唾棄すべき日々(1993年のリアル)

緑旗工房

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第27話 27 夏のボーナス情報

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「そういえば、夏のボーナスの情報がありますよ」

おいおいポンちゃん、まだ1月だぞ。
確かな情報かい、ガセは困るぜ。

「ウチの課の優香ちゃんが経理に行った時、なにげなく夏のボーナスの見通しを経理課長に聞いたらしいんですよ。
そうしたら『出ないんじゃないの、出ても冬以下だよ』ってあっさり言ってたんですって。
どう思います、この会話」

うーん。
俺は唸った。


経理課長も優香ちゃんも生え抜きではなく、転職してきた中途入社組だ。
経理課長はたしか5年ほど前、優香ちゃんは1年ほど前に転職してきた。

ウチのような中小企業でも、生え抜き社員と中途入社組の中には微妙な壁がある。
俺も中途入社組なので、入社して数年間はその壁を感じていた。
別に差別されるわけでもいじめられることもない。
でも、雑談をしているときに中途組が輪に入りにくい時があったり、飲みに行くときに声がかからないことがあったり、たいしたことではないけども確実に壁を感じていた。

その違和感が取れたのは、入社して3、4年経ってからだった。

毎年20人程度の新入社員が入っていたが、彼らから見たら生え抜きも中途も同じ先輩であって、俺が中途入社かどうかは気にしない。
それに俺と同じような転職組も不定期で多くはないけども増えてくる。
数年経てばこれらの人たちがそれなりに人数になって壁のない人の割合が増える。
それから俺より社歴の古い生え抜きたちも、何年か一緒に仕事をしていると自然と打ち解ける。
そんなことが重なって、気がついたら俺は昔からいるような大きな顔をしていた。

しかし経理課長は少し事情が違う。
経理課は人数が少なく、誰かが辞めたときに欠員補充をするだけで人の動きはほとんどない。
それに経理課長が相手にするのは会社幹部が主で、幹部たちはほとんどが生え抜きだ。
何年いても外様感は残っているのかもしれない。

だとすると経理課長と優香ちゃんが転職組同士独特の連帯感を感じている可能性は高いし、外様ならではの冷静な視線を持っているのではないか。
ましてや経理課長は会社の金の流れを管理する立場、お金に関しては誰よりも多く情報を持っている。

若くて可愛くて誰からも好かれる優等生の優香ちゃんに気が緩んで、うっかり口を滑らしたのかもしれない。
経理マンらしい硬そうなあの経理課長がジョークで言うとは思えないし、これは信憑性高そうだ。

「さーて、どうしましょうか?」
わざとおどけてポンちゃんが俺に言った。

どうにもなんねーよ。
どうにかしてくれ、誰か。
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