15 / 53
第15話 揺れる気持ち
しおりを挟む
冬のボーナスが前年の5分の1しか支給されないとの発表があってから、急に慌ただしくなった。
といっても会社ではなく俺の気持ちが、である。
今後の不安もあってポンちゃんとの情報交換はさらに頻繁になり、あまり接点のなかった人にまで連絡をして情報交換をするようになったのだ。
あらゆる機会を使って情報収集をするようになり、その結果妙に社交的な性格に変わっていった。
俺の中で、なにかが変わり始めていたのかもしれない。
いい情報は全くなかったが、それでもせめて情報だけでもいいから欲しかった。
これから俺たちはどうなっていくのか。
ボーナスが5分の1になると知った途端、会社を見限って辞める社員が出はじめた。
多くは若くて独身で実家暮らしの身軽な人だった。
うんざりして辞めたい気持ちはよくわかるが、この状態では同業他社に転職するのも難しそうだ。
若くて身軽な人は辞めるという選択肢も取れるが、もう若くはない人や家庭持ちはそうそう簡単には辞められない。
辞められる若手がちょっとだけ羨ましかった。
もっとも、辞めていく若手も彼らなりに追い詰められていた。
ウチの若手は車好きが多く、ソアラ、マークⅡ、フェアレディZなど彼らの年収を超えるような高価な車を持っていて、ボーナスはローンの支払いなどに消える。
彼らの生活は車中心で、休みのたびに若手同士でドライブに行って酒もパチンコもほとんどしない。
そんなお金があったらガソリン代にしたいそうだ。
以前、若手と残業していて晩飯にラーメン屋に行った時のことだ。
テーブルの上にすりおろしニンニクの容器があって、3分の1ほどのニンニクが入っていた。
冗談で、これを全部食べられたらラーメン代を奢ると言ったら、若手は目を輝かせてやりますと即答した。
そしてニンニクを完食、約束通り奢ったものの、その日の残業はニンニク臭くて閉口した。
たかがラーメン代程度でも節約して車につぎ込みたいというのが、彼らの価値観だった。
そんな彼らだから、ボーナス大幅カットで下手したら愛車を手放さなければならなくなりそうな会社に居続けることはできないのだろう。
給料カットにボーナスカットという経済的ダメージだけでなく先が見えないやりきれない気持ちも入り混じって、みんなダウン寸前だった。
しかし愚痴を言ったところで何も変わらないし、目先の仕事が減るわけでもない。
黙々と仕事をするしかない。
といっても会社ではなく俺の気持ちが、である。
今後の不安もあってポンちゃんとの情報交換はさらに頻繁になり、あまり接点のなかった人にまで連絡をして情報交換をするようになったのだ。
あらゆる機会を使って情報収集をするようになり、その結果妙に社交的な性格に変わっていった。
俺の中で、なにかが変わり始めていたのかもしれない。
いい情報は全くなかったが、それでもせめて情報だけでもいいから欲しかった。
これから俺たちはどうなっていくのか。
ボーナスが5分の1になると知った途端、会社を見限って辞める社員が出はじめた。
多くは若くて独身で実家暮らしの身軽な人だった。
うんざりして辞めたい気持ちはよくわかるが、この状態では同業他社に転職するのも難しそうだ。
若くて身軽な人は辞めるという選択肢も取れるが、もう若くはない人や家庭持ちはそうそう簡単には辞められない。
辞められる若手がちょっとだけ羨ましかった。
もっとも、辞めていく若手も彼らなりに追い詰められていた。
ウチの若手は車好きが多く、ソアラ、マークⅡ、フェアレディZなど彼らの年収を超えるような高価な車を持っていて、ボーナスはローンの支払いなどに消える。
彼らの生活は車中心で、休みのたびに若手同士でドライブに行って酒もパチンコもほとんどしない。
そんなお金があったらガソリン代にしたいそうだ。
以前、若手と残業していて晩飯にラーメン屋に行った時のことだ。
テーブルの上にすりおろしニンニクの容器があって、3分の1ほどのニンニクが入っていた。
冗談で、これを全部食べられたらラーメン代を奢ると言ったら、若手は目を輝かせてやりますと即答した。
そしてニンニクを完食、約束通り奢ったものの、その日の残業はニンニク臭くて閉口した。
たかがラーメン代程度でも節約して車につぎ込みたいというのが、彼らの価値観だった。
そんな彼らだから、ボーナス大幅カットで下手したら愛車を手放さなければならなくなりそうな会社に居続けることはできないのだろう。
給料カットにボーナスカットという経済的ダメージだけでなく先が見えないやりきれない気持ちも入り混じって、みんなダウン寸前だった。
しかし愚痴を言ったところで何も変わらないし、目先の仕事が減るわけでもない。
黙々と仕事をするしかない。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。



会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
独身寮のふるさとごはん まかないさんの美味しい献立
水縞しま
ライト文芸
旧題:独身寮のまかないさん ~おいしい故郷の味こしらえます~
第7回ライト文芸大賞【料理・グルメ賞】作品です。
◇◇◇◇
飛騨高山に本社を置く株式会社ワカミヤの独身寮『杉野館』。まかない担当として働く有村千影(ありむらちかげ)は、決まった予算の中で献立を考え、食材を調達し、調理してと日々奮闘していた。そんなある日、社員のひとりが失恋して落ち込んでしまう。食欲もないらしい。千影は彼の出身地、富山の郷土料理「ほたるいかの酢味噌和え」をこしらえて励まそうとする。
仕事に追われる社員には、熱々がおいしい「味噌煮込みうどん(愛知)」。
退職しようか思い悩む社員には、じんわりと出汁が沁みる「聖護院かぶと鯛の煮物(京都)」。
他にも飛騨高山の「赤かぶ漬け」「みだらしだんご」、大阪の「モダン焼き」など、故郷の味が盛りだくさん。
おいしい故郷の味に励まされたり、癒されたり、背中を押されたりするお話です。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる