame)様からいただいたファンアートを使わせていただいてます。 ※重複投稿しています。 カクヨム:https://kakuyomu.jp/works/16816927859447599614 小説家になろう:https://ncode.syosetu.com/n9199ey/

奴隷少年♡助左衛門

鼻血の親分
歴史・時代
 戦国末期に活躍した海賊商人、納屋助左衛門は人生の絶頂期を迎えていた。しかし時の権力者、秀吉のある要請を断り、その将来に不安な影を落とす。  やがて助左衛門は倒れ伏せ、少年時代の悪夢にうなされる。 ──以後、少年時代の回想  戦に巻き込まれ雑兵に捕まった少年、助左衛門は物として奴隷市場に出された。キリシタンの彼は珍しがられ、奴隷商人の元締、天海の奴隷として尾張へ連れて行かれることになる。  その尾張では、 戦国の風雲児、信長がまだ「うつけ」と呼ばれていた頃、彼の領地を巡り戦が起ころうとしていた。  イクサ。  なぜ、戦が起こるのか⁈  なぜ、戦によって奴隷が生まれるのか⁈  奴隷商人が暗躍する戦場で見た現実に、助左衛門は怒りを覚える!!   そして……。

戦国ニート~さくは弥三郎の天下一統の志を信じるか~

ちんぽまんこのお年頃
歴史・時代
戦国時代にもニートがいた!駄目人間・甲斐性無しの若殿・弥三郎の教育係に抜擢されたさく。ところが弥三郎は性的な欲求をさくにぶつけ・・・・。叱咤激励しながら弥三郎を鍛え上げるさく。廃嫡の話が持ち上がる中、迎える初陣。敵はこちらの2倍の大軍勢。絶体絶命の危機をさくと弥三郎は如何に乗り越えるのか。実在した戦国ニートのサクセスストーリー開幕。

鶴が舞う ―蒲生三代記―

藤瀬 慶久
歴史・時代
対い鶴はどのように乱世の空を舞ったのか 乱世と共に世に出で、乱世と共に消えていった蒲生一族 定秀、賢秀、氏郷の三代記 六角定頼、織田信長、豊臣秀吉 三人の天下人に仕えた蒲生家三代の歴史を描く正統派歴史小説(のつもりです) 注)転生はしません。歴史は変わりません。一部フィクションを交えますが、ほぼ史実通りに進みます ※この小説は『小説家になろう』『カクヨム』『アルファポリス』『ノベルアップ+』で掲載します

ま性戦隊シマパンダー

九情承太郎
キャラ文芸
 魔性のオーパーツ「中二病プリンター」により、ノベルワナビー(小説家志望)の作品から次々に現れるアホ…個性的な敵キャラたちが、現実世界(特に関東地方)に被害を与えていた。  警察や軍隊で相手にしきれないアホ…個性的な敵キャラに対処するために、多くの民間戦隊が立ち上がった!  そんな戦隊の一つ、極秘戦隊スクリーマーズの一員ブルースクリーマー・入谷恐子は、迂闊な行動が重なり、シマパンの力で戦う戦士「シマパンダー」と勘違いされて悪目立ちしてしまう(笑)  誤解が解ける日は、果たして来るのであろうか?  たぶん、ない! ま性(まぬけな性分)の戦士シマパンダーによるスーパー戦隊コメディの決定版。笑い死にを恐れぬならば、読むがいい!! 他の小説サイトでも公開しています。 表紙は、画像生成AIで出力したイラストです。

厄介叔父、山岡銀次郎捕物帳

克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

処理中です...